18 / 196
二十歳の青年
#16
しおりを挟む夫婦とか、特別な関係になれなくてもいいんだ。ただ近くにいたい。世界で一番信頼して、心を通わせたいと思うのは彼だけだから。
頬をつたう涙をぬぐい、床に足を下ろす。自分が着ていた服を代わりに拾おうとすると、その手を掴まれた。
「白希……っ!」
今までのはささいな戯れだとでも言うように、激しい愛撫をされた。
「あ……っ!」
訳が分からぬまま、またイかされて、床を汚した。
つま先が天井に向いて、呆然とそれを見ていた。
「君も私のことを求めていた……か。まずいな。今にも飛んでしまいそうだ」
宝石のような美しい瞳に、何とも妖しい色が灯る。
「いつだって私だけが君を求めてると思っていた。ふふ……本当に、白希は嬉しいことばかり言ってくれるね」
ぬれた内腿をなぞられる。その度に魚のようにびくついた。
何が何だか分からない。だが直後、冷水をかけられたように目が覚めた。
「ちなみに、私に求婚したのは白希が先だ」
宗一は白希の太腿に、指でなにかの文字を書いた。
恥ずかしい記憶が走馬灯のように駆け巡り、視線を逸らす。
……なんてことだろう。子どもの頃の自分を引っぱたきたい。
「……と。このままじゃ風邪をひくね。この話はまた今度にして、お風呂にしよう」
「え……わっ!」
宗一はこちらに迫ると、自分を抱き抱えた。全裸なこともあり、堪らなく恥ずかしい。
「お、下ろしてくださいっ」
「暴れない暴れない」
力を入れて押してもびくともしない。おかしなほど手応えがない。間違いない。重量操作されてる。
一般男性の体重ではなく、犬猫レベルで軽くされてるようだ。彼は浴室に入ると、ドアの前に立ち塞がって白希が逃げられないようにした。
「お湯も沸いてるね。良かった」
「宗一さん……その、求婚って」
良くないかもしれないけど、蒸し返してしまった。なんせ黒歴史中の黒歴史だ。
かつて白希は、顔も知らない相手に全てをさらけ出していた。その相手こそ宗一になるが、今思うと若気の至りじゃ済まない。
子どもが考えることというのは、時に残酷で、時に常軌を逸している。
青い顔で浴室の隅っこに寄ると、宗一は自分の服を脱ぎ始めた。
「思ったとおり、綺麗に忘れてそうだね。でも構わないよ。君には今の私を好きになってもらう」
22
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説


淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
次男は愛される
那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男
佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。
素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡
無断転載は厳禁です。
【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】
12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。
近況ボードをご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる