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第2章 聖獣妃

8.触れる熱⑦☆

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重なる唇。
柔らかく、甘くまれて、体が意図せずヒクヒク戦慄わななく。

「ん、、ッ!」

触れ合った舌先の感触に、ピクッと肩が跳ねる。
絡みつく熱と、強めに吸われる力、口中に溢れる唾液に頭がボーッとしてくる。
余すとこなく触れる口づけは気持ちいいけど、息苦しさと上がる息で心臓が痛い。
思わず逃げかけた体が引き戻される。肩と背中に回された腕に抱き竦められ逃げられなくなる。

「カ……!待っ、あ、お願……ッ、んぅ、、」

生理的な涙が溢れてきて、潤んで霞む目。眉を寄せて、唇の端から切れ切れに訴える俺に、カイザーが舌先を軽く舐めて唇を離す。
プチュと小さく粘つく音が鳴る。
ハァハァと上がる息を忙しなく繰り返す。
首すじにチリっと微かな痛みを感じた。

「ぃ………、んぁ!」

痛みに抗議しかけた声は、その後、癒すかのように這わされた唇の感触に萎む。

「あ、と…つけ、な」
「大丈夫だ。服で隠れる……」

多分ギリギリな、という言葉が聞こえ、再度あげかけた言葉が、胸に走った刺激で甘い喘ぎに変わった。

「や、、!あぁん!な、に、、やだ」

胸の尖りにねっとり舌が這わされ、背中が仰け反る。
今まで、存在を感じた事もないそこに受ける刺激は強烈で、甘く痺れるような熱が、おりのように体の奥に落ちて溜まっていく錯覚を思わせた。

「やっ!やぁ、、いや、だ!カイ、、だめ」
「何がだ?触るのがか?舐めるのがだめ?それとも……」
「ひッッぅ!!」

根元に舌を食い込ませたまま、カイザーが俺のそれを吸い立てた。
ビクビクっと、体が生きた魚の如く跳ね上がった。
まだ、乳首弄られただけなのに……⁈
こんな刺激は知らない。あったことがない。

「や、ちが…ッ、吸う、や!それ、するな、、てばぁ」
「嫌なわりには、舐めると喜んで固くなってくぞ?」
「あ、ぁ、ちが…ッ、そ、な、こと」
「体の方が正直だな……」
「やぁんッッ!」

再び舌が這わされ、溶かされるかと思うくらいに甘く弄られる。再開される愛撫に、自分でも耳を塞ぎたくなるくらいに、ひずんだ甘声があがる。
反対側は指で摘まれ、擦り合わせるように弄られ、益々、声が止まらなくなる。
頭の中も、体も、どこもかしこも熔け崩れていきそう……

「ん、ん、ん、、、ゃ、ぁ、あんッ、い」
「いいか?気持ち、いい?」
「ん、、…ぅん……もち、い」

尖り周りの肌にも小さく口づけがいくつも落とされていく。
弄られてぷっくり腫れた乳首を、カイザーの指が摘んで擦りながら、唇と舌が下へと這いながら降りていき、薄い腹の肉と、ヘソ周りに辿り着いた。
ウズウズする。
擽ったいはずの刺激も、全部が快感に塗り替えられてく。
俺は男だし、男同士の行為はもっと乱雑にされるモンだと思ってた。
でも、カイザーの触れ方がすごく優しくて。
こんな、壊れ物みたいに優しく扱われたら……
気になりだしたら、愛撫に集中できなくなった。

「じゃ……な、の…に」
「うん?」

腹と足の付け根あたりに口付けをしていたカイザーが、ゆっくりと顔を上げた。
優しく問われ、自分でも情けないが、喉がヒクッとしゃくり上げると涙が溢れ出した。
一旦体を上げたカイザーが、俺の額に自分のそれを当てて顔を覗き込んできた。

「どうした?やっぱり嫌か?怖い?」
「ん……」

目尻に浮かぶ涙を吸われた。頬や鼻の頭にまでキスを繰り返される。
甘やかすような仕草に、ホッとすると同時に不安にもなる。

「………俺、女じゃない」
「マヒロ?」

唇の端に口付けられ、おずおずと切り出すと、カイザーが軽く目を瞠る。

「女じゃないくせに……こんな、感じて…俺、絶対ぜってぇ変だ」

自分でも何を言ってるんだと呆れる。
カイザーの事は好きだ。それはもう認める。
でも、誰かと抱き合う行為は初めてで、ましてや、男同士というのがまだまだ慣れない。
いざ、事に及んでいるくせに、何をグチグチ言ってんだか……こんな性格でもないくせに。
カイザーだって呆れてる。
そう思ったら、怖くてカイザーを見れない。
ギュッと固く唇を噛み締めたら、指で唇を開かされた。

