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解答者

#2

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晃久と同居してから、もう二ヶ月が経とうとしている。

だけど、家の中ですらあまり顔を合わせてない。合わせてもどこかよそよそしい空気。
だからといって気まずい、という段階には到達してないのが凄いところだ。多分本当に気まずかったら俺から追い出してるし、晃久だって出て行くと思う。
お互い仕事のリズムがあるから、さもありなんな日常だ。忙しいから本当に大事なことは電話でする。まぁ大事な話なんて、せいぜい家賃や生活費とかだけど。

ただの友人……いや、他人に戻った。

喜ぶべきなのに不思議だ。冷めた頭に反して、身体は熱い。
「あいつちゃんと抜いてんのかなぁ……」
自分の部屋のベッドで、そんなことを呟いた。
「馬鹿か、俺……!」
正気じゃない独白に恥ずかしくなって、顔を手で覆う。他人の事情を心配するとか余計なお世話もいいとこだし、何より気持ちが悪い。
晃久だって俺にそんな風に思われてると知ったら、きっとショックなはずだ。

「くそ……っ」

俺は彼とセックスしてからは、誰ともしてない。
だから当然自慰で済ませている。
どれだけ歳を重ねても快楽に勝てないというのは、生き物の最大の謎だ。
気持ちよくてたまらない。それ以上に、こんな自分が気持ち悪い。
心と身体は常に違うものを求めていて、おかしくなりそうだった。
やっぱり、こんな時にいつも独りだ。高校生だった頃から何一つ成長してない。



それでも仕事だけはちゃんと行く。
眠くても怠くても、ひとりで生きてくなら尚さらだ。
「そう、このやり方で合ってるよ」
「やったー!」
勤め先の塾で、生徒に解答用紙を手渡す。

子どもは嫌いじゃない。勉強は嫌いじゃない。教えることは嫌いじゃない。
だからこの仕事を続けられている。
全部無難な選択肢だった。バイトとしてやってるのも、皆同じ。
ずっとずっと、俺はこうやって生きてくのか。
「奈津元君、受付でお客さんが待ってる」
「あ、……はい」
仕事も終わりに差し掛かったとき、永山さんに言われて入口へ向かった。
誰だろう。生徒の関係者なら伝えてくれるはずだし。
特に何も考えずに受付まで行くと、見覚えのある人物が立っていた。
「おっ、朔。久しぶり」
「雅人さん……何でここに?」
思いがけない人がそこにいたから、つい声が上擦ってしまった。

「こ、困りますよ。今仕事中だし、職場になんて来られたら……」
「お前が電話番号変えて教えなかったからだろ。わざわざ捜して会いに来たんだから、もうちょっと喜べよ」

と言うけど、喜べるわけがない。
正直な話、もう二度と会いたくなかった人物だ。

彼は北河雅人きたがわまさと。大学時代の先輩。
そして、一年前に別れた元恋人だ。





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