熱しやすく冷めやすく、軽くて重い夫婦です。

七賀ごふん

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植え替え

#28

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当事者のはずの俺が一番何も知らなくて、いつも宗一さんがひとりで悩んでいる。
守ってもらってばかりだ。
だけど彼もそれを否定し、俺の額にキスする。

「本当は余川さんや周りの反対を押し切ってでも、もっと早く君に会いに行けば良かったんだ。その後悔はこれからもずっと消えない」
「そんな……宗一さんは関係ないのに」
「確かに、関係ないって言われたら終わりだけど。同じ村で、同じ力を持った男の子のことを気にするのは普通さ」

腰を持ち上げられ、彼の膝の上に乗せられる。少しだけ高い位置から、彼の優しい眼差しを受けた。
「君のことはずっと前から知っていたし、ご両親に大事にされてるんだと思い込んでいた。だからあまり外へ出たがらないのだと……実際はその逆で、過保護どころか虐待を受けていた。何も行動しなかった自分が許せないんだ」
彼の言葉にハッとする。虐待なんて言われると、また一層重たく感じる。
乱暴されたことはないから考えもしなかった。むしろこの力の危険性を思えば、誰にも会わず、閉じ込められるのは当然と思っていたけど。

「宗一さんは、本当に優しいですね」
「普通だよ。もし君が私だったなら、同じように思ったはずだ」

俺が宗一さんだったら。全然思いつかなかったけど、確かに苦しんでる子がいると知ったなら、放ってはおけない。
でも自分が宗一さんの親だったら必要以上に関わらせたくないと思うかもしれないし……それぞれの立場で考えると、本当に難しい。最終的に、力を使いこなせない自分が一番悪いんじゃないかと思ってしまう。

「ううん……全部、俺がしっかりしてれば起きなかった問題なんですよね。諸悪の根源って考えたらすごい罪悪感が……」
「白希は真面目過ぎるんだよ。それが良いところなんだけど」




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