熱しやすく冷めやすく、軽くて重い夫婦です。

七賀ごふん

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奇な糸

#20

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この世にこんないやらしい音が存在するなんて。
白希は天井を見上げながら、宗一の髪を掴んだ。引き剥がそうとしたのではなく、むしろ押し付けようとした。身体は自分の意志と反する行動をとっている。

太腿を閉じようとしても、簡単に開かされてしまう。
気持ちいい。気持ちよすぎて、もはや地獄だ。
射精したばかりの性器を柔らかい舌でくるまれたら、もう正気じゃいられない。

「白希……」
「ん、んん……!」

宗一の大きな手が胸に伸びる。シャツを首まで捲りあげられ、二つの突起が外気に晒された。
「ぷっくらして可愛い。自分でも触ってごらん」
手を捕まれ、乳首へと誘導される。だが自分で触っても何も感じなかった。それよりもう片方の、宗一が触る乳首の方がむずむずする。

「こっちも、触るね」

再び脚を開かされる。そんなところを下から見上げられるのは羞恥でどうにかなりそうだった。
「や……宗一さん、見ないで……っ」
いくらなんでも、男のそんな部分を見て喜ぶはずがない。そう思ったのに、尻の割れ目を辿り、彼は小さな入り口に舌をさしこんだ。
「ふあぁ……っ!」
その瞬間、身体の中を熱風が吹き抜けた。
熱い。とけてしまう。

背中が大きくしなる白希を押さえて、宗一は愛撫を続けた。
「ずっと……君とこうしたかった」
ぬれた指が後ろのくぼみに食い込む。その頃には全身の力が抜けていた。
自分が何をされてるかよりも、宗一の声、表情、仕草に集中していた。彼もどうしようもなく感じている。そう思うだけで身震いする。

嬉しくておかしくなりそうだ。
生理的な涙が零れる。その雫をすくいながら、宗一はもう片手を激しく動かした。
「あっ、あ、あぁ!」
痛いのに、性器の裏がじんじんする。もっと激しく擦ってほしい。
さっきと同じように、彼の手を掴んだ。やめてほしいという意味ではなく、もっとしてほしくて。
ところが彼は動きを止めてしまう。

「何で……」
「もっと欲しかったら、言葉で聴かせて?」

宗一は憎いぐらいの綺麗な笑顔を浮かべ、白希の手の甲にキスする。
「私も、これでも不安なんだ。白希に求められてることを実感して、安心したいんだよ」
言いたいことは分かるが、それはあまりにハードルが高い。

むしろはっきり言葉にすることが怖いから、勢いに任せていたところもある。
だって本音を伝えたら、今度こそ後戻りはできない────。

中に入っている宗一の指が、ふいに角度を変えた。奥の出っ張りをくすぐるように、ゆるゆると動く。
「んう……!」
それだけでも全身を捩るだけの快感が走った。
もっと欲しい。でも駄目だ。ここでやめなきゃ。

開いた両脚の間から、宗一の手が伸びる。それはそのまま、白希の唇に触れた。
「怖がらないで」
優しい……陽だまりのような声だ。
ずっと暗闇で閉じこもっていた自分を連れ出してくれる。冷たく悴んだ部分が綻んでいく。

「私の愛はこの星より重いんだ。だから制御不能になって、私が君を押し潰してしまう前に……私を求めてくれ」

指が勢いよく引き抜かれる。

物欲しそうに開く口を自分の手で塞いだ。

こんなの反則だ。欲しがらないなんて不可能。
何もかも考えなくて済むように、いっそ押し潰してほしい。

「……ください。宗一さんの、もっと……どうなってもいいから……っ!」




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