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植え替え
#9
しおりを挟む「つまり私が君の初めてということか。いいねぇ。いっそ全部独占したい」
「そ、それなら俺も……!」
俺も、彼の初めてを勝ち取りたい。勝負するようなものじゃないけど、好きな人の視界に入りたいと思うのは自然なことだ。
あぁ……。
というか、もう俺はとっくに認めてるんだ。
宗一さんが好き。大好き。
ならもう、彼に相応しい人間になるしかない。
「今は全然、駄目な人間だけど。……努力します。貴方の、つ、妻になれるように」
顔から火が出そうなほど恥ずかしい台詞だ。さすがに目を合わせることができない。
でも大事なことだし、ちゃんと目を見て言うべきだよな。失敗した……!
なんて色々考えてる隙に、額にキスされた。
「今の台詞は、もう結婚承諾として受け取っていいかな?」
「いえ! 俺からのプロポーズ。の、予行練習。……です」
言葉を濁しすぎて訳が分からなくなった。
状況を整理すると、彼のプロポーズに答える前に自分からプロポーズした。それも、“いつか”という不確定なもので。
「まだ普通の生活すらできない俺が、結婚生活に馴染めるとは思えないんです。だから先日お話したように、先ずは家事を完璧にこなしてみせます! それを見て、他にも色んなことを考慮した上で、ご判断ください」
「わ、急に面接官みたいになったね」
ちょっと違うと思ったけど、宗一さんは納得したように手を叩いた。
「私は白希が家事をできなくても構わないんだけど」
「駄目です、甘やかしたら! もっと厳しくしてください!」
「うん。そう言うから、楽しみにしてるよ。でも私の為に努力しようとするなんて……それだけで幸せ過ぎるけどね」
ポットに入った茶葉が、熱に浮かされる。透明だったガラスがどんどん濃い色に変わっていく。
人の心も、こんな風に視認できたら分かりやすいのに。
いっそ幸福指数が目に見えたら嬉しい。喜んでる宗一さんを見たら、自分も幸せになれる。
本当はもっと触れたい。ストッパーがあるからそうしないけど、理性や常識を捨てていいのなら間違いなく俺の方から動いてる。
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