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透明
#3
しおりを挟む単純思考で、自分のことすら満足にできない俺を晃久はいつも助けてくれた。俺も彼に甘えていたから尚さらだったんだろう。
声が好き。いつも引っ張ってくれる手が好き。
気さくな態度も、優しい眼差しも、全部、全部。
「朔」
彼に名前を呼んでもらえると、馬鹿みたいに過剰反応した。嬉しかったんだ。隣にいるだけで舞い上がるぐらいに。
いつかこの想いを伝えたいな。多分無理だろうけど。
男が好きなんて……お前が好きだなんて話したら、どんなことになるか。馬鹿な俺でもさすがに分かる。
だから言わないでおく。卒業しても、きっとまた会えるだろうし。
その頃には何もかも変わってるんだろう。
俺の彼への想いも、きっと。
「……朔?」
ヒンヤリした何かが、頬に触れた。
びっくりして触り返す。手だった。……晃久の。
「あれ、俺寝てた……?」
「うん。何か寝言言ってたぞ」
柔らかいベッドの上で、身体を起こした。お互い服を着てなくてちょっと意識してしまう。
そうだ、確かあの後……俺は晃久と寝たんだ。
「三十分ぐらいかな。悪い、俺が無理させ過ぎた。久しぶりで加減わかんなくてさ」
そう言ってニコニコしてる晃久は確かに、疲れの色が見えない。
若いな……。
同い年だけど。心の中でツッコミを入れた。
「何か夢を見てた気がする。思い出せないけど」
「へぇ。俺が出てる夢かな」
「いや……? わかんない」
腕を組んでちょっと考えた後、傾いて彼の横顔にキスした。
「でも、好きだよ。よくわかんないけど、今はめっちゃ言いたい」
晃久は赤くなった顔を手で覆って隠した。
「はぁー……素直じゃないお前も可愛かったけど、やっぱ素直なお前は二倍は可愛いわ」
「そいつはどーも。お前も可愛いよ」
普段だったら「可愛い」なんて言われたくもないんだけど、今日は全然嫌じゃなかった。
むしろ余裕でその言葉を返せる。
俺も、晃久が好きだから。なんて、すごい。これが惚気の力か。
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