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第二部1章 黒き鎖の呪痕 奪われつつある光の章

13.情報収集②

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イリス様の屋敷から城に帰り、バルドの私室。
サラタータの話は聞けた。何も知らずに行く羽目にならずに済んだが、結局、行ってみないと分からないという部分も多い。

「結局サラタータ国内に、炎の魔導はいるのか?」
「分からんな……イリスが言っていたように、次代がいないのであれば、先代の魔導は生きているのは確かだ。ただ………」
「ただ?」
「そうだとすれば、何故姿を現さないかだな…」
「王室の面倒事に巻き込まれたくないとか?」

確か、イリス様の話では国王の血に連なる者って言ってたし。

「あり得るが……可能性としてはもう一つある」
「もう一つって?」
「現さないんじゃなく、現せない」

それって…現したくても、事情があってって事だよな?

「あくまでも推測だ。ほんとのところは分からんがな……」
「じゃあ、やっぱり行くしかないんじゃないか?」
「あぁ。まぁ、元々、クレイドル国内にいたところで、あまり多くは探れはしないから行くしかねぇんだがな」

国内情勢不安定な国に行く。危険がまったくないと言い切れないだけに不安だ。

「アヤ……」
「え?」

考え事してたらバルドに呼ばれる。何だと思い見ると、何やら手招きされた。
眉根が寄る。顔をしかめると、バルドがクスクス笑う。

「ア~ヤ」
「………………………………やだ」

名前を呼ぶだけ。それ以外は無言の「来い」の意図。何となく、何がしたいのかは分かる。そういう意味はなく、多分、ただイチャつきたいだけ。触れ合いたいだけなんだろう。
だけど……素直に従いたくない。昼間っからベタベタすんのは恥ずかしいし、第一、今はそんな場合じゃないのでは?
いろいろ一人グルグル考えてたら、いつの間にかそばに来ていたバルドに抱き込まれた。

「ちょっ……!バルド?!」

ソファに座ったバルドの足の上に、向かい合わせで跨る形で座らされた。
なんて格好をさせるんだ!
こんなとこ、誰かに見られたら……

「恥ずかしいんですけど……」

無駄と知りつつ抗議する。

「俺しかいねぇ」

あっさり却下。やっぱりな……
これも無駄と知りつつ、これみよがしに嘆息してみせたが、笑い飛ばされて終わる。
喉元に口付けられ、やんわり歯を立てられた。軽く、チリッと走る痛みに顔をしかめた。

「つッ…………!」

文句をつける前に、噛まれた箇所にネットリ舌が這わされ舐められて、背中にゾクッと走った感覚に、軽く腰を捩った。

「バルド!?」
「子供……つくるか?」
「…………………………!!!」

唐突の言葉に、一瞬何も返せない。

「バルド……ごめん。ラァムの実…子供の件はまだ先にしないか?」

俺の言葉に、バルドは特に何か言うでもなく、黙って静かに聞いている。

「あんまり、こういう事言いたくないけど…この先どうなるか分かんない状態で、安易に子供をなんて…俺にはできない。だから……ごめん。待ってほしい」

沈黙が続く。
何か言ってほしい。恐る恐る顔を伺うと、不意に口付けられる。
触れたのはごく短く。チュッと軽いリップ音を立てて唇が離れた。

「分かっている、謝るな。お前がそうしてぇなら、俺は従う」
「い、いの?」
「可愛い伴侶の頼みだからな……従うさ」
「うっ……ぇ、と…ぁ、りがと」

どうにもこうにも恥ずかしくて、言葉がゴニョゴニョになる。
バルドって……普通は恥ずかしくてできないことや、言えない事も、わりとナチュラルにやってのけるよな……
まぁ、バルドに限らずか。この世界の人がそうなんだ。俺は、シャイな日本人だから、やっぱ照れが勝つ。それもあって、尊敬しますわー…うん。

「アヤ…ひとまず、行く場所が決まった事で、とりあえず行くぞ?」
「行く?どこに?」
「城を抜ける事になる。なら、行かなきゃならんだろ?」
「だから!どこに?」
「兄上の……陛下のところへ、許可取りだ」

先にソファから立ち上がったバルドに手を差し伸べられ、俺も従うべく、ゆっくりとその手に自分のそれを伸ばしていった。





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