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ありったけの夢を~
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秋も終わり、そろそろ冬に入る頃、俺達は瑞雪に多くの食料品やらを詰め込んでいた。
卒業試験。と言う名の世界一周航海のためだ。ちなみに、海上保安庁の幹部学生も俺達と一緒に訓練することになっている。
「というか、俺達卒業までそろそろじゃん」
こうやって準備してて気づいた。当たり前の事。こうもあっさり時間なんてのは過ぎていくのか…。
「なに黄昏てんだよ艦長。手伝え」
佐々木の檄が飛んだ。
「はいはい。手伝いますよー」
てちてちと(?)俺は荷造りを手伝いに行った。
どこかの船の出航喇叭が高らかに鳴った。いつも通りの風景だ。
ただ違うのは灰色ではなく、目がチカチカ、と言うか目が正直痛くなるような純白な船体に対照的な青色のライン。青い文字でアルファベットが書いてある船が共に出航しようとしていることだ。
海上保安庁の練習船、こじま。だったかな?ともかく俺達はこの船と共にめちゃくちゃ長い航海をすることになっている。
「すげぇな。電光掲示板ついてんぞあの船」
出航中と言う文字が電光掲示板に記されている。
「そんな事より指揮をとってください」
永久保からの説教もこの航海で最後になるのか。とは言っても途中で寄港するからこれで最後と言う訳でも無いのだが。けどなんだかセンチメンタルな気持ちにはなる。
「はいはい。出航準備!錨鎖詰め方!前部員錨をあげー!」
カラカラと錨鎖が巻き上がる音がする。
「正錨ー!」
「よっしゃ!総員、出航用意!」
吉岡の喇叭が響く。初めのうちはたどたどしかったが、立派になったもんだ。
…あれ?俺、なんかオヤジくさくね?
「まぁ、いいや。瑞雪出航!両舷前進微速!赤黒なし針路1ー6ー0度よーそろー!」
少しづつ、波を掻き分けながら進んでいる事がわかる。
もうそろそろ港をでる。
「よっしゃ!航海長操艦!」
『航海長操艦!』
艦橋メンバーが全員復唱する。
「両舷前進原速、赤黒なし。針路1ー6ー0度よーそろー!」
「いただきました、航海長。両舷前進原速、赤黒なし。針路1ー6ー0度よーそろー!」
目指すは第一寄港地点、ハワイのホノルル。約六日間の船旅が始まった。
寄港してすぐに、軍港のお偉いさんのスピーチみたいなのが行われた。
ちなみに、俺は英語は大の苦手だ。言ってる事の、まぁ半分はわかっている気はするがそれ以外はさっぱりだ。照りつける太陽はあの時と変わらず俺達を照りつけていた。
『~.Thank you.』
どうやらスピーチが終わったようなので、取り敢えずパチパチと俺達は拍手をした。
「なんて言ってたの?」
横にいる永久保に聞いてみた。理由は単純。わかってそうだからだ。
「駅前留学にでも通ったらどうですか?」
返ってきたのはなかなか厳しい意見だった。
「うーん。まぁ、考えとくよ」
本気で行ってみようかな、駅前留学。
そんな事を考えていると、懐かしい声が聞こえてきた。
「ひさしぶりだね。菜月君」
声の主はハリソンだった。
「ひさしぶりです。ハリソンさん」
「Ms.マナツは元気かい?ちゃんと家に帰ってやってるかい?」
「ええ。元気ですし、家にも帰ってます」
一週間に一回、俺は実家に帰っている。これは母さんとの約束だ。
「そうかそうか。なら結構」
「というか、ハリソンさん真珠湾にいなくていいんですか?」
そう。ハリソンは何を隠そう真珠湾で司令官をしている。そんな大事な人がこんな所で学生と戯れていいのだろうか。
