「強制発情」の淫紋持ち令嬢ですが、尻尾ひとつ動かさない潔癖騎士の旦那様に愛されたい

甘酒

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メリナ視点2

メリナside2-4★ 潔癖というよりも――な旦那様に愛されて

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「メリナ?」

 オズウェルは顔を曇らせ、メリナの両手を頬に添えた。じっと瞳を覗き込む。

「あの、ええと……」

 ちょうどいい言い訳が思いつかず、焦りでまばたきばかりしてしまう。

(素直に伝えてしまっていいものかしら? かといって黙ったままで心配をおかけするのも嫌だし)

 メリナはそれとなく視線を自分の下腹部の方へと向けた。
 オズウェルもつられてそちらの方を見遣る。

「オズウェル様に触れられると、印のあるあたりがじんじんと熱くなってしまって。これも呪いの影響なのでしょうか。オズウェル様に害がなければよいのですが」

 メリナは下腹部に手を当てた。まだ余韻が甘くくすぶっている。

「自覚なしに愛《う》いことを言ってくれる」

 オズウェルの尻尾がばさばさと風を切って激しく振れた。ボリュームがあるだけあって非常に動きが大きく目立つ。

「うい?ではなくて害が――」
「日常に支障がない程度には切りそろえているつもりだが、さっき整髪料を落としたついでにやすりをかけておくべきだったな」

 メリナの言葉など耳に入っていないのか、オズウェルは忌々しそうに自分の手を眺めた。

「今は口で我慢してくれ」

 オズウェルは赤い舌を見せつけると、さっきよりも執拗《しつよう》に胸を刺激した。小さく膨らんだ先端を舌で押し潰してはねちねちと転がし、やわく歯を立てる。

「オズウェルさまっ!? あんっ! 私の話、聞いて……きゃぅっ!  あっあっ……!」

 ほとんど抗議の体を成していないメリナの声を無視し、オズウェルはウエストのくびれを被毛で撫でた。腰で留まっていたドレスを引き下ろし、完全に脱がせてしまう。

「これが例の印、か」

 メリナの呼吸に合わせて上下する淫らな印を、オズウェルの爪がつ、つ、つ、となぞる。

「そんなに見ないでください……」

 メリナは消え入りそうな声を上げ、下腹を押さえて淫紋を隠した。

 人を惑わす淫紋は、メリナにとって呪いの証であると同時に罪人の証でもある。見られて気持ちのいいものではない。

「わざとやっているのでなければ、逆効果だろう。隠されれば暴《あば》きたくなるのが性《さが》というものだ」

 オズウェルは獲物を狙う狼の目をし、ピンと尻尾を上向きに伸ばした。メリナの手を引きはがし、淫紋にくちづける。

「はぁん……」

 淫紋に触れてオズウェルが穢れてしまわないか心配だったが、メリナの口から先にこぼれたのは鼻にかかった甘い喘ぎだった。熱を孕《はら》んだ部分を直接刺激され、身体が勝手に妖しくうねる。

「あぁ、オズウェルさま……熱いんです、もっと、奥が」

 メリナは手を伸ばし、オズウェルの髪の中に指を埋《うず》めた。

 黒くしなやかな髪はつるりとしており、指通りが気持ち良い。耳は毛質が異なり、外側を覆う毛はふんわりと柔らかく、穴を塞ぐように生えた毛はゴワゴワと硬かった。

「ぐっ……君という、人は……!」

 メリナの手を振り払うようにオズウェルの耳がぱたぱたと動いた。ほとんど間を置かず、オズウェルがばっと勢いよく顔をあげる。
 眉間にはしわが刻まれ、口元は何か言いたげに引きつっていた。頬が少しだけ赤いように見える。

「はい?」

 メリナは小首をかしげた。

 何かまずいことを言ってしまっただろうか。それとも、髪に触られるのが嫌だったのか。思い当たるのはこの二つくらいだ。

「……なんでもない。諸々、あとですり合わせをしよう」

 オズウェルはうな垂れ、深いため息をついた。

「おかしなオズウェル様」

 メリナはにっこりと微笑んだ。

 普段の冷静で凛々しいオズウェルももちろん好きだが、野性的で荒々しさがありつつ、どこか抜けたところもある今のオズウェルも好ましい。

「本当に駄目だな今日は……」
「ふふ、ダメじゃないですよ」

 メリナは小さく笑いながら、オズウェルを胸に抱き寄せた。思いのほか抵抗なくオズウェルが腕の中に納まり、少しびっくりする。

「オズウェル様と一緒にいると、こんなにどきどきします」

 メリナはオズウェルの耳に唇をあてがい、頭をぎゅっと抱きかかえた。

「そんなに俺の理性を飛ばしたいのか君は……!」

 耳や尻尾も含めた全身を震わせたオズウェルは乱雑にシャツを脱ぎ捨て、メリナの顔の横に強く手をついた。無駄をそぎ落とし、鍛え上げられたオズウェルの身体は、服をまとっていない方が圧がある。

