上 下
109 / 119
第4章 白花の聖女

5.黒と白②

しおりを挟む



「不遜……ね?確かに、褒められた態度でないのは認めよう。が……………」

ちらっと再度、ジークレイドが俺を一瞥いちべつし、すぐに興味を失ったように視線を逸らせた。

が真に聖獣妃であるなら、俺も俺の非を認め、礼を尽くそう。だが、認めるわけにはいかないな」
「ジークレイド……」
「男の聖獣妃など見た事も聞いた事もない。何をもって、皆、聖獣妃だと言うのか。見目は醜悪しゅうあくではないが、至って普通。知性・品性をかもし出しているでもない。聖獣妃の力も感じられん。なれば、聖獣石を見せてもらおうか?せめて、それさえあれば或いは……」

聖獣石?何の事だ?
意味が分からず困惑し、傍らのカイザーに上目を向けるが、少し、緊張を滲ませたカイザーからの視線は俺には向かない。

「ない……」
「ない、、だと?ふざけているのか?カイザー。聖獣石を持たぬ聖獣妃などと、益々もって認められるか!!馬鹿馬鹿しい!聖獣妃が現れたと、祖国より使者として立てられたが、何の茶番だ?皆、何を踊らされている⁈」

ギリリッとまるで汚いものでも見るかのように、ジークレイドが俺を睨みつける。
男として、睨まれたくらいでひるむのは悔しいが、ここまで純粋な敵意を向けられるのは初めてで、無意識にも腰が引けた。
この世界で、自分に対して向けられるのが、おおむね好意的なものばかりだった。それだけに、ここまで憎まれるのが、こんなに怖いとは……
突き刺さるようなジークレイドの視線が、はっきり言って怖すぎる。
目を逸らしたいのに逸らせない。逸らしたくないけど、逸らしてしまいたい。
ややもすれば、震えそうになる体を抑えるのが辛い。

「いい加減にして貰おうか?ジークレイド。マヒロは聖獣妃だ。今は、訳あって聖獣石はないが、それでも、マヒロの内なる光と力は聖獣妃のそれだ。これ以上、無礼を働くと言うなら、アウランゼは黒の皇国ワドワーズへ、聖獣妃への不敬罪と反旗はんきを問う!」
「ッッッ!!」

一瞬、息を呑んで口を開きかけたジークレイドが、ギュッと強く唇を噛み締めた。
そっと目を伏せ、再び開いた瞳を認めた瞬間……









しおりを挟む
感想 165

あなたにおすすめの小説

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたアルフォン伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 アルフォンのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました

十夜 篁
BL
 初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。 そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。 「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!? しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」 ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意! 「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」  まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…? 「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」 「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」 健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!? そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。 《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》

処理中です...