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奇な糸
#7
しおりを挟む何でだ。こんなお荷物を……。
白希が蒼白になりながら俯いていると、真岡は優しく声を掛けた。
「宗一様は真剣です。貴方さえ嫌じゃなければ……どうか、宗一様の傍にいてください。貴方に頼られることを心から望んでるようですから」
真岡さんのあたたかい眼差しが印象的だった。彼は宗一さんのことをよく知ってるんだろう。仕事の関係だけではないように窺える。
そして彼が抱く感情も、烏滸がましいかもしれないけど、分かる。
「嫌なんて、とんでもない。あの人は命の恩人です。でも、だから尚さら分からないんです。俺は何も返せないのに、助けてもらってばかりいる。どうしてこんなにも……気を配ってくれるのか」
両手をぎゅっと握る。高速から一般道に下り、開けた道に出た。まだ一帯田園風景で、宗一の家からは遠そうだ。
青い空と黄緑のコントラストが、残酷な思考を遠ざけようとする。
「そう言いますが、白希様もとても気を遣う人でしょう。そういう所が放っておけないんじゃないでしょうか」
真岡は座り直し、緩やかに速度を落とした。赤信号のため停止し、こちらに目を向ける。
「宗一様は努力家で……だからこそ、努力しようとする人が好きみたいです。こんなことを申し上げるのは失礼かもしれませんが、初めて会った日と印象が違うので驚きました。貴方は、確かに変わろうと努力されてるように見えます」
外見だけじゃなく、中身も変わったらしい。正直中身については、一人称を変えようと思ったことぐらいしか進歩がないけど……。
「……ありがとうございます……真岡さん」
それでもそんな風に思ってもらえたことが嬉しい。
そして、こんなにも優しい人達に出逢えたことが幸せで仕方なかった。
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