聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

文字の大きさ
上 下
49 / 119
第1章 黒の双極 傾く運命は何処なりや

17.世の中、平穏無事には済まないようです(大汗)

しおりを挟む



ハァ~、、と、自分でも重苦しいと分かる溜め息が漏れた。
触れられた、唇を指で触る。
部屋からは出ない、出る気はないと言って、レネットには化粧は直してもらわなかった。
不自然にハゲた唇の色は落とした。

「馬鹿、カイザー……なんで、触るんだよ……」

自覚したてだ。
気持ちに整理がついてない。
不用意に、動けない。第一……ーーーーーーーーー

「そうだとしたって、帰んなきゃいけないのにどうしようもできねぇじゃん」

カイザーの事は……多分好き。男相手っていうのが、いまだに信じられないが、そういう意味で好きなんだろう。
認めるしかない事実と、『なんで⁈』という今更ながらの疑問に溜め息すら出ない。

「駄目だ!ここに居たら、なんか知らんが、よくないマズい方向に行きそう!もう、悠長に帰り方とか調べてる場合じゃないじゃん」

人を(100歩譲って男なのは考えないことにする)好きになるのは悪くない。
ただ、異世界この世界でが問題だ。
俺とカイザーでは住む世界が違う。
お互いがそうだったとしても、結局、世界が別れたら……

「離れなきゃ……今なら、まだ勘違いで済むし。訳分かんない世界で助けられて、善意を好意と間違えた的な?」

自分で言って自分にツッコミ、ツキンと走った胸の痛みに自己嫌悪。
ブルブルと首を振り、溜め息をついた。

「最初の森……なんて言ったっけ?ち、沈静?じゃないな?え~っ、、、と………あ!鎮寂だ!!」

最初、気がついたのがあの森だった。何か見つかる可能性があるとは言えないが、行ってみる価値はある。
扉に歩み寄り、そっと開けて覗く。
護衛らしき騎士の姿が見え、気づかれないよう慌てて閉める。

「扉から出るのは無理だ」

窓に寄る。
城の二階。高過ぎる事はないが、それでもそれなりにある。
ロープかなにか垂らせば行けるか?

「それしかないな。あとは、この格好なんとかしなきゃ」

自分を見下ろした。
ヒラヒラした服は、行動には不向き。
顔を出したまま着けていたベールを外した。アクセサリーも外す。
衣装を保管する小部屋に入る。
黒ではないが、地味な外套がいとうを見つけて羽織る。

「あとはロープ?……ないよな、んなモン。じゃ、まぁ、マンガなんかでよくあるが、カーテンシーツを使うか」

ベッドに寄り、シーツとベッドカーテンを外した。
さすがに長さが足りない。裂くしかないが……

「ナイフとかないと無理だな」

試しに手で引っ張るが、かなり丈夫で裂け目すらできない。

「手伝おうか?」
「いい。いらない」

問いかけに応えてからハタとなる。
慌てて振り向いた俺に、いつの間に部屋に入ったのか、ジオフェスがニッコリ笑いかけてきた。

「なっ⁉︎どこ……ッッ!!!!!」

『から入った』の叫び声は、ジオフェスに咄嗟に塞がれた手で制された。
口を押さえられ、目を見開く俺に、ジオフェスが唇の前に指を立てて苦笑した。

「シ~、だよ?俺、見つかりたくないし。マヒロも、こんな事してるとこ見つかりたくないだろ?」
「……………………」

ニコと笑いかけられ、暴れかけた動きを止めた。

「暴れない、騒がない。いい?」

問いかけられ、コクコクと小さく頷く。塞がれた手が外され、自由になった口でゆっくり息を吐く。
呼吸と心臓が落ちつくのを待ち、ジオフェスを睨む。
レネットの話では、赤の皇国の関係者であるジオフェスこいつは、俺には接触できなくなってる筈だ。
気配も音もなく、突如、部屋に現れたとしか思えないこの状況にも、驚きより、得体の知れない恐怖が勝つ。
ジリジリと、少しずつ後退りする俺に、ジオフェスがクスと小さく笑った。

「そぉんな警戒しなくても、何もしないって」
「そんな言葉、信用できる訳ないだろ!どっから入ったわけ?」
「どこからだろうな?」
「~~~~~~~~~~!!」

こいつ……
人を煙に巻くようなヘラヘラした態度が腹立つ。
キッと強く睨みつけると、軽く肩を竦めて離れた。

「何もしないって言ってんのに。俺、そんな極悪人に見える?」
「極悪人じゃないかもしれないけど、胡散臭うさんくさい!!」
「ハッキリ言うなぁ~…でも」

離れていた距離を一気に詰められた。
抵抗する間もなく、両手首を掴まれ腕を上に上げられた。

「マヒロみたいな子は好みだなぁ。言いたい事ハッキリ言うのが気持ちがいいし。気が強くて美人だしね」
「誰が美人だッ!離せよ!触んな!!」

ムカつく!
女の子じゃないから、美人なんぞ言われたって嬉しくない。

「で?カーテンやシーツ使って何するつもりだったんだ?」
「聞けよ!人の話!!」

一向に手を離す気配はなく、喚く俺にジオフェスが構わず窓に目をやる。

「外に出るのか?行きたいとこがあるとか?」

こいつ……徹底的に無視するつもりか?
まなじりが怒りで吊り上がるのが分かる。

「ここから……っていうより、カイザーから逃げたい、とか?」
「ッッ⁉︎」

咄嗟に違うと言いかけ口籠もる。
カイザーが嫌いで逃げるわけじゃない。むしろ……
そこまで考えて、内心、溜め息をつく。
何で、俺、こんな言い訳がましい事を言ってんだ?
目の前の男に調子を狂わされてる。

「俺が連れてこうか?カイザーから遠避けてあげるよ?」
「だから!ちが……ッッ」

背けていた顔を振り仰ぐ。
言葉が途中で止まる。目の前に現れた二対の光。
スミレと翡翠ひすい
白銀に輝く鱗。薄青く透明な羽根。
くらりと目の前がくらむ。
ガクンと意思とは関係なく膝が崩折れた。
瞼が下がっていく。開けてらんない。
項垂うなだれる俺の耳に、場に不似合いなくらいに明るいジオフェスの声が届く。

「まぁ…カイザーに関係なくーーーーーは、俺が手に入れるつもりだけどな」

言葉が聞き取れない。
問いかけようと開きかけた口は言葉を発せず、一気に目の前が暗く染まった。















しおりを挟む
感想 165

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

召喚された少年は公爵様に愛される

さみ
BL
突然、魔導士により召喚された、ごく普通の大学生の乃亜(ノア)は何の能力も持っていないと言われ異世界の地で捨てられる。危険な森を彷徨いたどり着いた先は薔薇やガーベラが咲き誇る美しい庭だった。思わずうっとりしているとこっそりとパーティーを抜け出してきたライアンと出会い.....

処理中です...