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頬凍つる
#2
しおりを挟む「こーら。お風呂は夜、一緒に入るって言ったでしょ」
「わ」
案の定、その夜は大学から帰ってきた大我に窘められた。
「しかも包帯とか全部外して。ったく……傷も見たいからもう一度入るよ」
「だって……! 退屈で、やることがないんですもん」
服を脱ぎ、彼と一緒に浴室に入る。頭なんて自分で洗えるのに、大我は自分を椅子に座らせ、シャンプーを手に取った。
「不貞腐れないの。……言ったろ? ここが世界で一番安心だ。ここには君の命を狙ってる奴らも入ってこられない。今や村で一番権力があるのはウチだからな」
羽澤家の支援は村全体を支えるほどだ。水崎家も相当だと思うが、最も財力を持っているのは恐らく羽澤の人間。いつからか力関係が逆転し、余川家も水崎家も大人しくなっていった。
「……何で私を助けたんですか?」
素朴な疑問を投げると、大我は分かりやすく視線を逸らした。
「さあね」
分からない素振りをしてるが、理由はひとつだ。“あの人”が自分を気に入ってるからだろう。
「大我さん」
振り返って彼の腕を掴む。シャワーを掛けられて瞼を閉じたが、彼を自分の方へ引き寄せた。
「……」
大我は黙ったまま、白希の胸をいじった。
「ん……っ」
何故か、そこを触られると気持ちいい。
初めてここでお風呂に入ったとき、自分で触ってみたら止まらなくなった。それから見兼ねた大我が手伝ってくれるようになり、風呂の時だけ彼に甘えている。
尖った胸の突起は、引っ張ったり捏ねたりする度かたくなる。下も一緒で、簡単に膨らんでいく。
「あ……気持ちい……」
彼の胸に体を預け、びくんと震えた。
でもまだなにか物足りなくて、彼の太腿に手を伸ばす。
「ここまで。風邪ひく」
「いや……」
「我儘言わない。ほら、脚閉じて」
無意識に開いていた脚を押され、不満はあったが従う。
浴室を出てから、大我は白希のぬれた髪にドライヤーを向けた。
「私はいつまでここにいればいいんです?」
「今はまだ考えなくていい。怪我を治すのが先だ」
「……嫌なんですよ。……先延ばしにされるの」
自分でも大人げないとは思ったが、記憶が少年時代で止まっているのだ。体は大人でも、そこは大目に見てほしい。
そして、目の前の現実を隠そうとされることが嫌でたまらない。どれだけ酷かったとしても、自分には確かに、自分なりの生活があったはずだ。早くそこに帰りたい。あの閉塞感に満ちた屋敷よりはよっぽど良いが、今の生活も足元が見えず、怖い。
だけど大我はため息をつき、頭を撫でてきた。
「辛いことしか待ってないなら、動かない方が良いんだぜ? 白希の悩みは贅沢だよ。俺なんて、やりたくもないことをずっとやらされてきたのに」
腰を引き寄せられる。彼の目に妖しい色が灯った。獣のような、獰猛さを孕んだ目だ。
そうだ。それも実はとっくに気付いている。
「貴方は私のことが大嫌いなんですよね?」
「……急に何」
シャツしか着てないから、下半身は素肌のままだ。彼のズボンに当たりながら、少しだけ踵を浮かす。
「道源様のこと好きなんでしょう? でもあの人が私を気に入ってるから、私に嫉妬している。違いますか?」
わざと笑みを浮かべて見上げると、彼の頬は紅潮した。
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