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火照った秘密
#6
しおりを挟む宗一さんは俺の頬に流れる涙を指ですくった。
「……素敵な言葉だ。でもやっぱり、プロポーズ私からしたいんだ。……いいかな?」
もう何度も嗅いだ花の香り。俺の中にしょっちゅう現れる辛いことや悲しいことを優しく包んでくれる。
彼の掌に頬を擦り寄せ、瞼を伏せる。
「白希。私と結婚してくれ」
時々、呼吸の仕方を忘れそうになる。それは死んだように生きていたせいなのか。
それとも、彼が俺を深い水底から引き上げてくれたおかげなのか。……今さら、自分は生きていたんだと、……何度も何度も教えてくれる。
幸せになってもいいのだと。
「はい。……喜んで……っ!」
皆が当たり前のように知ってることも、俺は知らなかったりする。
誰もが幸せになる権利がある。そんなことすら、俺の頭の中には刻まれてなかった。
だけど今日、ようやく自分の手で書き連ねる。
俺も宗一さんも、幸せになるんだ。
「幸せは探しに行くんじゃなくて、私達で生み出すんだよ」
再びベッドの中央に寄り合う。彼の言葉に頷きながら、膝に手を乗せた。
そういえば行為の最中で長い話に入ってしまっていた。俺は大丈夫だけど、宗一さんは結構辛かっただろう。前に垂れた髪を耳にかけ、身を屈める。
「宗一さん。その……ご迷惑だったら良いんですけど」
彼の脚の膝元に手を添え、消え入りそうな声で問いかけた。
「宗一さんの……な、舐めてもよろしいですか?」
自分なりに、かなりの勇気を出して尋ねた。
ところが彼は一瞬固まり、それから可笑しそうに笑った。
「何で笑うんです?」
「ごめんごめん。ふふ……いや、何か恐る恐る言う白希が可愛くって」
もちろん俺も、自分が普通じゃないことを提案してる自覚はある。にしたって、泣くほど笑わなくてもいいのに。
涙でぬれた目元をぬぐう宗一さんを尻目に、ぐっとほぞを噛んだ。
「宗一さんが、たまにやってくださることを俺もしたくて……」
「あはは、本当に殊勝だね。って、今回に関しては的確か分からないけど……可愛い婚約者にお願いしようかな」
ちゅ、と音が鳴る。頬から彼の唇が離れたのを確認し、白希は宗一の脚の間に顔をうずめた。
一度は結ばれた紐を解き、ガウンをはだけさせる。そしてずっと猛っていた彼の性器を口に含んだ。
やる前は本当に恐る恐るだったけど、くわえてからは恐怖なんてなくて、むしろ傷つけないように気を張っていた。太くて熱い。顎が疲れそうになるけど、彼にも気持ちよくなってほしくて。
「ん……っ」
果たしてこのやり方で良いのか分からないが、宗一は時折熱のこもった声をもらした。白希の頭を優しく撫で、内腿を揺らす。
今までたくさん愛してもらったように、今度は自分も彼を愛したい。口端から唾液が零れ落ちるのも構わず、無我夢中で彼のものをしゃぶった。
その間、自分の下半身も熱くなっていくのが分かった。
思わず空いた手を伸ばしかけたが、今は彼を楽にする方が先だと思い直し、慌てて目の前の膝に手をかける。
「……白希。ありがとう、もういいよ」
「えっ。……き、気持ちよくありませんでしたか……?」
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