「大丈夫、永久保さん。ちょっとやそっと抜け出したぐらいで…」
そう続けようとしたハリソンを、がし!と羽交い締めした軍人がいた。
「What!?」
「I came to bring back!」
「No!No!No!No!」
いい歳こいたおっさんが、子供のようにだだをこねていた。
「えっと…それじゃあ、俺達そろそろ行くんで」
「ちょっと!菜月君!?」
俺と永久保は回れ右をして歩いていった。後ろを振り向かずに。
「Oh my god!」
そんでもって、俺は初めて本場のオーマイゴットを聞いた。
「これ、どうかな?」
一日だけの休暇中、永久保に半ば無理矢理近くのショッピングセンターへ連れてこさせられた。
そのショッピングセンターの一角にある、服屋で南国チックなワンピースに身を包んだ永久保が試着室から出てきた。
「ん。あぁ、似合ってる似合ってる」
そう言いながら俺はノートPCを立ち上げた。
「…ねぇ、こっち向いてよ」
と言って頬をつねられ、無理矢理前を向かされた。
「…おう、似合ってるんじゃねぇか?」
「茶化してるの?」
「本心だよ。ったく、なんで柳原とかにに頼まねぇんだ?」
艦橋の女子は少ないように見えて結構いるし、そうじゃなくても他の部署にいる女子を誘えばいいのに。
「柳原さん、寝てるのよ。上から寝言が聞こえてきたわ。『キャラメルポップコーンの海だー!』とか言ってたし」
そういえば、あいつ昨日当番寝台だったな。
「あいつの夢どうなってんだよ」
「さぁね。私もわかんないわ」
はぁ、と永久保がため息をついた。
「ほんと、どうしてこんな人が艦長なのかしら」
さらりと嫌みを言われた。
「ははは、それを言われちゃ元も子もねぇな」
「少しは自覚してくださいね?」
「了解了解。気をつけるよ」
この後、今まで迷惑かけてた分として奢ったのは言うまでもない。
*操艦、号令に間違いがある可能性がありますが、ご了承下さい。
*またみすぼらしい文になってすみませんでした。
*あ、あとしらぬいが進水しましたね。個人的にうれしいです。かげろうとか来ないかな?とか密かに期待してます。
卒業試験。と言う名の世界一周航海のためだ。ちなみに、海上保安庁の幹部学生も俺達と一緒に訓練することになっている。
「というか、俺達卒業までそろそろじゃん」
こうやって準備してて気づいた。当たり前の事。こうもあっさり時間なんてのは過ぎていくのか…。
「なに黄昏てんだよ艦長。手伝え」
佐々木の檄が飛んだ。
「はいはい。手伝いますよー」
てちてちと(?)俺は荷造りを手伝いに行った。
どこかの船の出航喇叭が高らかに鳴った。いつも通りの風景だ。
ただ違うのは灰色ではなく、目がチカチカ、と言うか目が正直痛くなるような純白な船体に対照的な青色のライン。青い文字でアルファベットが書いてある船が共に出航しようとしていることだ。
海上保安庁の練習船、こじま。だったかな?ともかく俺達はこの船と共にめちゃくちゃ長い航海をすることになっている。
「すげぇな。電光掲示板ついてんぞあの船」
出航中と言う文字が電光掲示板に記されている。
「そんな事より指揮をとってください」
永久保からの説教もこの航海で最後になるのか。とは言っても途中で寄港するからこれで最後と言う訳でも無いのだが。けどなんだかセンチメンタルな気持ちにはなる。
「はいはい。出航準備!錨鎖詰め方!前部員錨をあげー!」
カラカラと錨鎖が巻き上がる音がする。
「正錨ー!」
「よっしゃ!総員、出航用意!」
吉岡の喇叭が響く。初めのうちはたどたどしかったが、立派になったもんだ。
…あれ?俺、なんかオヤジくさくね?
