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第二部1章 黒き鎖の呪痕 奪われつつある光の章

11.神の台座の鍵②

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お茶と果物を供され、屋敷で待つ事十数分。ユフィカとラトナが部屋へと入ってきた。

「待たせたな」
「いや、それほどでも」
「ユフィカに聞いた。父に会いたいとか?」
「うん。聞きたい事があって……できそう?」

俺の問いに、ラトナがしばし無言でいたあと口を開く。

「あまり、具合が芳しくない……聞くが、話とは我らが渡した例のあの石の事か?」
「そ、だけど、何で……?」
「俺から……話しても良いか?」
「お前からとは?」

俺が応えるより早く、バルドが口を開く。

「父、族長から全て聞かされている。お前たちが来たら、話すようにともな」
「教えてくれるんだ?」
「あぁ……」
「長くなりそうだね。お茶をもう一度用意するね?」

ユフィカがそう言って立ち上がり部屋を出る。

「ラトナ。聞くが、あれは鍵だな?」
「気付いたか?」
「最初は分からなかったが……諸事情あって、アヤ以外触れる事ができなくなったからな。もしかしたらと思ったが……」

え?そうなんだ?まったく気付かなかった。
ここに来る前も普通に触れて、ユフィカがくれた布袋に入れたし……

「ここに来る前、試しに触ろうとしたが弾かれた」

そう言って掲げて見せたバルドの手の指が裂傷で傷つき、少し血が滲んでいる。

「バルド、指が…!」
「大丈夫だ。大した事ない」
「……アヤが、鍵と完全に繋がった証拠だな」
「ラトナ…鍵って一体…?それに、この石は何なんだ?」

俺の問いに、ラトナが神妙な顔で口を開く。

「アヤと繋がったその石は鍵。神の…………」
「か、み…………?」

「あぁ…女神が作りし、神の台座の鍵だ」













「神の台座の鍵……」

神の台座の鍵って、何なんだ?

「神の台座の鍵とは、アヤ…お前と台座を繋ぐための媒体みたいなものだ。台座を発動させるには、その鍵が必要となる」
「台座を発動って……じゃ、俺は」

鍵と繋がったって、ラトナは言った。それでいくと、神の台座は発動がすでに………

「早まるな。確かに、鍵とお前は繋がりはしたが、台座はすぐに発動しはしない」
「すぐに発動しないというと……何か条件があるか?」
「そうだ」

発動するための条件。それは………?

「発動させるには、六魔導全ての光を集める事。それを以って初めて発動させる事ができる」
「六魔導全ての光……」

あの時の事だ。
あの時、石は俺とバルドから溢れた光を吸い取った。もし、あれがそうだというならだが……

「光全て、か……光を集めた後は?何が発動させるための条件になる?」
「神の台座を使う者次第だな。神の台座の鍵となりし者…アヤはその時点で、自我は失っている。台座を動かすのは、台座を使う者次第。……父から聞いている。この場合は、闇側の者が使えば、世界は終わる」

闇側の者。
俺の脳裏に、一人の男の姿が浮かんだ。

「ラトナ。そうなら、逆もまた然りか?」
「察しがいいな、グレインバルド。そうだ、今言った事を逆に使えば、な?」

え、何?どゆこと?

「バルド?」
「分からんか?アヤ。台座が使う者次第だというなら、壊す事もできるという事だ。光を集めるとこまでは一緒。だが、お前が台座の鍵となり台座の一部になる前に、壊す。台座が壊れる事をお前が望めば……」
「台座を、壊す事ができる……」
「そういう事だ」

鍵となり、台座の一部になり、自我を失う前に台座を壊す。
できるだろうか……?
いや…できる、できないじゃない。やらなきゃならないんだ。

「石を、奪われるなよ?アヤ。その石は、お前たちにとって大切である前に、やつらにとっても重要なものだ」
「ラトナ……」

石を奪われないように、魔導の光を集める。結構、大変かもしれない。

「闇側の攻撃が苛烈になるな……」
「どういう意味だ?グレインバルド」
「闇は、俺たちがすでに石を手に入れた事を知っている。現に、ここへ来る前にも接触があり、アヤを石ごと奪われかけた」
「本当か?!……それが本当なら、やつらの側に探知に優れた者がいる可能性が高い…大丈夫なのか?」
「この身に代えてもアヤは守るつもりだ」
「必ず、守れよ……グレインバルド」
「あぁ……」

男の身としては、守られてばかりは情けないけど、自分が非力なのは変えようのない事実で、俺はこの場は黙っている事にする。

「ラトナ…今更、聞いてどうなるもんでもねぇが、お前たちの父は、そもそも何でこんなもんを持ってて、何故、アヤに渡したんだ?」
「さぁな……父はそこまでは言わなかった。理由は俺も知らん。まぁ……おそらく推測にすぎんが、アヤだから…じゃないのか?」
「俺?俺だから、て……?」
「……俺にもよくは分からん。だが、お前なら…アヤなら、何か上手くいき、何か変えられそうな気がする」

それは……さすがに買い被りすぎじゃ…

「とにかく。これから、大変なのは確かだ……世界の命運がかかってる。話が壮大すぎて、危機感も湧かんくらいに……だが、過酷なのは確かだ。こんなありきたりな言葉しか言えんが、気をつけろよ?」
「ラトナ……うん。分かった…ありがと」
「あぁ……時に、話は変わるが、ラァムの実は使ったか?」
「いや。それどころじゃねぇから、とりあえず城の宝物庫に入れてある」
「そうか……なら、まだ子作りしてないな?アヤ、今ならまだ俺と番になれるぞ?村に残らないか?」
「ラトナ……てめぇ」
「いや……え、っと…」

世界の命運が~、的な事さっき言ったよね?なのに、村に残れって……言う事変わりすぎ!

結局、そのあと険悪になった二人。バルドを俺が、ラトナをユフィカが引き離し、挨拶も他愛もない会話もなしに俺とバルドは村をあとにした。

……いい加減にしてくれ!





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