 また何かしてしまったらしい、と思えどメリナには本当に心当たりがない。

「いますぐ、君が欲しい」

 四度目は思いをぶつけるようなキスだった。一度目ほど荒くはないが、三度目よりも熱がこもっている。

 オズウェルの手がメリナの身体をまさぐると、落ち着きかけたものがすぐさま呼び覚まされた。胸は切なく張り詰め、淫紋の内側が熱く痺れる。

「もっと、オズウェル様を感じさせて」

 メリナはオズウェルの体温を求めて広い背中に腕をまわした。肌が重なり合い、心地良い温かさが広がっていく。

「……時間をかけてからの方が良いとはわかっているんだが」

 メリナは下着越しに硬いものが押し当てられるのを感じ、心臓が大きく跳ねた。寝室で抱きしめられた時に当たったのと同じものである気がする。

「これ以上は、気が狂いそうだ」

 オズウェルは低くかすれた声で呟き、伏し目がちにメリナを見た。赤い瞳には独特の妖しさが宿っている。

 メリナは魅入られたようにうっとりと小さく頷いた。

 二人を遮る薄い布が取り除かれ、オズウェルの滾《たぎ》った先端がメリナの中につぷりと沈む。

「あっ……あぁぁぁっ!」

 自分でも知らない場所に硬く大きなものをねじ込まれ、メリナの喉から悲鳴が押し出された。圧迫感と痛みで呼吸が乱れる。涙で視界がにじむ。

「メリナ」

 オズウェルはそっとメリナの頬を撫でた。目の端に溜まった涙をちゅっと舐めとる。

「はっ、あっ……オズウェル、さま」

 不安げなオズウェルの顔を認識した途端、痛みだったものが快感にすり替わった。びくびくと中がうねり、オズウェルの屹立《きつりつ》を咥えこむように腰が動く。

(私、どうしてこんな……!?)

 メリナの頭の中に大量の疑問符が浮かぶ。

 初めてなのに、身体がどうすれがいいのかを知っている。何か別の意思に突き動かされているようで怖かった。
 だがオズウェルに中を擦られるたびに気持ち良さがあふれ、次第にそれ以外のことを考えられなくなる。

「あぁんっ、わたし……はぁ、あぁっ!」
「……すごいな。こんなにキツいのに、呑まれそうだ」

 オズウェルは力なく笑い、さらに深く、根元まで自身を埋めた。

「はぁっ、あんっ! 熱くて……はぁ、溶けそう……んっ……」

 オズウェルを受け入れた部分がじゅくじゅくと疼《うず》く。もっと濃密にオズウェルを感じたくて、締め付けるのをやめられない。

「オズウェルさま……こんな、淫らなわたしを、嫌いにならないで」

 メリナは息を切らせながら、オズウェルの胸にしがみついた。

 ただでさえ淫紋という不名誉なものを宿しているのに、本人まで慎みがないのはあまりに心証が悪い。ふしだらだとか淫蕩《いんとう》だと思われないだろうか。

「俺がここまで欲情するのは、印だけでは説明がつかないな」

 オズウェルは優しくメリナの髪を撫でる。
 その態度とは裏腹に、メリナの中のオズウェルはさらに硬く膨張した。

「オズウェル、様?」
「印などではなく、純粋に君のせいだ」

 拗《す》ねたように、それでいてどこか照れくさそうに言い、オズウェルは唇を重ねた。

「淫らな君も、愛してる」

 言葉が振動となってメリナの唇に伝わる。
 それを合図としてオズウェルは腰を動かした。湿った摩擦音と荒い息遣いが空気を震わせる。

「きゃぅっ! ぁんっ、そこ……あっ!」
「ここが良い?」
「……ぅ、んんっ! あぁ……いい、好き、です……きゃっ、あぁん!」

 メリナが特に感じるところをぐりぐりと突きながら、オズウェルは胸を舐めあげた。軽く吸い上げ、舌先で弄《もてあそ》ぶ。

「やっ……いっしょは……あんっ! 感じすぎちゃう……」
「ふ、駄目だ。このままだと俺の方が持ちそうにない」

 メリナは身体をよじって逃れようとするが、逆に抱きすくめられた。繋がったまま抱き起され、オズウェルにまたがるような体勢にさせられる。自重がかかり、屹立がより深くまでメリナを貫く。

「ああぁんっ! だめぇっ、奥、あたって……!」
「くっ……は……本当にキツいな……。すぐにでもイキそうだ……っ」

 メリナを追い立てるように突きあげるペースが上がった。肌のぶつかる音が高く鋭くなる。

「あ、あっ、オズウェルさま……わたし……はぁ、あ、あっあぁぁ!」

 身体は間違いなくここにあるのに、高くのぼり詰めるような感覚に襲われた。はち切れるほど心臓がうるさく大きくなっている。

 目の前がだんだんと白く染まっていった。自分の声が、どこか遠くで聞こえる。

 オズウェル自身が、中でびくびくっと大きく脈打つのが伝わってきた。くすぐったいような、切ないような、嬉しいような、例えようのない温かな感覚で全身が満ちる。

 ほどなくして視界が完全に白く染め上げられる。メリナの意識もそこに溶けていった。
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