「傷になるから噛むなって言っただろ?」

やんわりと言われ、ちらっと視線を向ける俺の体が抱き起こされた。
ラグに胡座あぐらをかくカイザーの膝に、座り込む形で対面した。

「俺はマヒロを女だと思っていないが?女扱いするつもりもない」
「分かって、る…」

カイザーに女の子扱いされた事はない。(姫を装った時は別!)ただ、俺が1人疑心暗鬼になってるだけだ。
乱暴にされたら怒るくせに、優しくされたら困ると文句を言う。
どんな我が儘女でも、俺よりは面倒くないだろう。
ハァッと、溜め息が聞こえ、ビクッと体が震える。
俯く俺の顎に指がかかり、上向かされる。
目の前のカイザーは、想像と違い、苦笑を浮かべていた。

「随分、しおらしいな?初めて、鎮寂の森で会った時の不遜ふそんさが嘘のようだぞ?」
「なっ!!」

言われた言葉に、思わずカッとなる。
俺だって、悩まないわけじゃない。自分を少しでも良く見せようと装ったりもする。
好きな相手の為なら尚更で…………………………あれ??

「ぁ……、、」
「俺を好きなら、ありのままのお前を見せて欲しいんだがな?」
「そ、、!で、もッ、、こぇ……」
「好きな相手なら声は出るだろう?女だからとか、男なのにとか関係なく。むしろ、俺はお前に夢中になってるのに、声を出してくれんとかなれば激しく落ち込むぞ?」
「う、、ぁ、、そ、、、は、、!」

反則すぎる!!
そんな熱のこもった、蕩けるように甘い顔……

見、見れない!顔があげらんない!!

今まで以上に、顔が一気に茹で上がった。
イケメンの本気の口説き、威力が半端ねェ……!!
うだうだ悩んでたのに、全身全霊で口説かれ、もうこれ以上何も言えなくなった。
背中に回された腕に体が引き寄せられ、肌と肌が密着した。よくよく考えたら、今、俺裸でカイザーと向き合ってる。
冷静に考えたら、すごい絵面えづらだ。
さっきは考えれなかったけど、我に帰れば当然気づく。
意識しないよう、冷静さを保とうとしたが、俺の腹とカイザーのが触れてしまい無駄に終わる。

「ッ」

思わずやってしまった視線の先。密着した下半身に目をやってしまい息を呑む。
羞恥と若干の恐怖に顔がひきつった。
言葉をなくす俺に、カイザーが視線の先に気付き苦笑する。
耳に小さく口付けられ、擽ったさに肩を竦めた。

「ンぅ…ッッ!」
「心配するな。今日はしない……初めての奴に無理をいるほど、人でなしじゃないぞ?」

吹き込まれる吐息と声音の甘さに酔いそうになりながらも、若干、引っかかりを覚えた。

「カイザー、、、は?」
「うん?」
「カイザーは……俺以外の奴と?」

問う俺に、カイザーがあ~と少し言いにくそうにしたあと、ふぅっと息を吐く。

「お前に会う前の事だ……」
「……………………」

分かってはいたが、やはりそれでも聞いたら何やら複雑だ。カイザーにはカイザーの軌跡がある。責めるつもりもないし、責めるのは筋違いだ。
でも………

「妬いてるのか?」
「ぅ………………っさい!!」

クスクス耳元で笑われた。恥ずかしいやら悔しいやらで睨みつけるが、益々、嬉しそうに笑われる。

「笑うな!!ムカつく!」
「笑うだろう?嬉しいんだからな」
「何、、あっッ⁉︎」

抱き込まれ、下半身が隙間なく触れ合う。
足の間にある俺のとカイザーのが擦れ合い、思わず声が出た。
自分のとは違う熱と質量に狼狽ろうばいし、視線を泳がせる俺に、カイザーが不敵に笑いながら耳に舌を這わせてきた。

「やっッッ!」

ピクンと小さく跳ねる体を宥めるように、カイザーの手が優しく肌を撫でていく。
耳殻じかくと耳たぶを食まれ体を震わせると、耳に殊更甘い声が吹き込まれた。

「さっきも言ったが今日はせん。ただ、触れるだけだ。怖がるな」

言葉の内容も声も甘くて酔いそうだが、念押しされるように言われて逆にムカッ腹が立つ。
あまりに「しないしない」言われて、本当は俺など抱きたくないのかと沸々と怒りが湧いてきた。

「マヒロ?どうし……ッッッ⁉︎」

油断しきったその体を、胸に手をつき思いっきり押してラグに押し倒す。
驚愕きょうがくに、呆気にとられたように目を見開くカイザーに少しばかり溜飲りゅういんを下げる。

「……………し、ろよ」
「何?」

激しく脈打つ心臓を宥めながら、カイザーの体に馬乗りにのしかかりながら見下ろして口を開いた。

「……………………最後まで、しろ!」
















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