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第2章 水と炎の激愛、揺れる光の惑い編

1.とりあえず色々整理しましょう

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「ん……?」

閉じた瞼に光を感じ、俺の意思がゆっくり覚醒した。
薄っすら目を開け、二、三度瞬きし、ぼんやりと開けると、目に映ったのはベッドの白いシーツ。そして、目の前に、可愛らしく首をかしげるリラ。

「リラ…おはよ、でいいのか?」

キュッと可愛い鳴き声を上げたリラに笑いつつ、俺は体を起こし、途端に体に走った痛みに呻いてすぐにまたベッドに伏せてしまった。

「……つッッーー!最悪。何だよ、これ~……」

身体中のありとあらゆる場所が痛い。特に腰。そして、口にするのも躊躇われるあの場所がとにかく痛い。最初の痛みが薄れるのを待ち、俺はそろそろと体を起こす。

「……これ、ッて……」

俺は一応服は着せられていた。被って着るタイプのシャツみたいで、シンプルだが肌触りはいい。
ただ、でかい。肩線は落ちまくってるし、裾も下半身は隠れるくらいで、ちょっと短すぎるワンピースみたいな有様だ。

「バルドのだよな…彼シャツってやつ?はっず!」

着せたのは誰だろう?誰だろうと、事後の跡ありまくりの体を見られたかと思うと、うがーーっと叫びながら走り回りたいくらいに恥ずかしい。
う~とかあ~とか唸りながら、ベッド上でもだもだする俺の肩に、リラが飛び移る。
その小さな体を撫でてやりながら、俺は重く溜息をついた。

薬を盛られ不可抗力とはいえ、バルドとそういう行為をしたのは事実。同じ男という性を曲げての行為だ。後悔といった後悔があるかと言われたら、無きにしも非ず。ただ、止むに止まれずであった事を差し引いても、お互い、そういう感情、つまりは恋愛的な要素を持っての行為であったか。

「嫌いではないと思うけど、恋愛感情は、ない?」

ないというか分からない。もちろん、世の中そんな感情なくとも体を繋げられると言う人種はいる。
気持ちが分からないまま、体だけを繋げてしまった。その事実だけが、喉に刺さった小骨のように、俺にはどうしても飲み込む事ができない。

では、バルドは?

「ないな、相手は皇太子。わざわざ、好き好んで平凡な俺をなんてない。美人も可愛いも選び放題だし」

例えば、昨日の青年。エリオとかいったか?彼のような。
バルドとエリオが二人でと想像し、何となくもやっとしたのは、何なんだ?

「……………」

考えない事にしよう。今は、それより……

「これから、どうするかだな。まだまだ知らなきゃいけない事が山積みだけど、あんな事する奴がいるここにいるの、ヤバくないか?」

奴とは宰相の事だ。尋問するにしても、いきなりあんな事かますなんて、あり得ない。苦痛より快楽だったからといって良かったなんて当然思えないし、むしろ「テメェ、ふざけんな!」と、胸倉つかんで締め上げたい気分だ。
自分を知る為とはいえ、城なんぞについてきてしまったことを、早くも悔やみ始めている。
普通に当たり障りなく、情報収集し、帰れるなら帰りたいと思ったが、どうにもこうにも自分が思った事とは真逆に転んでばかりいるようだ。
この際、自分に関して考えるのをやめるか?記憶が薄れていくのも、自分が彩色師と呼ばれる能力を持つ理由も、自分がこの世界に来た経緯などなど……
しばし考え、ハァ~っと重苦しい溜息がもれた。

「まるっと逃げてどうするよ?俺。全然考えんわけにはいかないよな、やっぱ」

整理しよう。まずは、そこからだ。

「俺はこことは違う世界から来た。それは分かる。理由何たらは抜きにして、俺は光の属性魔導で、色を魔導に付加して操る彩色師と呼ばれる存在…らしい。能力を使う前に出るあの水の音色と、無詠唱に関してはまだ、分からないと。付加に色が選ばれたのも不明か……ここは、アーケィディア大陸にある、帝都クレイドル。この世界には魔導と呼ばれる魔法みたいな力があって、誰でも使える。光は少ないって言ってたな。あれ?俺って一応貴重な力に入るんじゃないか?なのに、あんな扱い受けたわけ?………………………
やめよ、考えたら考えただけ腹がたつ」

こうして考えてみると、自分に関しての記憶の部分が不明瞭な事がわかる。ハッキリしてるのは違う世界から来た…と、考えたところで、はたと止まる。
肝心な事が残ってた。
来たんじゃない。連れてこられた、もしくは引き寄せられたかもしれないんだ。

「時渡り、っていったよな。確か。俺の今の可能性って、やっぱそれがしっくりくるか。最初は異世界トリップとか思ったけど、何かそうそう簡単な話じゃないのかも。記録が少ないとは言ってたけど、ない訳じゃないんだから調べてみよう。いろいろ知るきっかけになりそうだしな」

とりあえず、調べるにはどうすべきか考えを巡らせていると、部屋の扉をノックされる音がし、扉がゆっくりと開かれた。入ってきたのは……ーーーーーーーー

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