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第4章 忍びよる闇の策略と失われし久遠の刻編
22.闇の深淵開口。モノリス崩壊までのカウントダウン③
しおりを挟む「さっきの部屋には、方陣はなかった。考えられるのは、上の階だけど。しらみつぶしに捜すのか?」
「それじゃ、間に合わねぇ。あたりをつけるしかないが……魔導感知は、セレストかアッディーンの得意分野だがな……俺もできん訳じゃねぇから、やってみるがな」
短く詠唱し、バルドが目を閉じる。集中してるのが分かったので、俺は大人しく控える。
「あった…やはり最上階だ。方陣はまだある。だが、完了すれば、崩壊と同時に消え失せる。急ぐぞ」
「分かった!」
言い終わると同時に、俺たちは走り出す。
揺れはどんどん酷くなり、崩れた瓦礫や飾りが散乱、足を取られないようそれでも懸命に走る。
「バルド…モノリスは、今回何の為にこんな事したんだろう?……力を手に入れるとは言ってたけど、それだけか?」
「一番はそれだろうな。が、あくまで推測だが、女神の魔導を葬る。光であるお前を手に入れる。おそらく、闇がモノリスに提示したのはその二つだろう」
「俺を……神の台座って言ってたよな。闇は、それと俺を使って何がしたいんだろう……」
「分からんが…ロクでもない事なのは確かだ」
「モノリスの崩壊だけは何とか止めないと…罪のない人がたくさん死ぬ。それだけは駄目だ」
モノリス王や皇太子、闇が何をしようとしたのかは知らない。だが、モノリスの一般の人たちがそれに巻き込まれなきゃならない道理はない。
「崩壊まで時間がない。少しとばすぞ?」
「分かった!」
バルドがペースを上げる。
壁に亀裂が入る。柱がボロボロ崩れ出し、かなり危険な状態だ。でも、諦めるわけにはいかないし、逃げるなんてもっとない。
最上階まで続く崩れかけの階段を、俺とバルドが駆け上がると同時に、階段は轟音を立てて崩れ落ちた。
振り返る暇はない。
「突きあたりの部屋だ!」
バルドの言葉と同時に、二人揃って部屋へ飛び込む。
「っ……これ、は」
「バルド………!!」
部屋は王の私室らしく、中央に方陣が赤白い光を放ちながら、クルクル回っている。
が、そんな事より、部屋のあまりに陰惨な光景に、俺は思わずバルドに縋り付く。
それから隠すように、バルドが俺の顔を自分の体に押しつけるようにして抱きすくめてくれた。
体が震える。直視できない。
方陣の周りには人がいた。数は五人。ただし、すでに生きてはいない。
一人は首を切られ、一人は胸を剣で貫かれ……五人が違うやり方で殺され、流れ出した血は、方陣に吸い込まれていっている。
「酷いな…命を代償とした破壊の方陣か。だが、そうなると厄介だなこれは……」
「バルド?」
「強力な呪いだ。簡単には消せん」
「でも、このままじゃ崩壊が……どうしよう」
「闇の入れ知恵だろうな。とりあえず、血の供給を止めるのが先だ。アヤ、少し離れてろ」
バルドに言われ、俺は少し離れる。
短く詠唱すると、バルドの手から放たれた水の膜が、五人の体を包み込み方陣から引き離して部屋の隅に。
ひとまず、目から離れた事でホッとし、俺はバルドに駆け寄る。
「止まったのか?」
「いや。力の供給を絶っただけだ。方陣を壊さん限り、崩壊は止まらん」
確かに、揺れも地響きもそのまま。
このままじゃ、モノリスの崩壊は止められない。
たくさんの罪のない人が死ぬ。場合によっては…ーー
俺は隣に目をやる。
そうだ……バルドだって……ーーーー
心臓が早鐘を打ち出した。理性では考えるな。そんな事ないって否定するけど、絶対なんてないし……
俺は方陣に目をやった。方陣の仕組みは、ファンガス老師とルースから聞いてて、分かる。外から崩すのは困難。だが、入ってしまえば、内側からの方が崩しやすい。
だったら……ーーーーーー
「アヤ?どうし……っ!?」
「ゴメン、バルド………!!」
俺はバルドに抱きつき、そっと小さく呟き、バルドを突き飛ばす。不意をつかれたバルドがバランスを崩したのを横目に、俺は方陣に向かって駆け出した。
「アヤっ!何するつもりだ?!やめろーーーーーっ!!」
バルドの叫びが後ろから聞こえるのと、俺が方陣に飛び込み、光と魔道の奔流に飲み込まれるのは同時だった。
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