「まぁ、いいや。瑞雪出航!両舷前進微速!赤黒なし針路1ー6ー0度よーそろー!」
少しづつ、波を掻き分けながら進んでいる事がわかる。
もうそろそろ港をでる。
「よっしゃ!航海長操艦!」
『航海長操艦!』
艦橋メンバーが全員復唱する。
「両舷前進原速、赤黒なし。針路1ー6ー0度よーそろー!」
「いただきました、航海長。両舷前進原速、赤黒なし。針路1ー6ー0度よーそろー!」
目指すは第一寄港地点、ハワイのホノルル。約六日間の船旅が始まった。
寄港してすぐに、軍港のお偉いさんのスピーチみたいなのが行われた。
ちなみに、俺は英語は大の苦手だ。言ってる事の、まぁ半分はわかっている気はするがそれ以外はさっぱりだ。照りつける太陽はあの時と変わらず俺達を照りつけていた。
『~.Thank you.』
どうやらスピーチが終わったようなので、取り敢えずパチパチと俺達は拍手をした。
「なんて言ってたの?」
横にいる永久保に聞いてみた。理由は単純。わかってそうだからだ。
「駅前留学にでも通ったらどうですか?」
返ってきたのはなかなか厳しい意見だった。
「うーん。まぁ、考えとくよ」
本気で行ってみようかな、駅前留学。
そんな事を考えていると、懐かしい声が聞こえてきた。
「ひさしぶりだね。菜月君」
声の主はハリソンだった。
「ひさしぶりです。ハリソンさん」
「Ms.マナツは元気かい?ちゃんと家に帰ってやってるかい?」
「ええ。元気ですし、家にも帰ってます」
一週間に一回、俺は実家に帰っている。これは母さんとの約束だ。
「そうかそうか。なら結構」
「というか、ハリソンさん真珠湾にいなくていいんですか?」
そう。ハリソンは何を隠そう真珠湾で司令官をしている。そんな大事な人がこんな所で学生と戯れていいのだろうか。
「大丈夫、永久保さん。ちょっとやそっと抜け出したぐらいで…」
そう続けようとしたハリソンを、がし!と羽交い締めした軍人がいた。
「What!?」
「I came to bring back!」
「No!No!No!No!」
いい歳こいたおっさんが、子供のようにだだをこねていた。
「えっと…それじゃあ、俺達そろそろ行くんで」
「ちょっと!菜月君!?」
俺と永久保は回れ右をして歩いていった。後ろを振り向かずに。
「Oh my god!」
そんでもって、俺は初めて本場のオーマイゴットを聞いた。
「これ、どうかな?」
一日だけの休暇中、永久保に半ば無理矢理近くのショッピングセンターへ連れてこさせられた。
そのショッピングセンターの一角にある、服屋で南国チックなワンピースに身を包んだ永久保が試着室から出てきた。
「ん。あぁ、似合ってる似合ってる」
そう言いながら俺はノートPCを立ち上げた。
「…ねぇ、こっち向いてよ」
と言って頬をつねられ、無理矢理前を向かされた。
「…おう、似合ってるんじゃねぇか?」
「茶化してるの?」
「本心だよ。ったく、なんで柳原とかにに頼まねぇんだ?」
艦橋の女子は少ないように見えて結構いるし、そうじゃなくても他の部署にいる女子を誘えばいいのに。
「柳原さん、寝てるのよ。上から寝言が聞こえてきたわ。『キャラメルポップコーンの海だー!』とか言ってたし」
そういえば、あいつ昨日当番寝台だったな。
「あいつの夢どうなってんだよ」
「さぁね。私もわかんないわ」
はぁ、と永久保がため息をついた。
「ほんと、どうしてこんな人が艦長なのかしら」
さらりと嫌みを言われた。
「ははは、それを言われちゃ元も子もねぇな」
「少しは自覚してくださいね?」
「了解了解。気をつけるよ」
この後、今まで迷惑かけてた分として奢ったのは言うまでもない。
*操艦、号令に間違いがある可能性がありますが、ご了承下さい。
*またみすぼらしい文になってすみませんでした。
*あ、あとしらぬいが進水しましたね。個人的にうれしいです。かげろうとか来ないかな?とか密かに期待してます。
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