熱しやすく冷めやすく、軽くて重い夫婦です。

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
187 / 196
重たくも、暖かく

12

しおりを挟む



全身に火がついたようだった。あまりに恥ずかしくて、目だけ逸らして首を傾げる。
「い、え……今日は汗もかいたから」
口元は笑ってみせたが、今度は嫌な汗が流れた。しかし是が非でも認めようとしない白希に、宗一は我慢できずに吹き出す。

「洗濯機に、君の下着が一枚だけ入ってたね」
「見たんですか!?」

何とか誤魔化そうとしたのに、確信的なものを見られてしまっていた。
変だと気付いたならそう言ってくれればいいのに。
「そんなに俺の口から言わせたいんですか……っ」
「まぁ、そりゃあね?」
宗一は自身のシャツを脱ぎ捨て、白希の上に覆いかぶさった。ベルトを緩めながら、無防備な白希の頬にキスをする。

「下着だけ汚しちゃうようなことがあったの?」

耳元で低く囁かれ、熱い吐息が吹きかかる。それだけでぶるっと震えた。
「いや……その」
「白希」
頬を両手で挟まれ、否応なしに目が合う。吸い込まれそうな、でも凪いだ海のような瞳だ。
そこに情けない顔の自分が映っている。白希は泣きたい気持ちをぐっと堪え、観念した。

「お……怒らないで聞いていただきたいんですけど」

懺悔しながら一部始終を説明する。昨夜のことを思い出したら簡単に欲情してしまったこと。てっきり呆れられると思ったけど、宗一さんは何故か興味津々の様子だった。
でも、男の人が居合わせたことは言えなかった。これは羞恥心からではなく、彼を不安にさせると思ったからだ。

「ごめんなさい……だから色々情けなくて。今日もできればこのまま寝たいんだす」

膝を抱え、彼から恥ずかしい部分が見えないようにする。服を拾いたいけど、それをするには動かないといけない。
彼がこっちから視線を外したら動こう。そう密かに窺っていたのに、何故か彼はズボンのチャックまで下ろし始めた。
「え。あの、宗一さん?」
おかしい。むしろ臨戦態勢に入ってないか?
目を丸くして呼びかけると、彼は眩しいほどの笑顔を浮かべた。

「つまり、ちょっと思い出しただけで感じてしまうんたよね? なら話は簡単だ。自分で制御できるよう、毎晩練習しよう」

……まずい。言ってる意味が分かるようで分からない。

「以前の荒療治と一緒だよ。問題事を遠ざけるんじゃなく、当たって碎ける精神でいこう」
「碎……」
「まずは耐性をつける為に、外の刺激を与えるから勃たないように我慢してね」

そう言うやいなや、彼は俺の脚の間に手を伸ばしてきた。熱の中心を握り込まれ、声にならない声を上げる。
「うあっ!」
「ほーら。我慢我慢」
彼は涼しい顔でなだめようとするけど、こっちとしてはたまったものじゃない。
下から搾り取るように扱き上げて、先端の割れ目に爪を潜り込ませてくる。俺が一番弱い部分をわざと狙っているようだ。
案の定性器は硬さを持ち、ひとりでに反り返ってしまった。

「ありゃ。簡単に勃っちゃったね」
「そんな風に触られたら、当たり前です……っ!」

そもそも、彼の手技が巧みすぎる。我慢しようと思っても、暴力的なまでに快感を引きずり出してくる。
「……でも、私とのエッチを思い出して感じちゃったんだろう? つまり白希のここは、毎日刺激を求めてるってことだ」
「ち、違います!」
それは即座に否定した。そんな欲求不満だと思われたくない。
でも悲しいことに、身体は真逆の反応を示している。透明なつゆをこぼし、彼の次の動きを待っているようだ。
「今日は本当にたまたま……調子がおかしかっただけかもしれませんし」
「そうなの? それは残念だな。……私は本当は毎日君を抱きたいよ?」
彼がこちらを見上げ、寂しそうに首を傾ける。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【書籍化・取り下げ予定】あなたたちのことなんて知らない

gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。書籍化予定です。取り下げになります。詳しい情報は決まり次第お知らせいたします。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...