上 下
81 / 465
第3章 ラシルフ 騒風と騒乱の風編

6.無自覚トラブルメーカー③

しおりを挟む



いつの間にか、ソファから立ち上がってた皇太子様に、俺は何故か抱き上げられた。

こいつ、けっこう背が高い。バルドと同じくらい?
それに、見た目よりがっしりしてて、鍛え上げられてる。

眉間にシワが寄る。
この世界の男どもは、本当に失礼だ。
人をホイホイ抱き人形かのように抱き上げ、担ぎとやりたい放題。
そりゃ、俺は背も小さい(この世界ではだ!俺は一般的!)し、細っこい、いかにもインドア派のもやしっ子かもしれないけど、だからって男の俺が同じ男に簡単に抱き上げられるなんて我慢ならん!

「俺、何で抱き上げられてるワケ?降ろして欲しいし、離れてくんない?」

自分なりに精一杯怖い顔で睨みつけたのに、皇太子様はどこ吹く風だ。それどころか、益々楽しそうに笑ってる。
先程までの不遜な態度が嘘のようだ。

「シーファ、名を聞かせろ」

命令口調。やっぱ変わってない。
は~な~せ~!お~ろ~せ~~!!
こっちは力一杯もがいてんのに、全然力は緩まない。

「あ、いつにしても、あんたにしても、失礼にもほどがあるだろうが!人に命令すんな!自分がまず名乗れ!」
「貴様!さっきから聞いていれば、殿下に対して何たる不敬な!この方は……」
「いい、アッディーン。シーファは、俺に名乗れと言った。この俺にだ」

クスクスと楽しそうに笑いながら、皇太子が青みがかったグレイの瞳で見つめてくる。イケメンは、バルドで見慣れてるけど、やっぱ間近で見つめられるのは慣れないな。

「カーティスだ。カーティス=ユファサ。歳は二十四。俺は名乗ったぞ?名前と歳を聞かせろ、シーファ」
「……アヤ。十七」
「アヤか。耳慣れん響きだが、悪くない。歳は意外だな。十四、五歳くらいかと思ったが」
「な!それじゃ、中坊じゃん!失礼なやつ!!」
「?聞き取れんぞ?」
「……俺は、そんなに子供じゃない!」

《ルーン》にひっかかった為、言い直してやりながら未だ睨む俺に、皇太子、カーティスは何が楽しいのか上機嫌だ。

「離せってば!あんた、さっきから何なんだよ!」
「何なんだはお前だ!殿下に対して不敬にもほどがある!」
「アッディーン。構わん」
「殿下!?しかし……」
「なるほど。グレインバルドが惹かれたのはこれか…納得だ。女も男も美しく、多少あざとい方が愛いと思ったが、これを知ってしまえばすべて霞むな」

ちょ!子供じゃないんだから、俺、抱き上げたまんまクルクル回んないで!
何が楽しいんだよ?!この皇太子様は~~~~!!

「目が回るだろう!いい加減にしろよ、この!皇子ってみんなこうなのか?人の話聞かないし~~~!いつまで抱き上げてんだよ?!離せってば~~~!!」
「よく見れば可愛いし、体は細く小さいが抱き心地は悪くない」
「な!ちょっ!どこ、触って!?んなとこ、揉むな~!」

やだやだやだやだ!!鳥肌立つ!気持ち悪い…

ダメだ!俺、男は、バルド以外ほんとダメなんだ……
あ、マズい…情けないけど、目の前涙で霞んできた。
女の子じゃあるまいし、男としてどうなんだって思うけど、大人の男に力でこられたら俺にはどうしようもできない。

「シーファ?どうし……」

固まったままの俺に、訝しんだカーティスが顔を覗き込み、ハッとしたように目を瞠り、無言で俺を降ろす。床に足が着いたのと、手が離れた事で、俺の体から力が抜けた。
フゥッという溜め息が聞こえ、ノロノロと見上げると、カーティスが微苦笑を浮かべ俺を見下ろしている。フイと視線を逸らし、

「アッディーン。部屋に戻しておけ」
「殿下?よろしいのですか?話をするのでは……」
「いい。気が削がれた」

打って変わり、険しい表情になったカーティスの言葉に、アッディーンが一礼し、俺は何も言う暇も与えられず部屋から追い出されるように退出させられた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

平凡くんの憂鬱

BL
浮気ばかりする恋人を振ってから俺の憂鬱は始まった…。 ――――――‥ ――… もう、うんざりしていた。 俺は所謂、"平凡"ってヤツで、付き合っていた恋人はまるで王子様。向こうから告ってきたとは言え、外見上 釣り合わないとは思ってたけど… こうも、 堂々と恋人の前で浮気ばかり繰り返されたら、いい加減 百年の恋も冷めるというもの- 『別れてください』 だから、俺から別れを切り出した。 それから、 俺の憂鬱な日常は始まった――…。

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

処理中です...