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足音
#7
しおりを挟む「制御」
「え?」
短い呟きは、聴き取れても理解はできなかった。
困惑する白希に微笑み、青年は店員にカフェラテを二人分注文した。
「管理、調整。そんなところかな」
「す……すみません、何の話ですか?」
話が掴めず、まばたきを繰り返す。彼は頬杖をつき、にやっと笑った。
「春日美村は無法地帯のようだけど、能力の在り方についてはそれなりに制約があるんだよ」
「制約……ルールですか?」
「そう。但し村を出て、力を使用しないならこの限りではない。でも力を使ってるかどうかなんて、村にいる人には分からないだろう?」
白希は小さく頷く。
「だから俺がいるんだ。言い換えるなら、俺は外の監視役。村を出た力の所有者達を管理する役目を担ってる」
「監視……っ」
何もかもが初耳だ。正直、素直に受け止めるのは難しい。
でも、俺や宗一さんのことを知っている。彼が村と深い関わりを持っていることは間違いない。
「それじゃ、遅くなったけど改めて。……俺は明鐘。村長から頼まれて、一年間君の監視を任された」
宜しくね、と笑顔で握手を求められたが、フリーズして動けなかった。
とは言え明鐘はポジティブそのもので、白希の手をとって握手を交わした。
「自己紹介はしなくていいよ。君のことは大体頭に入ってる。宗一に出逢ってからのこともね」
「……わかりました。でも、俺は貴方のことを知りません。もう少し詳しく話していただきたいです」
手を離し、膝の上に置く。言葉を慎重に選びながら、明鐘の目を見つめた。
「俺に問題があるから、監視するよう言われたんですよね。もし俺が村長さんが危惧してる“問題”を起こしたら……どうするつもりですか?」
彼らが恐れてる問題が何を指すのか、自分には分からない。だが起きてしまった時のことを想定するのは大事だ。固唾を飲んで答えを待つと、明鐘は目を細めて笑った。
「申し訳ないけど、俺はあくまで報告役。処分を決める立場にはないから、それは分からないし答えられない」
ごめんね、と謝られたので、かぶりを振った。彼が敵でも味方でもないと言ったのは、つまりこういうことなのだろう。
しかし村の中では全員が監視役のように見えたから、外に出れば安心だと思っていた。でも道源のように住まいを変えている者もいるし、油断できない。
村の外まで追ってきた村人もいるのだ。今さら驚くことでもなかったか……。
店員がカフェオレを持ってた為、彼はひとつ取って口に運んだ。窓の外に広がる夜景を見ながら、そっとため息をつく。
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