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第4章 白花の聖女
5.黒と白②
しおりを挟む「不遜……ね?確かに、褒められた態度でないのは認めよう。が……………」
ちらっと再度、ジークレイドが俺を一瞥し、すぐに興味を失ったように視線を逸らせた。
「それが真に聖獣妃であるなら、俺も俺の非を認め、礼を尽くそう。だが、認めるわけにはいかないな」
「ジークレイド……」
「男の聖獣妃など見た事も聞いた事もない。何をもって、皆、聖獣妃だと言うのか。見目は醜悪ではないが、至って普通。知性・品性を醸し出しているでもない。聖獣妃の力も感じられん。なれば、聖獣石を見せてもらおうか?せめて、それさえあれば或いは……」
聖獣石?何の事だ?
意味が分からず困惑し、傍らのカイザーに上目を向けるが、少し、緊張を滲ませたカイザーからの視線は俺には向かない。
「ない……」
「ない、、だと?ふざけているのか?カイザー。聖獣石を持たぬ聖獣妃などと、益々もって認められるか!!馬鹿馬鹿しい!聖獣妃が現れたと、祖国より使者として立てられたが、何の茶番だ?皆、何を踊らされている⁈」
ギリリッとまるで汚いものでも見るかのように、ジークレイドが俺を睨みつける。
男として、睨まれたくらいで怯むのは悔しいが、ここまで純粋な敵意を向けられるのは初めてで、無意識にも腰が引けた。
この世界で、自分に対して向けられるのが、概ね好意的なものばかりだった。それだけに、ここまで憎まれるのが、こんなに怖いとは……
突き刺さるようなジークレイドの視線が、はっきり言って怖すぎる。
目を逸らしたいのに逸らせない。逸らしたくないけど、逸らしてしまいたい。
ややもすれば、震えそうになる体を抑えるのが辛い。
「いい加減にして貰おうか?ジークレイド。マヒロは聖獣妃だ。今は、訳あって聖獣石はないが、それでも、マヒロの内なる光と力は聖獣妃のそれだ。これ以上、無礼を働くと言うなら、アウランゼは黒の皇国ワドワーズへ、聖獣妃への不敬罪と反旗を問う!」
「ッッッ!!」
一瞬、息を呑んで口を開きかけたジークレイドが、ギュッと強く唇を噛み締めた。
そっと目を伏せ、再び開いた瞳を認めた瞬間……
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