240 / 465
第二部2章 策略忘却 欲望渦巻く炎の王室の章
1.血塗られた炎の王宮⑩
しおりを挟む「エドゥアルト!!」
「母上……今、戻りました」
「あぁ、何処に行っていたのです?黙って城を抜けるなど」
「申し訳ありません……」
「そなたは私の言う事だけ聞き、ただ私に任せておればよいのです。退屈なれば言って下されば、何でも与えましょう。黙っていなくなるなど、二度としてはなりません。良いですね?」
通された一室にいた王妃様が、エドゥアルト皇子に駆け寄り言う。綺麗な女性だけど、どことなく、あまりお近づきにはなりたくない感があるな……
それに一見、子を思う母の図だけど…
何だろ?何か違和感。
「皇子…そんな事より、こちらが?」
抱擁もそこそこに、王妃様の意識がこちらに向いた。
そんな事よりって……皇子が居なくなって帰城したにしては、あまりにあっさりしてない?
「帝国、クレイドルの皇太子殿下であらせられますね。此度は、我が国の皇子がご迷惑をおかけいたしました。母であり、王妃の私からお詫びいたします」
「迷惑というほどのものもありません…クレイドル皇太子、グレインバルド=ルーク=クレイドルと申します。サラタータ王妃様にご挨拶申し上げます」
「サラタータ王妃、クレーシュと申します。正式な謁見ではない故、形ばかりで失礼致します」
互いの挨拶が済み、顔を上げた王妃様が、バルドをうっとり見つめる。
王妃様……女の顔になってる。
気分は…良くはないが、仕方がない。バルドは誰が見てもイケメンだから、王妃様が見惚れるのも無理はなく……
ただ、一国の王妃で、言うなればサラタータ王の奥さんで人妻で…自分よりはるかに年下の、他国の皇子に隠しもせずハート飛ばして見惚れるのはどうなんだと思うけどね……
「おかけくださいませ」
ソファに促され、バルドが座る。
王妃様と皇子も座った。王妃様は俺には全く気を向けない為、俺は、セレストとイアンの陰に隠れるように立つ。
バルドが近くに寄せないのが気になった。
何かあるのか?
「此度は、サラタータへは何のご用件が?」
「用件だと、何故お思いになります?」
王妃様の質問に、質問で返すバルド。
まさか、そう返されると思わなかったのか、一瞬面喰らったようになり、王妃が瞬時に顔を取り繕う。
「ほほっ……いえ、お恥ずかしい話ではありますが、我が国、サラタータは今少々立て込んでおります。そのような国に、まさか外交・遊山は考えにくいかと?」
微笑む王妃様の顔から、さっきまでのバルドに対する柔らかみが薄れた。
これって……………
「そうですね。用件は用件とだけ、申し上げます。あぁ、その用件への協力を、皇子殿下にご助力願いましたので何卒よしなに。内容につきましては、皇子殿下より聞いていただいて構いません」
「皇子がお世話となったのです。勿論、できる協力はいたしましょう」
「ありがとうございます」
お互いが一歩も引いてない。
やっぱり……探り合いだよな?これ。
「サラタータよりは、いつお発ちになりますの?」
「そうですね…いつ、とはまだ決めておりませんが、すぐとは申し上げませんとだけ」
「では、しばらくご滞在頂けるのですね?」
王妃の質問には答えず、やんわり微笑むバルド。
う~ん……バルドの意図が分からん。
「そうですか。では、一室用意を致しましょう。お付きの方々の部屋も隣に。三人でも十分に広い……」
「母上………」
「何です?皇子。話の途中に割り込むなど、無礼ですよ?」
「すみません…ですが」
どうやら、王妃様はおれもお付きの従者と思ってるもよう。
まぁ、今までは紹介されたり、そういう程で話されて、俺が女神の光の魔導と知れたが、紹介されなければ対応はこんなものだろう。
「ありがとうございます。それで、構いません」
「皇太子殿下……」
皇子が訂正しようとしたのを、バルドが遮り話の腰を折る。
この時点でも、バルドの意図は読めない。皇子も更に口を開こうとして、王妃様に怪訝な顔をされ、小さくため息をついて口を噤んだ。
「時に、皇太子殿下。クレイドルよりサラタータまで、かなりかかりますわ。お疲れではございませんか?」
「そうですね………」
「そうでございましょう?言って下されば、用意は十分致します。お望みのものあれば、仰って下さいませ?幸い我が城には、侍女も、なんでしたら侍従も趣の異なる者を多数控えさせておりますので」
王妃様の言葉に、俺は部屋の温度がいきなり下がるのを感じた。
これは……マズいかも。
目には見えずとも、バルドの魔導の波動が冷たく凍りついていくのが分かる。
「お心遣い頂きありがとうございます。ですが、そちらから何かして頂かなくて結構です。必要ならこちらから動きますから」
「ほほっ、左様にございますか?ご遠慮なさらず、お申し付けくださいませ?」
「えぇ……」
こ、こ、こあい!
バルドは笑顔。でも、目が笑ってない。
王妃様に呼ばれ、指示された侍従に部屋へ案内されるまで、バルドの氷の魔導の波動に俺は戦々恐々としていた。
2
お気に入りに追加
2,223
あなたにおすすめの小説
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
国王の嫁って意外と面倒ですね。
榎本 ぬこ
BL
一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。
愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。
他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる