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第二部2章 策略忘却 欲望渦巻く炎の王室の章

1.血塗られた炎の王宮⑩

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「エドゥアルト!!」
「母上……今、戻りました」
「あぁ、何処に行っていたのです?黙って城を抜けるなど」
「申し訳ありません……」
「そなたは私の言う事だけ聞き、ただ私に任せておればよいのです。退屈なれば言って下されば、何でも与えましょう。黙っていなくなるなど、二度としてはなりません。良いですね?」

通された一室にいた王妃様が、エドゥアルト皇子に駆け寄り言う。綺麗な女性ひとだけど、どことなく、あまりお近づきにはなりたくない感があるな……
それに一見、子を思う母の図だけど…
何だろ?何か違和感。

「皇子…そんな事より、こちらが?」

抱擁もそこそこに、王妃様の意識がこちらに向いた。
そんな事よりって……皇子が居なくなって帰城したにしては、あまりにあっさりしてない?

「帝国、クレイドルの皇太子殿下であらせられますね。此度は、我が国の皇子がご迷惑をおかけいたしました。母であり、王妃の私からお詫びいたします」
「迷惑というほどのものもありません…クレイドル皇太子、グレインバルド=ルーク=クレイドルと申します。サラタータ王妃様にご挨拶申し上げます」
「サラタータ王妃、クレーシュと申します。正式な謁見ではない故、形ばかりで失礼致します」

互いの挨拶が済み、顔を上げた王妃様が、バルドをうっとり見つめる。
王妃様……女の顔になってる。
気分は…良くはないが、仕方がない。バルドは誰が見てもイケメンだから、王妃様が見惚れるのも無理はなく……
ただ、一国の王妃で、言うなればサラタータ王の奥さんで人妻で…自分よりはるかに年下の、他国の皇子に隠しもせずハート飛ばして見惚れるのはどうなんだと思うけどね……

「おかけくださいませ」

ソファに促され、バルドが座る。
王妃様と皇子も座った。王妃様は俺には全く気を向けない為、俺は、セレストとイアンの陰に隠れるように立つ。
バルドが近くに寄せないのが気になった。
何かあるのか?

「此度は、サラタータへは何のご用件が?」
「用件だと、何故お思いになります?」

王妃様の質問に、質問で返すバルド。
まさか、そう返されると思わなかったのか、一瞬面喰らったようになり、王妃が瞬時に顔を取り繕う。

「ほほっ……いえ、お恥ずかしい話ではありますが、我が国、サラタータは今。そのような国に、まさか外交・遊山は考えにくいかと?」

微笑む王妃様の顔から、さっきまでのバルドに対する柔らかみが薄れた。
これって……………

「そうですね。用件は用件とだけ、申し上げます。あぁ、その用件への協力を、皇子殿下にご助力願いましたので何卒よしなに。内容につきましては、皇子殿下より
「皇子がお世話となったのです。勿論、できる協力はいたしましょう」
「ありがとうございます」

お互いが一歩も引いてない。
やっぱり……探り合いだよな?これ。

「サラタータよりは、いつお発ちになりますの?」
「そうですね…いつ、とはまだ決めておりませんが、すぐとは申し上げませんとだけ」
「では、しばらくご滞在頂けるのですね?」

王妃の質問には答えず、やんわり微笑むバルド。
う~ん……バルドの意図が分からん。

「そうですか。では、一室用意を致しましょう。お付きの方々の部屋も隣に。三人でも十分に広い……」
「母上………」
「何です?皇子。話の途中に割り込むなど、無礼ですよ?」
「すみません…ですが」

どうやら、王妃様はおれもお付きの従者と思ってるもよう。
まぁ、今までは紹介されたり、そういう程で話されて、俺が女神の光の魔導と知れたが、紹介されなければ対応はこんなものだろう。

「ありがとうございます。それで、構いません」
「皇太子殿下……」

皇子が訂正しようとしたのを、バルドが遮り話の腰を折る。
この時点でも、バルドの意図は読めない。皇子も更に口を開こうとして、王妃様に怪訝な顔をされ、小さくため息をついて口を噤んだ。

「時に、皇太子殿下。クレイドルよりサラタータまで、かなりかかりますわ。お疲れではございませんか?」
「そうですね………」
「そうでございましょう?言って下されば、用意は十分致します。お望みのものあれば、仰って下さいませ?幸い我が城には、侍女も、なんでしたら侍従もおもむきの異なる者を多数控えさせておりますので」

王妃様の言葉に、俺は部屋の温度がいきなり下がるのを感じた。
これは……マズいかも。
目には見えずとも、バルドの魔導の波動が冷たく凍りついていくのが分かる。

「お心遣い頂きありがとうございます。ですが、そちらから何かして頂かなくて結構です。こちらから動きますから」
「ほほっ、左様にございますか?ご遠慮なさらず、お申し付けくださいませ?」
「えぇ……」

こ、こ、こあい!
バルドは笑顔。でも、目が笑ってない。

王妃様に呼ばれ、指示された侍従に部屋へ案内されるまで、バルドの氷の魔導の波動に俺は戦々恐々としていた。





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