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第3章 翡翠の剣姫

1.嵐の予感①

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顔に当たるフワフワもふもふした感触に、沈んでいた意識が浮き上がる。
ぼんやり薄っすら開けた目に、毛むくじゃらのどアップが映り、意識が一気に覚醒した。
ヒゲをヒクヒクさせ、小さくキュウと鳴くその存在に、目を数回瞬きさせ、口を開いた。

琥珀こはく……」

神殿の、元副神官長の聖獣で、今は俺と一緒にいる聖獣。見た目は白いオコジョ。顔にスリスリされ、当たるヒゲがくすぐったい。

「はぇ?え~っ、と……こ、こ?」

肌にあたるのは滑らかなシーツと柔らかな敷布の感触。
肌??
直接感じるそれに、ハッとなり飛び起きた。

「ぃ、あッ!!」

シーツに擦れた胸と足の間に刺激が走り、唇を噛んで突っ伏した。
ジンジンとしたそれは痛みではなく、どちらかといえばしびれ。甘さを含んだ厄介かつ、居たたまれなさ全開のものだ。
そろっと起き上がると、敷布を肩から被った体は素っ裸で、体へ目をやった俺の顔が一気にゆだる。
至る所に散る、薄赤や少し濃いめのピンク色のあと。胸の尖り周りと、ヘソ、その下に続く足の付け根辺りは、自分でも目のやり場に困るくらい……
このぶんだと、見えない場所も……

「どスケベ隊長……!」

むっつりじゃねぇか!
顔が赤くなるのと同時に、昨日の記憶が蘇る。
結局、最後まで……………………しなかった。と、いうかできなかった。不慣れな俺の体が硬さをどうしても逃がせなくて、不甲斐なさと、自分への怒りと焦りに情けなくも涙が止まらなくなった俺を、カイザーが宥めて甘やかして、違う意味でも涙を止められなく……………………

「わーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

場面を思い出し、思わず叫びながら枕をガスガス殴る。琥珀が、驚いたようにキィッと鳴いて飛び退いた。

「ご、、ごめ!コハ、おいで?」

慌てて手を差し出す俺に、琥珀が警戒しながらも肩へ登りあがる。
頬を両手で挟むようにし、熱くなる顔と心拍数を治めるべく息を吐く。
思い出すのも恥ずかしいが、とにかく、、、凄かった。
男同士のエッチって、凄すぎる。
覚えてるのは、甘苦しいまでの快感。身体中、カイザーが触れてない場所はないってくらいに触れられて……
耳から吹き込まれた睦言むつごとで、脳みそまで溶け崩されんじゃないかと錯覚さっかくするくらい甘やかされ、男らしい唇が俺の全身を辿り、最後はお互いのモノを合わせて擦りながら、無駄に整ったイケメン顔を色気全開で歪ませながら……………………………………

「わーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

再び奇声をあげた俺に、琥珀がキィっと抗議の鳴き声をあげながら姿を消す。
うぅ、、コハ、ごめん!
そうは思いつつも、やはり平然とはしてられない。
最後までいかなくてもこれだと、最後までいったら俺、どうなるんだろ?

「や、やめ!やめやめやめやめッ!!朝っぱらから、頭ん中ピンクにしてどうするよ⁈と、とにかく!起きよう!」

気持ちを切り替えるべく深呼吸し、敷布を被って寝台から降りる。
カイザーの寝室らしく、どうやら気を失っている間にここへ運ばれたらしい。

「だからって、素っ裸はないじゃん!パジャマくらい着せろっての!」

パジャマがないにしても、服くらい着せてほしい。こんないかにもヤリマシタみたいな………
駄目だ!!考えれば考えるほど、言えば言うだけ、

「着替え……とりあえず着替える!!………それはそうと、カイザーはどこなんだ?」

窓から差し込む光からしても、まだそんなに陽は高くない。精々、朝の7時くらいか?
起きて居たら気まずいが、居ないなら居ないで、1人にすんなと不満も募る。
屋敷のどこかには居るだろう。
部屋へ戻ろうとした俺の耳に、コンコンというノック音が届く。

「はい?どうぞ」

思わず返事してからしまったと思ったが遅く、扉が開いて侍女頭のマーリャさんが入ってくる。
俺の格好は素っ裸に、敷布を纏ったもの。
気まずいなんてもんじゃない。

「あ、あの!これ、ち、ちがッ」
「おはようございます」

ニッコリ微笑んで言われ、目を瞠る。
半裸の男が主人の寝室に居る。妙に、思わないのだろうか?

「あ、れ?え、、っと??」
「お召し物をお持ちいたしました」
「あ……ありがとう、ござ、ます」
「御礼などもったいのうございますわ、聖獣妃聖下」
「せ???」
「聖下?如何なさいました?」

元々丁寧だったマーリャさんが、益々丁寧になってる。それに、さっきから言ってる”せいか”とは?
困惑する俺に、マーリャさんが悟ったらしく苦笑した。

「聖下とは、聖獣妃様のみに用いられる尊称です」

皇太子殿と一緒みたいなもんかな?どのくらいの影響力なのか分からないけど……

「俺が、聖獣妃だと……?」
「はい。伺って存じております」

あのバカ兄皇子のいらん所業しょぎょうのせいで、堅っ苦しい身分がついてしまった。元々、なったつもりもないが、周りの者達曰く、どうもそうらしいと俺自身認めざるを得ないが、だからといってかしずかれたくはない。

「普通にして欲しい……」
「そういうわけにはまいりません。貴人様でも尊かったですが、聖獣妃となれば比べ物になりません」
「俺、ただの17歳の一般高校生だけど?特別な力なんか持ってないし、なんなら、この世界の同い年の奴らより役に立たないっぽいんだけど?」
「イッポンコーコーヘイ?とやらが何かは存じませんが、聖獣妃様の力の事ですか?」
「……………………」

すぐに理解は難しいだろう。自分が理解できてないのに人にしろは無理な話だ。とりあえず、今はこのままだ。

「カイザーはどこに居るんだろ?」
「カイザー様は、今朝方、城よりお召しがかかり参られてます」
「城?なんで??」

近衛騎士だから城に呼ばれる行くのはおかしくない。でも、カイザーは今は俺の護衛で……

「まさか……ッ⁈」

頭に浮かんだ一つの問題に、俺は慌ててマーリャさんに詰め寄った。

「それ、、着替え早くちょうだい!俺も、城に行く!!」








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