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夫婦の契り
#7
しおりを挟む「店長、お疲れ様です」
「文樹。あれ? 今日休みだろ?」
「そうなんですけど、友達連れて来ちゃいました」
店長と呼ばれた男の人は、いじっていた楽器から手を離し、近くにやってきた。
「お友達? ようこそ。ゆっくり見てってね」
「あ、ありがとうございます」
三十半ばだろうか。まだ若い人だ。
でもこれだけの楽器を扱うんだから、相当な知識量を持ってるんだろうな。
「店長、このコ白希って言うんですけど、篠笛やってたらしいんですよ。琴はあんまないけど、この前いくつか入ってましたよね」
「あぁ。タイプを教えてくれれば持ってくるよ。試し吹きしてみる?」
「え! いいえ、今はもう吹けません! 最後に吹いたの七、八年前だし!」
「いいからいいから。奥に連れてったげて」
「うぃーす」
そんなつもりなかったのに、成り行きで篠笛を渡されてしまった。何でこんなことに……。
泣き泣き口を当ててみる。久しぶり過ぎて最初はスカスカ息がもれてしまったけど、段々感覚を取り戻し、唇の当てどころがわかってきた。
「へぇ~……綺麗じゃん」
「本当。音っていうか、なんて言うんだろ。……立ち振る舞いが」
五分後、初歩的な旋律ぐらいなら奏でられるようになっていた。
「ありがとうございました……」
買う気ないのに吹かせてもらって、正直罪悪感がすごい。すると文樹さんは、にやにやしながら別の篠笛を持ってきた。
「ちなみにこれとか買う気ない? 絵に金箔使ってんだけどさあ」
「え!」
「こら、文樹。無理やり売りつけるんじゃない。友達なくすぞ」
「あはは、冗談ですよ。白希って純粋だから、反応が可愛いっつーか面白くて」
冗談だったらしい。ほっとして、口を拭いてから店長さんに手渡す。
「ありがとうございます。久しぶりに触って、ちょっと懐かしくなりました」
「それは良かった。文樹じゃないけど、また興味出てきたらいつでもおいで。最近は来客少ないから時間あるんだ」
「オンラインで買う人間増えたからさ。実際に触って見た方が絶対良いのに」
文樹さんは笑いながら、俺の腕に手を回した。
「ていうか、バイト欲しがってたじゃないですか。良かったらこいつ雇ってくださいよ。そしたら俺もシフト多めに入れるし」
「え!?」
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