105 / 465
第4章 忍びよる闇の策略と失われし久遠の刻編
3.闇の鎖②
しおりを挟む振り返った先には、黒いローブにフードを被った者が一人。
まったく気配感じなかった……
入口出口は一箇所だけ。そこを塞ぐ形で、そいつは立ってる。
下手に動けないから、とりあえず距離を保ってジリジリゆっくり離れる。
ローブの男(だよな?体格的に)が、ローブの裾に包み抱えていたものをゆっくりと指し示す。
それは、クッタリと意識のない……
「リコっっ!!」
呼びかけに反応しない!まさか!?
「リコに何したんだ!リコ離せ!!」
「何もしてないよ。気を失ってもらっただけだから」
この声……
「イヴァン?」
「あ!分かった?嬉しいなぁ~、覚えててくれたんだね」
フードを外し、下から現れた顔はイヴァン。相変わらず整った容姿だが、あの時と違い、どこか胡散臭さを感じる。
「何の真似だ?イヴァン」
「何の真似?う~ん、なんの真似だろうね~?」
「っざけんな!俺が聞いてんだろ!リコ離して、さっさと答えろよ!!」
「ア~ヤ、可愛い顔が台無しだよ?」
「~~~~~~~~~~~!!!」
話になんない!何なんだ、こいつ。
元々、そんなに親しくもないし、あれから接点もなかったけど、こんな意味分からん奴とは思わなかった。
それに、何だろう?何て言ったらいいか分からないけど、イヴァンからは嫌な感じしかしない。本能が告げてる。
こいつ、ヤバい。
どうしよう。リコ、イヴァンから引き離さなきゃいけないのに、心とは裏腹に体が逃げを打つ。近づきたいのに近づけない。距離は十分ある。なのに、正体不明の悪寒が止まらない。身体中の産毛が逆立ち、鳥肌が立つ。
気持ち悪い!気持ち悪い!こいつ、やだ!
「か~わいい、アヤ。怯えてるの?顔、物凄く引きつっちゃってるよ?ねぇ、約束覚えてるかい?」
「や、くそく?」
「そ。約束したよね?今度は二人だけでお喋りしようね?って。忘れちゃった?」
初めて、イヴァンに会った時に、確かそんなような事を……
でも、あの時と今とでは、イヴァンの纏う空気が全然違う。むしろ、別人って言われた方が納得できるくらいに。
「覚えてるなら、僕と一緒に行こうか?」
「行くって……どこ…」
「お喋りできるとこ。あと、アヤを必要としてる方の所へだよ」
「な、んだよ、それ……誰……」
どうしよう。どうしたんだろう?空気が重い…周りの空気が気持ち悪い。息がうまく吸えなくて苦しい。
「ついてきたら教えてあげる。アヤが大人しく、僕について来れば、リコも無事に解放してあげるよ?」
卑怯だ!それ、選択の余地ないじゃん!俺が言う通りにしなきゃ、リコがどうなるか分かんないって言ってるのも同然じゃないか!
嫌だ!行きたくない!でも………
イヴァンの腕に支えられ意識のないリコ。
あ~あ……また、信用なくなるなぁ……
「リコを、まず解放しろよ」
「それは、僕と来るって事でいいかな?」
「……そうだって言ってんだろ!さっさと、リコを」
「いいよ~。アヤはいい子だな。聞き分けいい子は好きだよ」
ムカつく!悔しい!こんな卑怯者の言う通りにしなきゃならないのが!それ以上に、力のない自分が一番腹たつ!俺……俺は、弱い。誰一人、自分の力だけじゃ助けられない。
涙がじんわり滲むが、唇を噛み締め必死に耐えた。
泣くなんて嫌だ!こんな奴の前で、これ以上弱いとこは見せたくない!
キッと睨みつける俺に、イヴァンは頓着せず、ニヤニヤ嫌らしい笑みを浮かべ、近くの建物の壁にリコを凭せ掛け、悠然と俺に手を差し伸べてきた。
自分からイヴァンの手を取るのが嫌で躊躇ってたら、無理矢理手首を掴まれた。
手が……異常に冷たい。
「やっ!!…や、だ…やだっ!」
「おっと!駄目だよ、アヤ。逃がしてあ~げない」
楽しそうなイヴァンとは逆に、俺は言い知れない恐怖と嫌悪でいっぱいだ。
イヴァンの見た目には別におかしな所はない。
なのに………
「可愛い…可愛いよ、アヤ。震えてるね?ねぇ、こっち見て?アヤ。僕を見て…アヤ……僕が……」
掴まれた冷たい手に抗い、必死に体を離そうともがくが、あり得ないくらいの力で引き寄せられ、思わず顔を上げた俺は言葉を失い固まる。
「怖いかい?アヤ。可愛いよ~…僕が、怖くてしょうがないんだなぁ~…ほんと、喰べてしまいたいくらい可愛い……」
イヴァンの右目がギョロッと動く。金色に縦長の瞳孔。目玉だけが異様に飛び出したそれは、明らか人のものではない。
異質だ。気持ち悪いのに、目が逸らせない。
意識が遠のく。瞳の奥が重く暗く陰っていく。周りに黒いグニャグニャしたものが取り巻いていく。
リコは?リコは、大丈夫かな?
遠のく意識に抗い必死に探す。目端に、壁に凭れたリコの姿を捉えたところで、俺の意識は完全に闇に落ちていったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2
お気に入りに追加
2,223
あなたにおすすめの小説
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
平凡くんの憂鬱
慎
BL
浮気ばかりする恋人を振ってから俺の憂鬱は始まった…。
――――――‥
――…
もう、うんざりしていた。
俺は所謂、"平凡"ってヤツで、付き合っていた恋人はまるで王子様。向こうから告ってきたとは言え、外見上 釣り合わないとは思ってたけど…
こうも、
堂々と恋人の前で浮気ばかり繰り返されたら、いい加減 百年の恋も冷めるというもの-
『別れてください』
だから、俺から別れを切り出した。
それから、
俺の憂鬱な日常は始まった――…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる