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第二部2章 策略忘却 欲望渦巻く炎の王室の章
3.急転直下!炎上する王室の真実と悲哀①
しおりを挟む「出せ!ここから出さぬか!!ヴィクター!!ヴィクター、返事しろ!!僕は信じないぞ!」
何とか起こしたエティに事情を話した。最初はかなりショックだったらしく、ブランケットをひっ被り、シクシク泣き出してしまった。
やっぱりこうなるかと、しばらく途方に暮れたが、ようよう被ったブランケットから顔を出した後、エティは………
今現在、喚き散らし暴れている……
いや、立ち直り意外と早かったのは助かるが、とりあえず、これからどうやって逃げるか考えなきゃならんし……ひとまず、暴れるな!
「ヴィクター!!……ヴィクター…何故だ…?」
扉を叩いていたエティの動きが鈍り、その場にへなへなとへたり込んでしまう。
後ろ姿がしょんぼりと哀れだ。
「エティ……」
「アヤ…何かの間違いだろう?ヴィクターが…ヴィクターは僕を裏切ったりしないだろう?」
「エティ……とりあえず、立て!ここでいつまでもうじうじしてても何も解決しない!まずは、ここから逃げる!」
「でも……ヴィクター…」
「あぁぁぁ!もう!!だったら、ヴィクターも連れてけばいい!三人で逃げるぞ?!」
動こうとしないエティを叱咤すると、目を瞠って固まる。
俺がヴィクターを連れて行く提案をすると思ってなかったらしい。
まぁ、普通ならまずありえない。人に薬盛るような奴、普通は信用ならない。
だけど…ヴィクターは……何か違うような気がする。
ヴィクターが果たしてこちらの言う通りについて来るかどうかは別として、何がそうさせたのか…事情は聞かなきゃいけないだろう。
エティは見ての通り全く宛にはできないから、ここは俺が動いてなんとかするしかない。
「とりあえず……まずはこの結界をなんとかしなきゃな……」
部屋の周りにはかなり強固な結界が張られてる。扉は更に厳重に。種類はバルドが掛けたのと一緒。許可無き者は入室出来ない。それよりも厄介なのが、この結界には、許可無き者は退出も出来ないという事。
つまり、今現在進行形で、俺とエティは部屋から出られない。
試しに扉に触ってみたが手が弾かれて痺れた。
俺だって女神の魔導のはしくれだ。師と仰ぐ、ファンガス老より、結界解呪の魔導は習ってる。でも、魔導に関してはまだまだペーペーの俺に、高度な魔導は難しい。俺が習ったのは、対象に触れて発動させる、方陣を使った比較的簡単なもの。
つまり、対象に触れられなきゃ全くの無意味。対象から離れた場所に方陣を創り魔導を発動させる高度な技は使えない。
「考えたら、バルドって凄いよな…何でもないようにやってのけるんだから……」
あとは……一つだけ方法があるが、今は使えない。
いや…………
「使いたくても使えないが正解か…」
「アヤ??」
ボソッと呟いた俺に、エティが不思議そうにしている。
「何でもない。それよりどうするかな?」
誰かが入ってくるタイミングで隙をつくか?でも、それだとどちらかが捕まれば終わりだ。
一番いいのは外から結界が壊される事だが、そんなの上手くそう簡単に起こるわけが…………
………………………
「アヤ?何か妙な音が…」
「え?音?音なんか………」
エティの不安そうな声に、俺が返した直後、突然部屋の壁がバリバリ電気のような青白い光を発し、バリンッという甲高い音を立てて結界が霧散した。
「……………………………………」
はっ!いかん!あまりに突然、衝撃的すぎて唖然呆然してしまった。
何これ?!タイミング良すぎじゃね?
確かに外から結界壊れればとは思ったが、あまりのグッドタイミングに、逆に不安になる。
とりあえず、恐る恐る扉に触れてみる。
途端に、キンとした澄んだ魔導の波動を受け止める。
なるほどね……そっか。そういう事か……
自然、小さく笑みがこぼれる。扉に両手の平と額をつけた。
「偶然とはいえ…結局、甘やかされるんだな?俺は…そういうつもりもないのに、俺は…助けられるんだ。助けてくれるんだよなぁ……」
多分、相手は俺を助ける意図があったわけではないだろう。偶然か、何かを行い、その行いの副産物がこの結界解呪に繋がった。
行ったのは間違いなく…………
「アヤ?如何した?」
「………エティ、結界が壊れた。今のうちに部屋を出るぞ?」
「え?あ、あぁ!うん!」
同じく呆然としていたエティの手を取り、俺は結界の壊れた部屋から外へと抜け出した。
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