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オズウェル視点2
オズウェルside2 妻が可愛すぎて毎夜さらに悶々としそうで先が思いやられる
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(毎夜絞り取られる、か。情けないが、あの不届きな噂が真になるかもしれないな)
腕枕で眠るメリナの薄桃色の髪をくしけずりながら、オズウェルはぼんやりとルーカスの言葉を思い出した。
メリナは初めてだというのに、愛撫もそこそこに挿れてしまった。失態だ。
行為の時のメリナは、どの瞬間を切り取っても煽情的だった。非常に抗いがたい。本人にまるで自覚がなさそうなのもいけない。
「……なにか噂があるのですか?」
メリナが眠そうに目をこすりながら、ふにゃふにゃとした口調で尋ねた。
いつから起きていたのだろう。というか俺は口に出していたのか? とオズウェルの心臓がさっと冷える。
「噂などない」
「でもいま――」
「なんでもない!」
無策なオズウェルは無理やり声を荒げて押し切った。
「それより、その、体調は問題ないか」
「? はい!」
メリナは不思議そうな顔をした後、にこっと笑って答えた。
下穿《したば》きだけでも着ておくべきだったとオズウェルは後悔する。精通し始めの時だとてこんな些細なことで反応したりはしない。
とりあえず気休めに、尻尾を身体の前に持ってきて隠すことにした。
「オズウェル様?」
メリナのいぶかしげな視線が突き刺さる。
オズウェルは無表情を通し、すり替える話題はないかと視線を巡らせた。
といっても見慣れた私室に目を引くものはない。どうしても目の前にいるメリナに瞳が吸い寄せられた。
夫婦とはいえ不躾《ぶしつけ》に見るべきでないとは思いつつ、華奢《きゃしゃ》で柔らかな身体を観察してしまう。
「あの、どうかしましたか……」
見られていることに気付いたメリナは胸元を腕で隠し、もじもじとする。
「いや、少し気になることが」
オズウェルは顎を撫で、メリナの下腹部を注視した。被ったシーツが影になっているせいでわかりにくいが、何かが違った。
場所が場所だけに、メリナはぱっと手で隠してしまう。
「確認させてくれ。印が先ほどと異なるように見えるのだが」
オズウェルはメリナの返答を待たず、横向きに寝ていた身体を開いた。
ハートに棘が巻き付いたような紋様だったはずだが、そこから棘が綺麗に消えてしまっている。
「もしかしたら、印の効力がなくなったかもしれません」
自分でも印を確認したメリナは、翡翠色の瞳を見開いた。
「どういうことだ?」
「その……心から愛する方と結ばれると効力が消えるかも、という言い伝えがあって」
「何故それを早く言わなかった」
思わずきつい言い方になってしまった。
メリナは身体を縮こめ、眉尻を下げる。
「ごめんなさい。すべては私のわがままです。印を消すための義務感ではなく、オズウェル様には純粋に愛してほしくて」
オズウェルの胸に手を当て、潤んだ上目遣いで見つめた。
「君はどこまで俺を煽れば気が済むんだ」
オズウェルはわざとらしく息を吐き、メリナを抱きしめる。
「はい? え、あ……」
何かに気付いたらしいメリナは顔を赤くし、うつむいた。
「後日、完璧で完全に安全が保障された状況で、本当に効力がなくなったのか試してみよう。君さえ嫌でなければ、ルーカスに手伝わせるのがいいだろう」
領内で明確に印に当てられた者はルーカスだけだ。
オズウェル自身は当てられているのかどうなのか定かではない。少なくともルーカスが陥ったように、目が合っただけで見境なくはならない――正直いまは怪しいところではあるが。意思がねじ曲げられている感覚はないので、誰もが持ちうる情欲の範疇《はんちゅう》だと思われる。
「私のこと、怖がったりしていないでしょうか」
「むしろあんなことがあって恐縮していたくらいだ。女性を恐ろしい目に遭わせてしまったとな」
いわゆる色事師《いろごとし》を自称するルーカスとしては相当ショックだったらしい。反省のあまり出家を考えるほどの勢いだった。
「印が消えたのは喜ばしいことだが、もう少し俺の腕の中に閉じ込めておきたい」
オズウェルはメリナの首元に顔を埋め、それとなく水を向ける。
「……オズウェル様って、意外とそういう恥ずかしいことをさらっと言えちゃうタイプだったんですね」
「本心に恥ずかしいも何もないだろう」
「聞いている私が恥ずかしいのでもう大丈夫です!」
「なに、まだあと丸一日以上残っている。音を上げるのは早いぞ」
「何するつもりなんですか……?」
「そういえば俺の気を引くために色々してくれたそうだな。せっかくだし、それをもう一度やり直してもらおうか」
「もうしません! 思い出すだけでも恥ずかしいんですよ!」
「どうしても?」
「……オズウェル様が深夜に一人でこそこそと何をしていらしたのか教えてくださるなら、ちょっとだけ」
「っ……少し、考える時間をくれ」
