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火照った秘密
#3
しおりを挟む今さらながら羞恥心で爆発しそうだった。案の定、ここから最低な時間が始まる。
“返事を出したらまた新しい手紙が来た”
“読んでると変な気持ちが流れ込んでくる……”
「や……」
やばばば……。
間違いない。限りなくブラック。ブラック中のブラックだ。
“好きって気持ちが、文章だけじゃなく手紙そのものに詰まってるのか?”
怪訝な表情で便箋を取り出す、今より幼げのある宗一さんが見えた。
最悪だ。俺が書いた手紙から、俺の思考を読み取っていたんだ……!!
会ったことも話したこともないのに、孤独と憧れが爆発して、彼に“大好き”感情が込もった手紙を送り続けてしまっていたんだ。
これ、普通にめちゃくちゃ迷惑じゃないか。ただの文通だと思われたらまだマシだったけど、開封する度にホットな感情が流れ込むって……。
前に宗一さんが言ってたラブコールってこれのことか。
泣きたくなる状況の中、また彼の想いを受け取った。
“いつか結婚してほしい?”
「わあああっ!!」
「わっ。どうしたの?」
体が繋がってることも忘れ、上半身を起こした。駄目だ、これ以上は見てられない。
「宗一さん!」
「ん?」
「昔のことは忘れてください!!」
彼の肩に手をかけ、無我夢中で叫んだ。宗一さんはというと、訳が分からず呆然としている。
その気持ちは分かるけど、俺は過去の恥ずかしい行いを払拭することで頭がいっぱいだった。
「あああ……俺、昔の自分が意味分からなすぎて怖いです。結婚とか、はは……昔は同性婚なんてできなかったのに、何言ってるんだか。いやー、子どもの妄言って本当に奇想天外ですよね。宗一さんも怖い思いさせてすみません」
「白希? ちょっと落ち着いて。何の話をしてるんだい?」
「おかしな力が働いて、宗一さんの記憶が見えたんです。俺が子どもの頃に送った手紙を読んでる貴方が脳裏に浮かびました。はああ……」
「……!」
頭を抱えて俯くと、彼は少し固まり、それからゆるゆると動いた。
「ふぁ」
腰を引き離し、彼のものが抜ける。唖然としたせいもあるけど、間抜けな声を出してしまった。
「まだやり取りを始めた頃の記憶かな?」
「そ、そうです。宗一さんも嫌だったでしょう。会ったこともない子どもから気持ち悪い手紙を送られて」
「気持ち悪い?」
宗一さんは俺の言葉を反芻し、脱ぎ捨てたガウンを肩に羽織った。
「それこそ意味が分からないな。記憶の中で、私が君の手紙に一度でもそんな風に思っていたかい?」
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