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第3章 ラシルフ 騒風と騒乱の風編

15.疑惑はその日のうちに①

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結局、サーリヤとサーリヤの兵は全て捕まり拘束された。
サーリヤは王宮を乱し、他国の要人(俺のことらしいです)を拐かし、妹とはいえ第一皇女の謂れなき拘束、他国の皇太子への武力けしかけ(バルドが何もされな内からぶっ潰したが…)の罪で投獄。近い内に廃嫡され、王宮から遠く離れた地に幽閉されるだろうとの事だ。
バルドとカーティスの間でどんな話が成されたかは知らないし、知る必要はないだろう。

ラシルフ城内ーーーーーー

あてがわれた部屋に、俺とバルドの二人。
ラシルフで会ってから、バルドは俺を見ないし、直接声もかけない。
今も上着を脱ぎ、ソファにかけて座っているが無言だ。
どうしよう…話しかけづらい…
ソファにも座りにくいし、突っ立ってるのも疲れるし。
どこにいようか迷っていたら、急に影ができ視線を上げる前に強引に引き寄せられた。
首を手の平で掴まれる形で、そのまま顎を上に持ち上げられ顔を上向かされる。身長差がある為、首が痛い。

「バルド、痛い……」
「……お前を見てると苛つく」
「は?」

だんまりしてたと思ってたら、口から出たのはその言葉。喧嘩売ってんのかと、眉間にシワを寄せたが、バルドの表情はどうも違うっぽい。
手が首から離される。もう片手はまだ腰に軽く回されているが、片手が離れた事で二人の間に少し距離ができた。

「捕まえたと思った。気持ちも通じ合った。安心するかと思えば、一向に全然少しも安心しねぇ!むしろ、いつすり抜けていくか、いついなくなるか、手が届かなくなるか!?そればっかりだ!!愛してるのと同じくらい、俺の気持ちをかき乱すお前が憎い!!」

怒りと焦燥、わずかな悲哀。いろんな感情が入り乱れてる。

「お前は…ちゃんと、俺を見てるか?」

バルドの言葉に、俺の胸に刺さった棘が痛む。
頭の片隅では、止めろ!言うな!と声がする。でも…

「じゃあ、バルドは?」
「アヤ?」
「バルドは、俺をちゃんと見てる?俺を俺として見てる?」
「アヤ、何を言って……」
「女神の枷って何?」
「!!!」

バルドの目が瞠られた。
ズキンとさらに心臓が痛んで苦しい。

「誰に……は、この際どうでもいいな。聞いてどうしたい?それを信じたのか?」
「言わなかったのはなんで?俺が光だから、言わなかった?光だから惹かれたって言ったら、俺があんたへの気持ちに揺らぐと思ったから?光は貴重だもんな。逃したら大変だから、だから!!」

最後は絞り出し叩きつけるように叫んでた。
俯けていた顔を上げ、バルドを見つめる。俺の顔が悲しみに歪む。
それと同じくらい……

ずるい…
ずるい!
ずるい!
ずるい!
ずるい!
ずるい!
ずるい!!!!!

俺様のくせに!いっつも、自信満々で!人の話聞かなくて!俺がいいように大丈夫なようにしてくれるけど、結局、自分が一番いいようにする強引皇太子のくせに……

俺より、傷ついた顔するなんて……

「別の部屋を用意してもらう。お前は、ここを使え」

手が体から離れていく。感じていた温もりが遠ざかる。
無意識に伸ばしかけた手は途中で握った。
パタンと扉が音を立てて閉まり、俺はその場にうずくまり立てた膝を抱えて顔を伏せた。




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