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第3章 翡翠の剣姫

4.求める結果がそれだけだとは限らない!①

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白く霞みがかっていた意識が浮いてきた。
目の前が徐々に鮮明になり、ぼんやりぼやけていた目に色が映る。
俺、何やって?
あったかい。それに、何か息苦しい?

「ふ、あ…?ッ、、、、んう⁈」

ち、近い!
近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い!!!!
カイザーとの顔の距離が近い。っていうか、くっついてる⁈
目を白黒させる俺に構わず、口づけが深くなる。
柔らかく唇を舐められ、ぞくっと走った背中の震えに体が強張る。
差し入れられた舌で口中を舐め回され、軽く舌先を絡まされてから口づけが解かれた。

「ん、ぁ……」

唇同士が離れる際の音が聞こえ、体の熱が一気に上がる。

エ、エロ過ぎる!!

情けないが、官能を刺激されまくり足がガクガクだ。
はっきり言って、何でこんな事態になってんのか、さっぱり分からん。

「は、え??こ、こ、、は?な、んれ??へ???」

頭がボーっとする。
呂律が回んねぇ。
抱き竦めるカイザーを胸元から見上げる俺と、背中から腰に腕を回すカイザーの体が、突如、バリッとばかりに引き剥がされた。

「やめんかッッッ!!」
「わっ⁈」
「ッ!!」

いきなりの事に戸惑う俺と、顔を盛大に顰めるカイザーの間で、金茶の髪に翡翠の瞳の美女が怒りをあらわにしていた。
ふぅっと一つ肩で息をついた後、美女が俺をキッと睨みつけてきた。

「へ???????」

こ、これは………………………もしや、、修羅場しゅらば

ずいっと歩み寄られ、俺の喉が思わずゴクリと鳴る。

「聖下!!」

            *
            *
            *
            *
            *

            *
            *
            *
            *
            *

ハァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……ッ

長い。
自分でも長すぎんだろ?と思うくらいに、長~~~い!溜め息が漏れた。

「お疲れですわね?まぁ……気持ちは分からなくもありませんが…」

コトリと、目の前のテーブルにカップが置かれた。
芳ばしい香りが鼻をくすぐる。
一口飲み、ハァッと違う溜め息が漏れた。
最近、花実入りの高級茶ばかり飲んでたから、このちょっとお手軽感な感じの軽いお茶が美味く感じる。
聖獣妃なんて呼ばれて崇められても、俺は所詮庶民だ。(向こうの世界じゃ金持ち分類されてても、一般人には変わりない……)

「美味しい…サンキュ、じゃなくて、ありがと。ジディ」
「いいえ」

キツめ美人のジディが、ほんのり笑みを浮かべた。
にへらと俺も笑みになる。
うん。やっぱり、俺の好み本質は女の子寄り。
カイザーは………別格なんだな。
改めて認識すると、ちょっと顔が熱くなる。
慌てて誤魔化すようにお茶を飲み、ふ~っと息を吐き、ゆっくりと見渡した。
近衛騎士の寄宿舎。前にも来た場所だ。
今は、俺とジディだけ。

「中庭園はとりあえず修繕できそうですわ。木や花はいくつか植え替えなければなりませんが……」
「う………ご、めん」
「マヒロ様のせいでは……!まぁ、その………いろいろ、重なったと申しましょうか……」

ジディが言いにくそうに言葉を濁す。
ははっ!そうなるよなぁ~……
実際、なぁんも覚えてねぇけど、俺があの惨状さんじょうを引き起こしたらしい。けど、わざとやったわけじゃねぇし……俺に説明しなかったカイザー。いきなりやってきたシャイア。
ジディとしては誰も庇えないから言葉を濁すしかない。

「隊長がお戻りになればお話して下さいね?」
「うん………」

カイザーとシャイアは、今はリステアのところだ。

庭園がしっちゃかめっちゃかになり、我に返った後………
俺とカイザーを引き離し睨みつけるシャイアとで、あわや修羅場!となりかけた空気を切り裂き、兵が駆けつけた。
その後は、リステアのところへ全員(何故かエルシアは居らず)連行。
こっぴどくお説教を食らった。
いや……マジ、あの皇太子怖いわ。
ふんわり笑みを浮かべて、声も荒げる事なくゆったり話すんだけど……背後に般若はんにゃ見えたし、言葉はトゲありまくりの毒ありまくり……
全員、殊勝しゅしょうに大人しく話聞いてました。
カイザーとシャイアは残って、俺だけキリアンに連れられて寄宿舎に先に来た。
3人で何を話してんのか、正直、気にならないわけじゃない。
でも………
戻ってきたカイザーが何を言うのか。
シャイアと改めて修羅場るんじゃないかと、不安で仕方ない。
シャイアは婚約を申し込みに来たって言ってた。
聖獣妃とは呼ばれても、俺は女の子じゃない。貴族であるカイザーは跡継ぎをつくらないとならないだろう。そうなると、子供を産めない俺の代わりに、ちゃんとした奥さんは必要で………

あぁ………マズい。
1人で勝手に考えて、自分のそれに凹んでく……

仕方ない………って、思わなきゃなんないんだろうなぁ。
最初に湧いた怒りは、時間を追うごとに冷めていき、代わりに冷静な考えが増えていく。
自分の中で消化しきれない思いがドロドロ溜まっていくのを感じ、何度めになるか分からない溜め息が漏れる。

「マヒロ様……」
「何?何かあったの?マヒロちゃん」

奥からキリアンも出てきたが、今は何も答えらんない。

「マ……」

躊躇ためらいがちに口を開きかけたジディを遮るように、部屋の扉がバンッと勢いよく開いた。
険しい顔で唇を引き結んだシャイア。その後ろで、額に手をやり目を閉じ顔を顰めるカイザーが居て………









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