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第二部3章 皇女降嫁?白き生花で紡がれし花冠の章
9.潜入開始!狼さんにはご用心?!①
しおりを挟む国境門にて検問を済ませ、エンドルフ領内に入った。
大体、どこの領内も風景は変わらない。似たような感じだ。
ただ、エンドルフは………
「普通に騎竜がいる……」
道端に寝てたり、人が連れて歩いてたり。一種異様な光景だ。
「エンドルフではこれが普通のようよ。騎竜は全て誰かしらかの持ち物だから、離してあっても誰も気にかけないみたいね」
「竜舎に繋いだりしないんだ?」
「王城や貴族などの屋敷はね。領民が個人で所有する騎竜はこれが普通みたい」
クレイドルでも、竜は皆、竜舎に繋がれてたからこの光景はかなり目新しい。
「アヤ……あまり、外見てキョロキョロするな。お前、一応今はラシルフの侍女だぞ?侍女が行儀悪いと姫が困る」
「う……分かってる。分かったよ、ちょっと珍しくてさ。気になっただけじゃん…大人しくしてるよ」
同じく、途中から同じ馬車内に乗っているキサに窘められ、外を覗いていた俺は、渋々席に座りなおす。
呆れたように小さく肩をすくめるキサに、俺は少しだけ不貞腐れてみせた。
向かいの席から、タータがクスクス笑う。
「構わなくてよ、キサ。アヤも大丈夫よ。私だって、初めてエンドルフに来た時はそうだったわ。珍しいものね?」
「だよね?やっぱ見ちゃうって!」
二人して盛り上がってると、キサが呆れて益々渋面になるが、これ以上は言っても無駄と、溜め息だけついて黙り込んだ。
だって、仕方ないじゃん?好奇心には勝てません!
「姫、そろそろ王城が見えてまいります」
「そう…分かったわ」
外から声がかかる。
うわ!いよいよか……緊張する。
「エンドルフには前もって、婚前のご挨拶をと申し出てるわ。エンドルフ王は生前退位される為、皇太子様をお連れになって、引き継ぎの行幸にお出になっていらっしゃるそうよ。だから、今、城にいらっしゃるのは私の婚約者、第二皇子殿下、バラジュ様しかいらっしゃらない。王様がたがお戻りになるのは二日後。それまでに、何とか兄上様を探し出さなくては……」
まだエンドルフがカーティスに何かしたとは限らないが、少なくとも、カーティスがエンドルフで消息を絶ったのは事実。事件か事故か、意図してか偶然か…とにかく、痕跡だけでも探さなくては。
今一度、気を引き締め直すとともに、馬車は城門を潜った。
*
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城内。
一旦、通された一室。すぐすぐに挨拶とはならない為、まずは体を落ち着ける。
「ここまでも、普通だったな?エンドルフに挙動不振なとこはなかったように見えるけど……」
「そうね…私に対しても、大臣様の対応は丁寧だったし……」
「疚しい事や隠し事があれば、自ずと出るもんだが……」
三人が三人とも同じような意見。
何か、ちょっと拍子抜け。もっと、こう……あ!怪しい!的な?言動があるかと思ったけど、至って普通。何もなかったとしか思えないくらい普通……
「どうしたもんかなぁ?」
ほんとどうしよ?
いきなり出鼻くじかれた。
「探り入れてみる?」
「着いた早々にか?腰を落ち着ける間もなく、他国の城内を歩き回るのは……見つかれば、間者扱いされても文句は言えんぞ?」
「そりゃそうだけど……こうしてても、進展しないし。今日入れても、あと三日弱。二日後には王様たちが戻るから、そしたら挨拶済ませて帰国せざるを得ないんだぞ?時間がないんだから、多少危険でもするしかねぇじゃん」
「だが………」
「よくってよ。許可します、キサ。何かあれば、私が責任を負いますわ。やってちょうだい」
「姫……承知致しました。アヤ、行くぞ。ただし、行動は俺と一緒にだ。絶対離れるなよ?」
「分かってるって!」
「……………」
何、その無言…
万が一迷ったりはぐれたりしても、こんなのに声かけるもの好きはいないって。
「じゃ、タータ……じゃなくて、セルファ様。行ってまいります。こちらにおいで下さい」
「えぇ、二人ともお願いね?ただし、無茶はしないでちょうだい」
断りを入れ、俺とキサは部屋を出る。
「どっちに行く?」
「来たのはあちらからだから、とりあえず向こうへ。普通に進む」
「隠れながらとかじゃなくていいんだ?」
「下手にコソコソすると余計に目立つ。いかにも怪しいですって雰囲気出してどうする」
「そっか……分かった」
何か手慣れてんな?キサ……こういうのやった事あんのかな?
聞いてみたいけど……いいや、また今度。今はそんな場合じゃないし。
キサに任せた方が良さそうなので任せ、俺はとりあえず無難に後ろからついていく。
何度も思うが、やはり城は作りはどこも変わらない。装飾が違うだけで、皆似たような感じ。
ただ、エンドルフ城は曲がり角が若干多い。気をつけないと、ほんとにキサとはぐれる。
キサから目を離さないよう気をつけながら、周りを見回していた俺の目に、一瞬、あるモノが過る。
え?あれって………
見間違えだろうか?でも……あれは。
キサとはぐれないように。
頭では理解しながらも、気が付いたら俺の足は体は無意識に、そちらへと向かって行っていた。
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