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第4章 白花の聖女

5.黒と白①

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「何の冗談だ?カイザー!」

響き渡った声音に、思わず体がビクッと反応した。
カイザーの瞳と唇に釘付けになっていた意識が我に返り、次いで、顔がカァッと熱くなる。
慌てて視線を外す俺に、カイザーも取り繕うようにぎこちなく顔を逸らす。
ややもし、そっと声の方へ視線を向けた。

「ここは廊下だぞ?騎士隊長ともあろう者が、誰が通るかも分からぬ公的な面前で、そのようなはしたない真似をするなぞ、どうかしている!」

呆れと苛立ち、若干のあざけりを含んだ言葉を投げかけてくる相手。
濃藍色の短髪に、同色の瞳の男がこちらを睨んでいる。片耳に、乳白色色の石のピアス。全身真っ黒な衣裳で、こちらを顰めっ面で睨めつける様子は、はっきり言って異様で怖すぎる。
例に漏れずのイケメンだが、まとう空気が剣呑けんのんすぎて、言っちゃ悪いけど、お近づきにはなりたくない。
ジロッと、険しく睨みつけられ思わずたじろぐ。

「ジークレイド」
「貴様ほどの男が、信じ難い失態だな。俺の目がおかしくなったのかと疑うほどだ」

つらつらと挙げてくる男に、カイザーが苦虫を噛み潰したような渋面を浮かべた。
ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる男はかなり背が高い。カイザーと同じくらいか?
この世界のいい男ってのは、例外なく高身長が決まりなのだろうか……
劣等感刺激されまくりで、隣に並びたくない!
内心、溜め息つきまくりでいたら、ふと視線を感じた。
少し伏せ目がちだった目線を上げる。
俺を見下ろすように男がこちらをジッと見つめていた。
一見、無感情なように見えて、その実、目の奥が笑ってない。
というか、これは……

敵意?

男とは初対面だ。
もちろん、俺にはそんなモノを向けられる覚えはない。
戸惑い、若干気後れする俺を一瞥いちべつし、男がフンと軽く鼻を鳴らして先に視線を逸らす。

か、……………………感じわるッ!!

内心ムカつく俺を完全無視して、男がカイザーに対峙たいじする。

「お前が言うところの、みっともない真似をしたのは、俺の不徳だ。マヒロを責めるのはやめろ」
「責める?俺はを責める言葉は一言も発してないが?」

それのところで、ちらっと視線を寄越された。
意図的にあざけりと敵意を向けられているのは決定的だ。
ここまでされたら、もはや喧嘩けんか売られてるのは分かる。
眉を顰め、俺が口を開…く前に、カイザーが、俺と男の間に割り込む。

「ジークレイド。お前も六大聖騎士なら、マヒロが何者であるかは承知のはず。お前のその態度は、不敬ふけい以外の何ものでもない。分かっているのか?」

まさに一触即発いっしょくそくはつな空気に、売られた喧嘩を買おうとしていた俺の方が遠慮してしまう。
不遜ふそんな態度の男、ジークレイドが目をすがめ、剣呑な空気が濃くなった。











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