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番外編
イライラいがいがの理由と在り処②
しおりを挟むしばらく部屋で一人お茶を飲み、お菓子を食べてとしていたが、苛立ちとイガイガは治らず、やがて檻の中のクマみたいに、あっちをウロウロ、こっちをウロウロ。
「あー、もう!何だよ、一体!意味分かんないし!」
持て余し、頭を掻き毟る。
「うぅ~……外、出よ。何か、モヤモヤするし。外の空気吸ったら変わるかな~……?」
部屋を出て、とりあえず俺は中庭と呼ばれる場所に出た。庭と言っても、庭園に近く、かなり広い。
トボトボ歩いてたら、
「あ!!」
「ッッッ!?」
中庭を歩く見知った顔に出くわした。知ってると言っても、名前くらいでほとんど知らないに近いけど。
相手は虚をつかれたのか、一瞬目を瞠り、次には顔を盛大にしかめて踵を返した。
「あ!待ってって!え~っと、エリオだっけ?」
「……………ハァ~…、何か?光の魔導様」
面倒くさい、嫌々という態度を隠そうともせず、エリオが振り返る。
そうだ。彼はエリオ。
宰相、レズモントの小姓で城に仕える侍従。
可愛いといって差し支えない顔は、俺に関わりたくないですと全力で言ってる。
「ゴメン!嫌なのは分かるけどさ、どうしても聞きたくて!」
俺がそう言うと、エリオは渋々話を聞く姿勢を取ってくれる。
「あの、さ……」
「早くしていただいていいですか?こちらもヒマではありませんので」
トゲトゲしい態度はあの時と変わらないが、ちゃんと聞いてはくれるようだ。
「俺。自分が何でモヤモヤすんのか分からないんだ」
「はい?意味が分かりませんけど」
「いや、実は………」
かくかくしかじか、侍女から聞かされたバルドが男女問わずモテまくるという話を聞いてのくだりを話すと、エリオが俯く。肩がプルプル震えてるようだが、一体?
え~っと、男同士の話を聞いて気分悪くなった?とかなんとか考えてたら、エリオがバッと、俯けていた顔を上げる。顔が真っ赤になり、目は吊り上がり。
どうやら、怒ってる。
「あんた、馬鹿なの!?それともわざと?鈍いにもほどがあるでしょう!第一!あんたにあんな事言って、宰相様の命令とはいえあんな事した僕に、普通、近づく?!信じらんないよ!何を言うかと思えば、そんな内容だなんて……馬鹿馬鹿しい!」
一気に捲し立てられ、目を白黒させる俺に、エリオは一度大きく溜息をつく。
「何を言われるかと、身構えた僕が阿保みたいじゃない」
「はぁ……そういえば、そんな事もあったかな」
「あぁあぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーー!!もう!ホント苛つく!何なんだよ!?何の嫌がらせ?僕、あんたみたいなの嫌い!見てて苛つく!自分の魅力に無頓着で、人を惹きつけるくせにまったくの自覚なし!あんたみたいなのにかかったら、自分を作って一生懸命なこっち側の人間馬鹿みたいじゃないか…」
「えぇ、っと……ゴメン?」
「謝んないでよ!とにかく!あんたのそれは悋気だよ!まったく!何で僕がこんな事を……殿下は魅力的な方だから、気持ちは分からなくもないけど。言っとくけど、僕なんて可愛い方だからね?文句言うくらいで済んでるんだから。タチ悪い子はもっとえげつないんだからね?殿下が全てさらけ出してるあんたに対して妬んでる子はいっぱいいるんだから。特に、サンカスの子には…って!居ないしーーーーーー!!もうッ!何なの!?」
*
*
何か、不快にさせちゃったみたいで申し訳ないな。あれ以上怒らせるのもと思って、結局、このモヤモヤが何なのか聞かずに離れたけど……
エリオにはもう聞けないな…どうしよ……
「ファランなら、分かるかな?」
何か女の子頼りってのも情けないけど、自分じゃどうしようもできない限り、背に腹は代えられない。
善は急げと、俺は城の裏門へと足早に向かった。
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