後日ルーカス経由ですべて暴露され、今の比でないくらい頭を抱えることになるのを、この時のオズウェルにはまだ知る由《よし》もなかった。
<終>
腕枕で眠るメリナの薄桃色の髪をくしけずりながら、オズウェルはぼんやりとルーカスの言葉を思い出した。
メリナは初めてだというのに、愛撫もそこそこに挿れてしまった。失態だ。
行為の時のメリナは、どの瞬間を切り取っても煽情的だった。非常に抗いがたい。本人にまるで自覚がなさそうなのもいけない。
「……なにか噂があるのですか?」
メリナが眠そうに目をこすりながら、ふにゃふにゃとした口調で尋ねた。
いつから起きていたのだろう。というか俺は口に出していたのか? とオズウェルの心臓がさっと冷える。
「噂などない」
「でもいま――」
「なんでもない!」
無策なオズウェルは無理やり声を荒げて押し切った。
「それより、その、体調は問題ないか」
「? はい!」
メリナは不思議そうな顔をした後、にこっと笑って答えた。
下穿《したば》きだけでも着ておくべきだったとオズウェルは後悔する。精通し始めの時だとてこんな些細なことで反応したりはしない。
とりあえず気休めに、尻尾を身体の前に持ってきて隠すことにした。
「オズウェル様?」
メリナのいぶかしげな視線が突き刺さる。
オズウェルは無表情を通し、すり替える話題はないかと視線を巡らせた。
といっても見慣れた私室に目を引くものはない。どうしても目の前にいるメリナに瞳が吸い寄せられた。
夫婦とはいえ不躾《ぶしつけ》に見るべきでないとは思いつつ、華奢《きゃしゃ》で柔らかな身体を観察してしまう。
「あの、どうかしましたか……」
見られていることに気付いたメリナは胸元を腕で隠し、もじもじとする。
「いや、少し気になることが」
オズウェルは顎を撫で、メリナの下腹部を注視した。被ったシーツが影になっているせいでわかりにくいが、何かが違った。
場所が場所だけに、メリナはぱっと手で隠してしまう。
「確認させてくれ。印が先ほどと異なるように見えるのだが」
オズウェルはメリナの返答を待たず、横向きに寝ていた身体を開いた。
ハートに棘が巻き付いたような紋様だったはずだが、そこから棘が綺麗に消えてしまっている。
「もしかしたら、印の効力がなくなったかもしれません」
自分でも印を確認したメリナは、翡翠色の瞳を見開いた。
「どういうことだ?」
「その……心から愛する方と結ばれると効力が消えるかも、という言い伝えがあって」
「何故それを早く言わなかった」
思わずきつい言い方になってしまった。
メリナは身体を縮こめ、眉尻を下げる。
「ごめんなさい。すべては私のわがままです。印を消すための義務感ではなく、オズウェル様には純粋に愛してほしくて」
オズウェルの胸に手を当て、潤んだ上目遣いで見つめた。
「君はどこまで俺を煽れば気が済むんだ」
オズウェルはわざとらしく息を吐き、メリナを抱きしめる。
「はい? え、あ……」
何かに気付いたらしいメリナは顔を赤くし、うつむいた。
「後日、完璧で完全に安全が保障された状況で、本当に効力がなくなったのか試してみよう。君さえ嫌でなければ、ルーカスに手伝わせるのがいいだろう」
領内で明確に印に当てられた者はルーカスだけだ。
オズウェル自身は当てられているのかどうなのか定かではない。少なくともルーカスが陥ったように、目が合っただけで見境なくはならない――正直いまは怪しいところではあるが。意思がねじ曲げられている感覚はないので、誰もが持ちうる情欲の範疇《はんちゅう》だと思われる。
「私のこと、怖がったりしていないでしょうか」
「むしろあんなことがあって恐縮していたくらいだ。女性を恐ろしい目に遭わせてしまったとな」
いわゆる色事師《いろごとし》を自称するルーカスとしては相当ショックだったらしい。反省のあまり出家を考えるほどの勢いだった。
「印が消えたのは喜ばしいことだが、もう少し俺の腕の中に閉じ込めておきたい」
オズウェルはメリナの首元に顔を埋め、それとなく水を向ける。
「……オズウェル様って、意外とそういう恥ずかしいことをさらっと言えちゃうタイプだったんですね」
「本心に恥ずかしいも何もないだろう」
「聞いている私が恥ずかしいのでもう大丈夫です!」
「なに、まだあと丸一日以上残っている。音を上げるのは早いぞ」
「何するつもりなんですか……?」
「そういえば俺の気を引くために色々してくれたそうだな。せっかくだし、それをもう一度やり直してもらおうか」
「もうしません! 思い出すだけでも恥ずかしいんですよ!」
「どうしても?」
「……オズウェル様が深夜に一人でこそこそと何をしていらしたのか教えてくださるなら、ちょっとだけ」
「っ……少し、考える時間をくれ」
後日ルーカス経由ですべて暴露され、今の比でないくらい頭を抱えることになるのを、この時のオズウェルにはまだ知る由《よし》もなかった。
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