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第3章 翡翠の剣姫

4.求める結果がそれだけだとは限らない!⑧

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寝ておけ・次・離せない………
頭からその言葉が離れない。
それは、あれだよな?つまり、そういう事で……………
ヤバい。心拍数上がり過ぎて心臓が痛い。
前回の(と、いってもまだそんな経ってないけど)行為を、俺の体はまだ覚えていて、無意識に震える。

「怖、いわけじゃねぇよな……じゃあ、、、期、待?」

口に出してから、顔がカァーッと一気に熱くなる。
まだ、次で触れ合うのは2回目だ。それも、1回目は中途半端に終わった。
なのに……………………

「マジ、あり得ん!俺のメンタルどうなっちゃったわけ?男との恋愛自体初めてだっつうのに………」

抱かれるのを期待してるって……
自分がとんでもなくいかがわしい存在になったみたいでゲンナリする。
ひとまず、考えんの止そう。
もしかしたら、違うかもしれない。
カイザーから直接、抱くって言われたわけじゃない。

自意識過剰じいしきかじょうかっての!やめやめ!キリアンかジディ来るまで、ちょっと横になってよぅ……」

スーハーと深呼吸を繰り返し、横になるべく、寝台があると思しき隣の部屋への扉を開ける。
フワッと感じた濃い緑、爽やかだが香料とは違う自然な草木の香りに、閉じていた目を開けた。
目に映るのは、明らかに屋外。
明るくはあるが、草木生い茂る森としか言えない光景。

「は???」

目の前の光景に、口から出たのはマヌケな声。
これは、夢だろうか?
部屋の扉を開けたらいきなり森?
まさか、この世界に来た瞬間の再来か??
あまりにあまりな展開に、頭が真っ白になった。

「と、とりあえず!一旦、部屋戻……ッッッ⁉︎」

振り向きドアノブを掴もうとした手が空を掴む。
ない。
扉がない。
背後にあったはずの扉が、というより、部屋自体ない。

「な、んだよ…これ」

頭が考えるのを拒否しそうだ。

「何の冗談だよ……夢か?これ」
「夢じゃないですよ、聖獣妃聖下」

ぶつくさ独り言ちる俺に、背後から声がかかった。
聞き覚えある声に、慌てて振り返った。

            *
            *
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            *
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            *
            *
            *

風に揺れる金茶色の髪。奇跡としか言えない精緻せいちな光を弾く色違いの瞳オッド・アイ
ふんわり柔和な笑みを浮かべた人物。

「エル、、シア?」
「覚えていていただき光栄です」

ニッコリと微笑まれたが、笑い返す気にはなれない。
こんなわけ分かんない状況なのに、目の前の相手は落ち着き払っていて……

「夢じゃない…現実?え、、じゃ、これ、、何」
「ん~~~~、、、少ぉし、落ち着きましょうか?」

ニコと更に笑いかけられる。
落ち着けと言われても、あまりに現実とかけ離れた出来事があれば、人間混乱を引き起こすものだ。

「城の、あの部屋の扉をこの場所に繋げたのは私なんです」
「は?エルシア、が?」
「はい」

何でもない事のようにサラリと言われたが、その言葉で益々わけが分からない。
俺を、城のあの部屋からここへ連れ出す意味があるのか?
そもそもそれこそ、そんな事をする理由は?

「誰か別の奴に用だった、、とか?ああ!そうか!そういう……」

それなんだったら、合点がてんがいく。たまたま、あの部屋に行く予定だった別の人間に用があって、これまたたまたまそれに俺が……

「用がありましたのは聖下で間違いありませんよ?それに、カイザーの部屋に、聖下やカイザー以外で、私が用のある他人が行く。それこそおかしな話では?」
「……………………」

そりゃそうだ。
シレと返されたが、エルシアが俺に用とは一体……?

「用があんなら城で言えばいいじゃん!なんで、わざわざこんな手の込んだ面倒い……」
「聖下にお願いがあったからです」
「お願い?わりぃけど、俺が叶えてやれる事なんかたかがしれてるし…」

どころか、ほぼない?
一国の使者らしいエルシアのお願いとやらを、俺が叶えられるとも思えず困惑だ。

「カイザーやリステア……皇太子に頼んだ方がはえぇんじゃね?」
「2人には頼めません。聖下にしかできない事ですから」
「俺にしかできねぇ事?それって何……ッッッ!?」

シュッと鋭く風を切る音が聞こえた。
一瞬、視界に入った白銀色の光の筋に視線が泳いだ後、目の前の光景に、俺の喉がヒュッと息を呑む。
首すじ、触れるか触れないかの位置で、ひたりと突き当てられた銀色の刀身。
細身な刃の剣を目の前に一切動けない。

「エ………シア、、、ッ、、?」

全身が凍りついたように身動きできず、情けないが声が震えた。
顔から血の気が引く。
自分が置かれてる状況が分からない。
俺。
何で、首に剣なんか向けられて?

「聖下へのお願いは簡単です。聖下にしかできない」
「願い………な、、、に」

息を呑みながら吐き出した俺の言葉に、エルシアが場に全く不似合いな程、柔らかな微笑を浮かべた。

「願いは簡単。聖下に死んで頂きたい。ただ、それだけです」













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