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二十歳の青年
#20
しおりを挟む「挑戦的な白希もいいね。ピュアだと思ってたけど色気も出せる。久しぶりにぞくぞくしたよ」
「や、やだな。演技ですよ。もうやりません」
椅子に腰掛け、顔を逸らす。遠慮がちに目を瞑ると、瞼にキスされた。
「演技で私を翻弄するなんて、悪い子だ」
宗一さんが言えって言ったんだけど……反論したらただじゃ済まない気がして、こくこくと頷く。
「まるでお仕置きされたいみたいな頷き方だね」
「いえいえ、違いますっ! そういうつもりじゃなくて……」
「はははっ。大丈夫、分かってる。白希は本当に見てて飽きないなぁ」
彼ははにかみ、身体中に口付けしてきた。まるでここは自分のものだと言うように。
「恥ずかしかっただろうに。……頑張ってくれてありがとう」
優しく頭を撫でられる。相変わらず落ち着かないけど、その手つきには安心した。
本当はもっと幼い時に、こんな風に撫でられてみたかった。
でも今はいい大人だ。撫でられて喜んでたら確実にやばい人認定される。
顔がにやけそうになるのを堪えて、首を横に振った。
「さて……ついつい盛り上がっちゃったけど、湯船に浸かろうか」
大人二人でも入れるユニットバスに誘われ、恐る恐る足を入れる。二人で入ると一気にお湯が溢れ、床の膜をさらに覆った。
「……いい香り」
「気に入ったなら良かった。ローズソルトを入れてるんだ」
「へぇ。特別感あって、素敵です」
お湯がほんのり薄桃色、手ですくうと香りが立ち上る。
村にいた頃はお風呂は夜中しか許されなかった。夜が遅いから長湯もどうかと思って、湯船は浸からない日々が続いていた。
でも、やっぱりお風呂って良いな。
無意識にお湯を手のひらですくっていると、横から視線を感じた。
「白希はやること全部が可愛いね。今度ひよこでも持ってこようか」
「ちょっ……遊びませんよ!?」
彼のことだから、湯船におもちゃを浮かべて遊ばせようと考えてそうだ。誤解されてはたまらない為、浴槽の中で正座する。
「久しぶりだったり、初めてだったり。色んなことを体験させてくれるから、恥ずかしいぐらいはしゃいじゃいます」
「それでいいんだよ。私も見てて嬉しくなる」
「はは。そんな風に言ってくれるのは、多分宗一さんだけですよ」
ついさっきいかがわしいことをしたとは思えないほど、和やかに笑い合った。
「俺は遊んだ記憶ってほとんどないけど、宗一さんは? 好きな遊びとかありますか?」
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「へえ。楽しそう……! 詳しく聴かせてもらえませんか?」
前のめりになり、浴槽の底に手をついた。
「小さい時から宗一さんのことを知ってるのに、実際は全然知らないから……。ご迷惑じゃなければ、好きな物や好きなことを知りたくて」
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