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第二部4章 表裏一体 抱く光は闇 抱く闇は光の章
7.水・闇 共闘!?②
しおりを挟む「「下がってろ、アヤ!!」」
息ピッタリ!
バルドが水を、ギルが闇の魔導を集結させていく。女神の魔導が二人。かたや、神の力を持ち、かたや、女神の力の根源。物凄い、波動とプレッシャーに、気圧される。
二人が張ってくれた結界が守ってくれてるが、それでも力の余波をバンバン感じた。
「我を神と知り、それでも向こうてくるはさすが、と言うべきか?」
ラゼルがさも楽しげに笑う。邪神にとっては、俺たち人の抵抗なんざ、屁でもないんだろう。
それぐらい、力の差がある。
バルドとギルの魔導とて、尋常じゃない。だけど、ラゼルは……目に見えても、大した変わりはないのに、二人以上のプレッシャーと、畏怖を感じて、体が小刻みに震えだす。
いってもさすがは神といったところか……
「勝算は…あるか?」
「ある……と、自信持って言えねぇのが、口惜しいとこだな。正直、勝てる気しねぇ」
「同意、だな。我も、同じくよ。無謀としか言いようもない」
ギルの問いに、バルドが顔に緊張を浮かばせつつ応える。
「止めれなきゃ、世界は終わりだ。無謀だろうと、なんとでもして止めるしかない」
「そういう事、だな。アヤ。我の目を返せ」
「え?あ、あぁ、うん。え、…と、はい」
ギルに言われ、俺はまだ持ったままだった目を渡す。ギルが左目から、ラゼルの目を取り出す。
別に血が出たりとか、そんな気色悪い事にはなんないけど……見てて気持ちのいいもんじゃない。
左目は、ギルの本来の目に変わった。
手の中に握り込んだラゼルの目が、ジュッと蒸発して霧散する。
自身の目をそんなにされても、ラゼルは平然と微笑んでいる。
「さて…もう、よいか?我を楽しませよ!」
「う、わッ!!」
「くっ…!!」
発せられた波動の余波に、俺たちは何とか踏ん張る。波動を少し外に出しただけでこれって……(汗)
「ギルゼルト!光を鍵の宝珠に込められるか?」
「今は無理だ。魔導を込める余地がない!」
ラゼルの背後には、方陣に浮かび上がりゆっくりと旋回する台座。
あれさえ壊せば、世界の崩壊は免れる。それには、残った闇の魔導の光。ギルゼルトの光を鍵の宝珠に込める。それでとりあえずはいいんだけど……今のこの状況では、ラゼルが見逃すわけもなく…
「神化、全力全破棄でいく。貴様はいけるか?ギルゼルト」
「愚な事を……効くかどうかは分からぬが、手は持っておる」
「下手を打てば……」
「何が心配だ?弱気だの、エルネイレス」
「グレインバルドだ。やる前から失敗なんざ、恐れるかよ!気がかりは、”神殺し”……」
顔をしかめるバルド。
神殺し??
なんの事だろう?
訝る俺に、ギルがちらっと視線だけ寄越すが、応えはない。
「甘んじて受ける。すでに、贖いきれぬほどの罪に塗れた身だ…それは、我が受けよう」
「ギルゼルト!」
「退けよ、エルネイレス…いや、グレインバルド、か…其方は、其方の成すべき事をせよ。我はすでに過去の遺物……其方は…守るべきものを守れ!先達の言う事は聞くものぞ?」
ギリと歯を食い締め、バルドがそれ以上の口を閉じてラゼルを睨みつける。
何なんだ?一体、なんの事だ?!
俺には何も教えてくれないのかよ?!
「何をするつもりだ?神殺しって何?!バルド!?ギル!?」
結界内で騒ぐが、二人とも一瞥さえしてくれない。
訳が分からない。だけど、何かとんでもない事になりそうな予感だけはする。
「くっ…!ふふっ…ははっ!ははははは!!あっ、ははははは!!くるか?そう、くるのだな?よい!!よいぞ!やはり、こうでなくてはな!そうだ、足搔け!!これだから、其方ら人とは面白い!脆弱ながら、考えも及ばぬ行動に出たりする」
ラゼルが上機嫌に笑い、瞳を爛々と煌めかす。獲物を見つけた肉食獣さながらだ。
「貴様に生半な魔導は命取り。故に、こちらも全力だ!『クリムゾン・インフィニティ』!」
「う、わ!ちょ………?!」
ギルが魔導を放つと、黄赤に、紫と黒を纏わせた炎が迸る。逆巻き、轟音をたてながら一気にラゼルを包み込んだ。
炎の竜巻。例えるならそれだ。音も凄いが、何より熱い。空気自体が燃えているようだ。気を抜くと、吸い込んだそれで、体の中から焼き尽くされそうで……
構えた俺を庇うように、バルドが前に立ち熱風を防いでくれる。
「バルド、やりすぎじゃね?!何だよ、あれ?」
「炎系魔導の最高峰だ。キサが前に使った、インフェルノとは比較にもならん。俺も、生身で使える奴に初めて会った」
それ、凄すぎ!(ーー;)
この、俺様皇太子のバルドがあまりの圧倒感に、言葉少なに手も出せない。
さすがは、女神の闇の魔導。俺もバルドもそうだけど、転生を繰り返し、傍流となってるとこもあるから、そこは主流との違いって事か……
「グレインバルド!鍵だ!今の内に、台座を!」
火柱に包まれたラゼルを睨んだまま、ギルが言う。
ラゼルの動きを止め、鍵に光を込めて投げてよこす。
おっと!呆けっとしてる場合じゃない!
「バルド。台座の止め方、俺、分かんねぇよ?」
「ディオンから聞いた。台座の真ん中にそれを嵌めて、停止と台座の破壊の念を込めるだけだ」
「それだけ?」
「あぁ。鍵の宝珠をお前の中に入れ、台座にお前が取り込まれたら逆となるようだ」
宝珠をそのまま使えば、台座を破壊。光が加われば、世界が崩壊。単純だが、分かりやすい。
っとに!単純だが、恐ろしいわ!つくづく、なんつうモン創ってくれてんだよ!女神は!(-_-#)
「了解!それだけでいいなら、さっさと……!」
「アヤ!グレインバルド!避けよッッ!!」
「え?わッッ!?」
ギルの叫びが聞こえ、振り返った俺は固まる。
俺とバルドに向かい、真っ赤な炎の塊が飛び迫ってきていた。
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