熱しやすく冷めやすく、軽くて重い夫婦です。

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
55 / 196
植え替え

#13

しおりを挟む



「せっかく白希様の前では冷静沈着を心掛けてたのに……結局お前のペースに狂わされる」
「まぁまぁ。きっと空腹で気が立ってるのさ。先に軽いものを用意しよう」
宗一はキッチンへ入り、冷蔵庫から作り置きのタッパーを取り出した。タイマーとにらめっこしている白希の頬にキスをし、空いたスペースで三人分の小皿を用意する。

「私も、自分が過保護だということはちゃんと気付いてる。とは言え白希は狙われやすいんだ。良い子な上に、困ったことに容姿まで良いからね……最近は日中も変質者が現れるし、私がいない時になにかあったら大変だろう? 誰が白希を守るのか、という話だ」
「人が多いところなら大丈夫だろう。やたら白希様の見た目について話すが、俺からしたらお前が一番彼を変質者の目線で見てると思うぞ」
「全く人聞きが悪い。白希、聞かなくていいよ」

宗一さんが隣でなにか言ってるけど、時間を見るのに必死でそれどころじゃない。出汁もいれたし、後は的確な時間に火を止められたら完成だ。

「とにかく。ニュースでも取り上げられなくなったし、そろそろ大丈夫のはずだ。彼を自由に行動させよう。でないといつまで経っても籠の鳥だ。その苦しみはお前も分かるだろう?」
「もちろん」

キッチンから戻り、トレイごと小皿を置く。テーブルに手をつき、宗一は真岡を見下ろした。

「束縛してくる人間に囲まれて育ったからね。私や白希はお家存続に欠かせない強力な道具なんだよ。但し己で制御できなければ、途端に爆弾扱いされる」

抑揚のない声には、確かな重圧が感じられる。真岡は常に守っていた一線に足を踏み入れてしまったことに気付いた。

「そして結局、私も彼らと同じ血が流れてる」
「そう……いう意味じゃ」

真岡が苦しそうに顔を歪めたとき、鍋を持った白希がやってきた。こちらの会話などつゆ知らず、笑顔で鍋の蓋を開ける。
「お待たせしました! 簡単なものですけど、召し上がってください」
「白希、重い物を運ぶ時は私に言いなさい。怪我したら大変だろう」
宗一は終始はらはらして、白希の様子を傍で眺めてる。
そういうところが過保護だと言ってるのだが……真岡は半ば諦めモードでため息をついた。

「お二人ともお疲れ様です。さ、熱いうちにどうぞ」

白希が作ったのは和風出汁のミルフィーユ鍋だ。柚子胡椒と一緒に食べると、またアクセントになって美味い。
「これは驚きました。白希様、ちょっとの間に上達されて素晴らしい」
「だろう? 白希は吸収が早いんだ」
「本当に。でも何でお前がドヤ顔なんだ」
「あはは……」
宗一と真岡のやり取りは相変わらずだが、見ていて楽しい。

「簡単なレシピなので、真岡さんならすぐにできちゃいますよ。……それとやっぱり、様付けはやめましょう。呼び捨ての方が慣れてるし、歳下だから敬語じゃない方が嬉しいです。ねっ、宗一さん!」

真岡の立場上、拒否することは目に見えてる。その為、日中の上司である宗一に同意を求めた。
「やっぱり外で様呼ばわりされてると、どんな関係かと思われますよ。逆に目立ってしまいます。俺と真岡さんは仕事の付き合いじゃないですし!」
「ふーむ、確かに。雅冬、これからはもっとカジュアルに白希と関わってもらえないか。……そうだな、それこそ友人のように」
宗一は菜箸を置き、対面の真岡に微笑んだ。宗一の隣では白希が緊張しながら様子を見守っている。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

処理中です...