聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

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第1章 黒の双極 傾く運命は何処なりや

2.神殿招致④

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ふんわりした声が耳に届き、青年と二人して振り返る。

本物?

俺の第一感想はそれで。そんな場合じゃないと思いつつ、見入ってしまう。
それもその筈で、声の主は見た目のインパクト大だった。光の関係か、淡いラヴェンダーとエメラルドの光彩を放つパールホワイトの不思議な色の髪に、瞳も同じく。
膝裏まであるその長い髪を後ろで綺麗に縛り、金と紫の刺繍の入った真っ白な裾の長い服を身につけている。

「誰だ?お前」

俺より先に青年が口を開く。

「私のことはどうでも良いでしょう?それより、離してさしあげたら如何ですか?無理強いなどみっともないですよ?」
「うるさいな!何なんだよ、お前!!その服、神官か?たかが、神殿の者が俺に偉そうにするな!」

青年が白の神官に食ってかかる。神官がやや呆れたように、少し馬鹿にしたような笑みを青年に向けた。

「無知なのか、馬鹿なのか…はたまた、両方ですかね?アストラ神殿の神官服を知らないと見える」
「ア、ストラ神殿⁈」

神官の言葉に、青年が目を見開き、やがて小刻みに震えだした。
何をそんなにと思いつつ、緩んだ拘束を振り払い距離をとった。神官を見つめたまま、青褪める青年。

「も、申し訳あ………」
「それで済むと?貴人への暴言暴力、加えて不埒ふらちな行為。ことが公になれば、罪を被るのはあなただけじゃないですね」

神官が言うと、青年が一歩後退る。

「如何なさいますか?貴人様」
「え?」

成り行きを見ていた俺に、不意に神官から声がかかった。どうするか。どうしたいかを俺に決めろと言ってるらしい。
ツと視線を向けると、先程の不遜ふそんさが嘘みたいに、青年がおびえたすがるような目を向けてきた。正直、何が青年をここまで怖がらせたかは知らない。知りたくもないし、これ以上関わりたくもない。男でありながら、同じ男に迫られたのも、知られるのも恥ずかしい。
何事かに怯えて情けなくもひるむくらいなら最初からすんな!と、怒りも湧くが、ここまでヘタれた姿を見れば、湧いた怒りも阿呆らしさに白けて萎む。

「どうもしなくていい。関わりたくないから、もう、さっさとどっか行け!」

見るのも不愉快で視線を背けたまま言うと、慌てて走り去る気配。
ハァッと深く息を吐く。

「大丈夫ですか?」
「うん……あ、、はい。ありがとうございます」
「お気になさらず。たまたま、見過ごせない状況を目にして、あのようにしたまでですから」

ニッコリ微笑まれた。
しかし……男、、、だよな?
一瞬、女性と見紛うほどの美貌に、若干、ドギマギしてしまう。

「申し遅れましたが、私、レーヴェと申します」
「あ……マヒロ、です」
「貴人様の御名をお聞かせ願うなんて光栄ですね」

ニコと笑いかけられ、何と答えていいやらだ。
ジッと見つめられ、居心地悪くてたじろぐ。

「な、に?」
「いえ……あの青年の気持ちも分からなくもないなと思いまして」
「そ、れ……」

まさか、こいつも?
警戒を強めたのを察したか、神官がクスクスと笑う。

「可愛らしい方ですね。大丈夫。いくら貴方が魅力的でも、あのような真似に及べば自分の首を締めるだけと、私は分かってますよ?」

さっきの事でまだ気が立っていたらしい。やんわり窘められ、さすがに誰も彼も一緒に考えたのは失礼だと反省。
バツが悪くて視線を逸らせた。

「ところで、話は変わりますが、何故このような場所にお一人で?護衛が居ないのは危険でしょう?先程のような輩がまたいないとも限りません」
「広間で人に捕まりまくって疲れたんだ。一人じゃないから。今、飲み物取りに行ってくれてて……」
「そうですか。では、その方がお戻りになるまで、私が付いておりましょう」
「え?あ~…いや、でも、、、悪いし」
「構いません。お気になさらず」

普通は構うし、気にする。
深窓のご令嬢じゃあるまいし、そんな壊れ物みたいに守ってもらわなくても……
いらないと言っても聞きそうにない。ふんわりした見た目ながら、言葉には何やら妙な力を感じ逆らえきれる気がしない。

「神官…なんだっけ?こんなとこで、俺にくっついてていいわけ?」
「大丈夫ですよ。用があったのですが、まぁ、終わりそうですから」
「ふ~ん?」

誰かについてきたのか?終わりそうって、その連れの用事が終わりそうって事?
カイザーを待つ間、手持ち無沙汰ではあるし、深く考えない事にした。

「貴人様は血脈のお方とか?」
「あ~……まぁ、うん…」

また血脈。いい加減受け答えに疲れてきた。
それが何なのかとか、時渡りの事、ひいては帰る方法なんかを調べたいのに、何をどう調べたらいいのかも分からないし、どこに行ったら調べられるのかも分からない。
俺の気持ちとは裏腹に、皆んな、口を開けば血脈と末裔とやらの話ばかり……
そういえば…カイザーだけは、それを口にしない。

「……ませんか?」
「へ?え?何??」

ぼうっと考えに耽る俺に、神官レーヴェが話しかけてきた。

「神殿にいらっしゃいませんか?おそらく、貴方がが分かるかもしれませんよ?」
「それって…⁈」

考えを見透かされたような言葉に、が、何か分かるかもという期待の方が強く、意味深な言葉に気付けない。

「どうします?いらっしゃいますか?」
「そ、れは……」

正直、滅茶苦茶行きたい。行けば何か分かるかもしれない。何か糸口だけでもいい。
戸惑いと期待、迷いと渇望に揺れる俺に、レーヴェがふんわりと微笑む。

「いらっしゃいますね?」
「う、ん……」

思わず、コクリと頷く俺に、レーヴェが満足そうに笑う。手をやんわりととられ、手首にレーヴェが着けていたブレスレットをめられた。
呆然とそれを見る俺に、レーヴェがニッコリ笑い、掬い取った俺の手の平を持ち上げ、ゆっくりと指に顔を近づけてくる。
動けない。体が動かない。
内心、焦る俺の体が突如、力強く後ろに引かれ、庇われるようにその体の後ろに隠される。

「マヒロに妙な真似をするな!!」

黒地に銀の、俺がそれを似合うと思った相手。
青銀色の髪、紺碧の瞳の聖獣騎士隊長ーーーーーーー

「カイザー……」








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