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火照った秘密
#19
しおりを挟む幸せも確かに更新されてくけど、夜の営みも(激しさが)更新されていく……。
「あっあぁっ! やっ、そんな、深……っ!」
「嬉しいね。そんなに感じてくれるなんて」
身体の中心までえぐられるような激しい突きを受け、限界まで仰け反る。肌がぶつかる度にいやらしい体液が弾け、シーツをぐちょぐちょにぬらしてしまった。
さすがに朝まではいかなかったけど、眠りにつけたのは午前の三時だった。
「おはよう、白希。良い朝だね」
「はい……おはようございます」
日が昇った後も、身体中がぎしぎし痛んだ。
げっそりしている白希とは反対に、宗一は爽やかな顔でシーツを洗濯している。
「日曜の朝って、何もなくても良いね」
「えぇ、本当に」
身体はしんどいけど。と言いたいのをぐっと堪え、二人で朝食をとる。どうやら今日も出掛けるらしく、宗一は休日だというのにスーツを着ていた。
どうしたのか不思議に思っていると、宗一は白希にもスーツを着るよう促した。
「疲れてるところ申し訳ないけど、今日もお出かけするよ」
「は、はい」
ネクタイの結び方も分からなかったけど、宗一さんがやり方を教えてくれた。
それにしてもスーツなんて只事じゃない。怖いところだったらどうしよう。
……でも彼と一緒になると決めたんだ。彼がいるなら、例え地獄でもついていく。
そう密かに誓ったのが二時間前。今は、やっぱり色々無理かもしれないと思い始めてきていた。
「宗一……貴方、本気なのね?」
「本気だよ。冗談で言えることじゃない……私と白希の間を認めてほしいんだ、母さん」
都内のホテルの一室で、俺は全身から滝のような汗をかいていた。
目の前には二人の男女が訝しげな表情を浮かべ、宗一さんを見ている。俺は散々座っていいと言われたけど、とても座れる雰囲気じゃないので限界まで姿勢よく立っていた。
「単刀直入に言う方が良いと思って。私は彼と結婚したいと思ってます。父さんも、どうかご理解ください」
「休日に突然呼び出して、なにかと思えば。……本当に困った奴だな」
スーツを着た男性が草臥れたように椅子に腰かける。
この人が、宗一さんのお父様……いや、水崎家の元当主。
今では大企業を経営する大人物。静かに座ってるだけで気迫があって、挨拶以外おいそれと口を開く気になれなかった。
というか自分の場合、喋ったら絶対ボロが出る。申し訳ないけど黙っていた方が良い。
「お前は昔から何でも勝手に決めて、私達のすることは一蹴してきたな。それが今、男の……それも余川家の人間と婚姻するだと? 村と繋がりを切る為東京へ連れ出したのに、また全て無下にする気か? 身勝手にもほどがある」
「以前お話した時は、白希を引き取ることに了承してくださったじゃありませんか」
「“保護”という形で、だ。結婚なんて聞いてない」
「余川さんとは長い付き合いですから、困ってる時は助けないわけにはいかないものねぇ」
宗一さんのお母様も微かに微笑み、近くの椅子に腰かける。
断罪されてるみたいだ。処刑場と言っても過言じゃない。
でも、これが普通なんだ。普通の親の意見。自分の大事なひとり息子を、問題しか抱えてない俺に任せたくなんかないだろう。
「大体、白希といったな。力のコントロールはできるようになったのかい?」
はわっ!
痛いところを突かれ体が跳ねる。やはり、彼はこの力がいかに脅威であるか知り尽くしているようだ。
どう答えるべきか考えていると、彼の問いに宗一さんが答えた。
「ええ、もう完璧にできてますよ? 私が傍で見ていたんですから、当然と言えば当然です」
いやあぁぁぁ全然そんなことない。
「ならこの場で見せてもらおうか。そうだな……ちょうどそこに沸きたてのお湯が入ったケトルがある。それを水にしてみてくれ」
「え……っ」
宗一さんのお母様は立ち上がり、備え付けのキッチンスペースからケトルを持ってきた。
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