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第4章 忍びよる闇の策略と失われし久遠の刻編

3.闇の鎖②

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振り返った先には、黒いローブにフードを被った者が一人。
まったく気配感じなかった……
入口出口は一箇所だけ。そこを塞ぐ形で、そいつは立ってる。
下手に動けないから、とりあえず距離を保ってジリジリゆっくり離れる。
ローブの男(だよな?体格的に)が、ローブの裾に包み抱えていたものをゆっくりと指し示す。
それは、クッタリと意識のない……

「リコっっ!!」

呼びかけに反応しない!まさか!?

「リコに何したんだ!リコ離せ!!」
「何もしてないよ。気を失ってもらっただけだから」

この声……

「イヴァン?」
「あ!分かった?嬉しいなぁ~、覚えててくれたんだね」

フードを外し、下から現れた顔はイヴァン。相変わらず整った容姿だが、あの時と違い、どこか胡散臭さを感じる。

「何の真似だ?イヴァン」
「何の真似?う~ん、なんの真似だろうね~?」
「っざけんな!俺が聞いてんだろ!リコ離して、さっさと答えろよ!!」
「ア~ヤ、可愛い顔が台無しだよ?」
「~~~~~~~~~~~!!!」

話になんない!何なんだ、こいつ。
元々、そんなに親しくもないし、あれから接点もなかったけど、こんな意味分からん奴とは思わなかった。
それに、何だろう?何て言ったらいいか分からないけど、イヴァンからは嫌な感じしかしない。本能が告げてる。
こいつ、ヤバい。
どうしよう。リコ、イヴァンから引き離さなきゃいけないのに、心とは裏腹に体が逃げを打つ。近づきたいのに近づけない。距離は十分ある。なのに、正体不明の悪寒が止まらない。身体中の産毛が逆立ち、鳥肌が立つ。
気持ち悪い!気持ち悪い!こいつ、やだ!

「か~わいい、アヤ。怯えてるの?顔、物凄く引きつっちゃってるよ?ねぇ、約束覚えてるかい?」
「や、くそく?」
「そ。約束したよね?今度は二人だけでお喋りしようね?って。忘れちゃった?」

初めて、イヴァンに会った時に、確かそんなような事を……
でも、あの時と今とでは、イヴァンの纏う空気が全然違う。むしろ、別人って言われた方が納得できるくらいに。

「覚えてるなら、僕と一緒に行こうか?」
「行くって……どこ…」
「お喋りできるとこ。あと、アヤを必要としてる方の所へだよ」
「な、んだよ、それ……誰……」

どうしよう。どうしたんだろう?空気が重い…周りの空気が気持ち悪い。息がうまく吸えなくて苦しい。

「ついてきたら教えてあげる。アヤが大人しく、僕について来れば、リコも無事に解放してあげるよ?」

卑怯だ!それ、選択の余地ないじゃん!俺が言う通りにしなきゃ、リコがどうなるか分かんないって言ってるのも同然じゃないか!
嫌だ!行きたくない!でも………
イヴァンの腕に支えられ意識のないリコ。
あ~あ……また、信用なくなるなぁ……

「リコを、まず解放しろよ」
「それは、僕と来るって事でいいかな?」
「……そうだって言ってんだろ!さっさと、リコを」
「いいよ~。アヤはいい子だな。聞き分けいい子は好きだよ」

ムカつく!悔しい!こんな卑怯者の言う通りにしなきゃならないのが!それ以上に、力のない自分が一番腹たつ!俺……俺は、弱い。誰一人、自分の力だけじゃ助けられない。
涙がじんわり滲むが、唇を噛み締め必死に耐えた。
泣くなんて嫌だ!こんな奴の前で、これ以上弱いとこは見せたくない!
キッと睨みつける俺に、イヴァンは頓着せず、ニヤニヤ嫌らしい笑みを浮かべ、近くの建物の壁にリコを凭せ掛け、悠然と俺に手を差し伸べてきた。
自分からイヴァンの手を取るのが嫌で躊躇ってたら、無理矢理手首を掴まれた。
手が……異常に冷たい。

「やっ!!…や、だ…やだっ!」
「おっと!駄目だよ、アヤ。逃がしてあ~げない」

楽しそうなイヴァンとは逆に、俺は言い知れない恐怖と嫌悪でいっぱいだ。
イヴァンの見た目には別におかしな所はない。
なのに………

「可愛い…可愛いよ、アヤ。震えてるね?ねぇ、こっち見て?アヤ。僕を見て…アヤ……僕が……」

掴まれた冷たい手に抗い、必死に体を離そうともがくが、あり得ないくらいの力で引き寄せられ、思わず顔を上げた俺は言葉を失い固まる。

「怖いかい?アヤ。可愛いよ~…僕が、怖くてしょうがないんだなぁ~…ほんと、喰べてしまいたいくらい可愛い……」

イヴァンの右目がギョロッと動く。金色に縦長の瞳孔。目玉だけが異様に飛び出したそれは、明らか人のものではない。
異質だ。気持ち悪いのに、目が逸らせない。
意識が遠のく。瞳の奥が重く暗く陰っていく。周りに黒いグニャグニャしたものが取り巻いていく。
リコは?リコは、大丈夫かな?
遠のく意識に抗い必死に探す。目端に、壁に凭れたリコの姿を捉えたところで、俺の意識は完全に闇に落ちていったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




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