91 / 119
第3章 翡翠の剣姫
4.求める結果がそれだけだとは限らない!⑧
しおりを挟む寝ておけ・次・離せない………
頭からその言葉が離れない。
それは、あれだよな?つまり、そういう事で……………
ヤバい。心拍数上がり過ぎて心臓が痛い。
前回の(と、いってもまだそんな経ってないけど)行為を、俺の体はまだ覚えていて、無意識に震える。
「怖、いわけじゃねぇよな……じゃあ、、、期、待?」
口に出してから、顔がカァーッと一気に熱くなる。
まだ、次で触れ合うのは2回目だ。それも、1回目は中途半端に終わった。
なのに……………………
「マジ、あり得ん!俺のメンタルどうなっちゃったわけ?男との恋愛自体初めてだっつうのに………」
抱かれるのを期待してるって……
自分がとんでもなくいかがわしい存在になったみたいでゲンナリする。
ひとまず、考えんの止そう。
もしかしたら、違うかもしれない。
カイザーから直接、抱くって言われたわけじゃない。
「自意識過剰かっての!やめやめ!キリアンかジディ来るまで、ちょっと横になってよぅ……」
スーハーと深呼吸を繰り返し、横になるべく、寝台があると思しき隣の部屋への扉を開ける。
フワッと感じた濃い緑、爽やかだが香料とは違う自然な草木の香りに、閉じていた目を開けた。
目に映るのは、明らかに屋外。
明るくはあるが、草木生い茂る森としか言えない光景。
「は???」
目の前の光景に、口から出たのはマヌケな声。
これは、夢だろうか?
部屋の扉を開けたらいきなり森?
まさか、この世界に来た瞬間の再来か??
あまりにあまりな展開に、頭が真っ白になった。
「と、とりあえず!一旦、部屋戻……ッッッ⁉︎」
振り向きドアノブを掴もうとした手が空を掴む。
ない。
扉がない。
背後にあったはずの扉が、というより、部屋自体ない。
「な、んだよ…これ」
頭が考えるのを拒否しそうだ。
「何の冗談だよ……夢か?これ」
「夢じゃないですよ、聖獣妃聖下」
ぶつくさ独り言ちる俺に、背後から声がかかった。
聞き覚えある声に、慌てて振り返った。
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
風に揺れる金茶色の髪。奇跡としか言えない精緻な光を弾く色違いの瞳。
ふんわり柔和な笑みを浮かべた人物。
「エル、、シア?」
「覚えていていただき光栄です」
ニッコリと微笑まれたが、笑い返す気にはなれない。
こんなわけ分かんない状況なのに、目の前の相手は落ち着き払っていて……
「夢じゃない…現実?え、、じゃ、これ、、何」
「ん~~~~、、、少ぉし、落ち着きましょうか?」
ニコと更に笑いかけられる。
落ち着けと言われても、あまりに現実とかけ離れた出来事があれば、人間混乱を引き起こすものだ。
「城の、あの部屋の扉をこの場所に繋げたのは私なんです」
「は?エルシア、が?」
「はい」
何でもない事のようにサラリと言われたが、その言葉で益々わけが分からない。
俺を、城のあの部屋からここへ連れ出す意味があるのか?
そもそもそれこそ、そんな事をする理由は?
「誰か別の奴に用だった、、とか?ああ!そうか!そういう……」
それなんだったら、合点がいく。たまたま、あの部屋に行く予定だった別の人間に用があって、これまたたまたまそれに俺が……
「用がありましたのは聖下で間違いありませんよ?それに、カイザーの部屋に、聖下やカイザー以外で、私が用のある他人が行く。それこそおかしな話では?」
「……………………」
そりゃそうだ。
シレと返されたが、エルシアが俺に用とは一体……?
「用があんなら城で言えばいいじゃん!なんで、わざわざこんな手の込んだ面倒い……」
「聖下にお願いがあったからです」
「お願い?悪ぃけど、俺が叶えてやれる事なんかたかがしれてるし…」
どころか、ほぼない?
一国の使者らしいエルシアのお願いとやらを、俺が叶えられるとも思えず困惑だ。
「カイザーやリステア……皇太子に頼んだ方が早ぇんじゃね?」
「2人には頼めません。聖下にしかできない事ですから」
「俺にしかできねぇ事?それって何……ッッッ!?」
シュッと鋭く風を切る音が聞こえた。
一瞬、視界に入った白銀色の光の筋に視線が泳いだ後、目の前の光景に、俺の喉がヒュッと息を呑む。
首すじ、触れるか触れないかの位置で、ひたりと突き当てられた銀色の刀身。
細身な刃の剣を目の前に一切動けない。
「エ………シア、、、ッ、、?」
全身が凍りついたように身動きできず、情けないが声が震えた。
顔から血の気が引く。
自分が置かれてる状況が分からない。
俺。
何で、首に剣なんか向けられて?
「聖下へのお願いは簡単です。聖下にしかできない」
「願い………な、、、に」
息を呑みながら吐き出した俺の言葉に、エルシアが場に全く不似合いな程、柔らかな微笑を浮かべた。
「願いは簡単。聖下に死んで頂きたい。ただ、それだけです」
1
お気に入りに追加
3,892
あなたにおすすめの小説
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたアルフォン伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
アルフォンのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる