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第4章 忍びよる闇の策略と失われし久遠の刻編
3.闇の鎖①
しおりを挟むセレストに連れられ、俺はマダムの店に戻った。
「明日、また迎えを寄越す。それまで……」
「ウロチョロすんな……」
「分かってるならいい。じゃあな」
俺ってどんだけ信用……………………まぁ、ないな。
自分がこれまでやらかした事を思い、そっと溜め息をついた。
「おかえりなさい、アヤ」
裏口から入ると、休憩部屋でリコが寛いでいた。傍らには何やら大きな荷物。
「ただいま。リコだけ?」
「うん。キサはマダムと一緒に御用聞きよ。ファランもお使いに行ってるし、ラーシャは接待中。あたしは、休憩終わったら、これ頼まれてるから持ってくとこあるし」
「重そうだね、持とうか?」
「え…あたしは助かるけど。アヤ、いいの?」
「何が?」
「だって…出歩くなって、殿下に言われてない?」
「………………」
何だかなぁ~…俺ってほんと信用ないな。
「大丈夫だろ?確かにウロチョロすんなって言われてるけど、一人でって意味だし。リコと一緒なら、一人じゃないし」
「そう?でも、あたしじゃ、アヤの護衛にはならないよ?」
「………………」
リコ~?逆だよ~?立場、逆、逆!
う~~ん、何か悲しくなってきました。
ガックリしょんぼりなりながら、俺は力なく笑う。
「とりあえず、大丈夫だから。ね?手伝うよ」
「う、ん…分かった!じゃあ、ゴメンなさいだけど、手伝ってくれる?」
「もちろん!」
ずいぶん躊躇ってから、リコがようやく頷いてくれた。ニコッとはにかみながら笑う。
あぁ、可愛い。テレッてなりながら俺も笑顔。
荷物を届けるのは、店から歩いて十五、二十分くらいの古道具屋との事。
荷物の箱は持ってみると意外に重い。女の子でも持てない事ないけど、これ持って十分以上歩くのはかなり骨が折れそうだ。
中身は歌舞団の興行で使う際の小道具類。興行依頼のない、今のうちに修理に出すとの事だ。
「じゃあ、行こうか」
「ごめんね。ありがとう、アヤ」
「これくらい、大丈夫だって」
確かに軽々とはいかないけど、ちょっとの距離歩くくらいならわけはない。
道すがら、他愛もないお喋りをし、あっと言う間に古道具屋に着いた。
俺じゃ何をどう頼んだらいいか分からない為、リコにお願いして俺は外で待つ。
「お待たせ。アヤ、喉乾かない?付き合ってもらっちゃったし、この先に果実水の美味しい露店があるから、ご馳走させて」
女の子に奢ってもらうのは気が引けたが、リコに「ね?」と可愛らしくお願いされて、俺はありがたく奢ってもらう事にした。
何の果実水にするか、リコと楽しく相談しながら歩いていると、ふと、曲がり角が入り組んだ一角で、リコが立ち止まる。
「リコ?どうしたんだ?」
「あ…うん。…気のせいかな?今、あそこの角曲がったの、イヴァンだったような」
「イヴァン?でも、イヴァンは……」
イヴァンはマダムの店にいた男。俺がキサに助けられてしばらくしてから、数人の男達と一緒に話しかけてきた時にいた、あの綺麗な男だ。
たしか、ファランの話では……
「そうよね。団を辞めて、もう帝都にはいないはずなんだけど……」
「リコ、気になるのか?何かあった?」
「気になるのはイヴァンじゃなくて、一緒に辞めちゃった、ランスの事なの」
「もしかして、ランスの事好きだった?」
俺が指摘すると、リコが恥ずかしそうに、でもコックリ頷く。
うお!マジか?!
「イヴァンなら、まだ追いかければ間に合うかもよ?追いかけよ」
「え、でも…違うかもしれないし」
「違ってたら、違ってたでいいじゃん!でも、そうなら、ランスの事聞けるかもだし」
「そう、ね…うん!追いかける!」
「わ?!リコ、ちょっと待って!」
急に決心したように走り出すリコに、俺はとっさに反応できず出遅れた。
女の子って、こう!って決めたら早いよね。完全に出遅れて、先を走ってたリコ見失っちゃった…
しかも、何かやたら入り組んでないか?ここ。
リコが曲がったであろう角を曲がり、開けた場所に出たが行き止まり。
道間違った?
慌てて引き返そうと振り返り、俺はギクリと固まった。
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