熱しやすく冷めやすく、軽くて重い夫婦です。

七賀ごふん

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二十歳の青年

#18

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求められることに少しだけ喜びと、恐怖と、疑心が混じる。彼は俺をどうしたいのか、ということよりも。

俺は、彼をどうしたいのか。

ここまで求められたことに、かつてない高揚を覚えている。捕まえられたというより、「捕まえた」と思ってしまった。

もっと求めてほしい。中途半端は嫌だ。だって、俺は常に孤独だから。

「ふっ……」

なんて、何を馬鹿な。

心の内で自嘲的に笑った。
最低だ。寄生したくないなんて思いながら、しっかり彼に縋りつこうとしてるじゃないか……。
甘えるな。自分は優しくされるべき人間じゃない。

「すみません。キスは駄目です」

宗一の唇に人差し指を宛て、その指で自身の唇に触れた。
とても柔らかかった。きっと、触れたらとけて消えてしまう。一晩の夢みたいになかったことになる。

「宗一さんには俺以外の人と幸せになってほしいから……」
「……」

彼は黙って、お湯が出っぱなしのシャワーヘッドを掛ける。勢いよく噴射するお湯が、自分達の頭上に降りかかった。まるで泣いてるみたいだと思い、少し可笑しくなる。

宗一さんの前髪が垂れて、さらに色気が増す。目に毒だ。
だけど困ったことに目が離せない。彼の顔をずっと見ていたいという欲求に支配される。

「分かった。君が良いと言うまでキスはしない」

宗一は髪をかき上げると、白希の耳朶を甘噛みした。
「あっ」
「その代わり、唇以外は私のものだ」
誰にも渡さない、と腰をホールドされる。背中がぞくぞくして、思わず瞼を強く瞑った。
「この髪も、肌も、感じやすい胸も……私だけが知っていればいい。君を一番最初に見つけたのは私だ。初めて見た時から、……ずっと」
尖った乳首を指で押し潰される。わずかに痛みを感じたけど、それすら快感の材料になる。乳輪まで真っ赤に染まり、自己主張していた。




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