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第1章 水と光、交錯の相愛編
8.密かな計略④
しおりを挟む体が動かない。目は開いてるし、見えているのにフィルターがかかったようにボヤけて見える。
「さて、幾つか質問がある。まず、あなたの名と年を聞こうか?先程の名が嘘という可能性もあるからな」
「名…名前は、アヤ、じゅ……十七」
うわ!口が意思に反して勝手に動く。
今までピクリともしなかった口は、まるでレズモント宰相の声に反応するように勝手に動いた。
「あなたは光だと聞いたが、間違いは?」
「な、ない」
「フム…城へはグレインバルド皇太子に連れてこられた?」
「はい……」
気持ちが悪かった。頭の中をかき混ぜられてるかのような不快感。部屋に立ち込める甘い匂いに吐き気がする。
「城に連れてこられる前はどこに?」
「マ、ダム、エルザ」
「城下の酒場の女主人の名だな。舞姫ラーシャのところか。その前は?」
宰相の質問はどんどん続くが、俺の気分は益々悪くなる。
「草原の中…ゲルグ」
「街道沿いにあるゲルグの草原か…何故、そのような場所にいたのだ?」
「分から、ない…気……たら、いた」
頭がぼんやりしたと思ったら、ハッと冷めての繰り返し。相変わらず、俺の体は口以外動かず、宰相が質問するたび、壊れたロボットのようにたどたどしく応えていた。
もう、気付いている。この甘ったるい匂い。これが俺がおかしくなった原因。
薬か何かか、こんなもので人を好き勝手するなんて許せん!
「分からない?分からないことはなかろう。そなたは、そもそもどこから来た?」
必死に抵抗を試みる。俺にももう分かっていた。導師ファンガスが言っていた、禁じられた魔導『時渡り』
俺はそれをおそらく使われた側の人間だと。
だからこそ、宰相の質問には答えられない。こんな卑怯な真似をする輩に、禁術を使われ別世界から連れてこられたなんて知られたら、どんな事になるか分かったもんじゃない。
余程強い薬か何かなのか、俺の口は俺の意思に反し開こうとするが、俺はともすればボーッとなりそうな意識を叱咤し、必死に閉じようと逆らった。
マズい。体が震える。
俺の反抗に、宰相は苦々しげに顔をしかめる。
「無駄な事を。光はおとなしく国に従っておればよいのだ。所詮、彼の方以外の光など、真の光ではない」
人を人とも思わない宰相の発言に、俺は悔しさに涙が目の端に滲むのを感じる。
こんなのが国の重鎮?
絶対、これ以上は従わない!
唇を噛み締め、ありったけの抵抗反抗を込めて、俺は宰相を睨みつけた。
「ふん!可愛げのない。さっさと己の素性を明かさんか!光といっても、どこの何やら分からん者を城に置くなど以ての外だ。ただ、馬鹿みたいに従えばよいものを無駄に抵抗しおって、面倒な!」
俺の反抗に、宰相は最早遠慮を捨てたらしく、扱いと言葉はまるで奴隷に対するそれだ。
「エリオ、あれを持ってこい!」
宰相の言葉に、いつの間に居たのか、俺に嫌味を言い、この部屋の前に置き去りにしたあの青年がいた。
手に小瓶の乗った銀のトレイを持っている。
宰相はその小瓶を手に取ると、蓋を開けて小瓶の口を俺の鼻に近づけてきた。この部屋の匂いより、更に凝縮したような甘い薬くさい匂いが鼻をつく。
俺は顔をしかめ、必死に避けようとするが、宰相に顎を掴まれ戻され思い切り深く吸い込んでしまった。
「すぐに効く。即効性だからな、そら」
「!?」
宰相の言葉が終わると同時に、俺は体に走った衝撃に言葉を失い体をのけぞらせた。
いつの間にか自由を取り戻した体は、だが、自由ではない。
「う、あ、あぁ……!!」
身体中を、例えるなら虫が這いまわっているような不快感が襲っていた。
「性感を高める薬だ。効くであろう?洗いざらい喋れば楽にしてやろう。嫌ならこのままだ」
倒れて触れた床にすら肌がビリビリ反応した。体が言う事聞かない。震えが止まらず、生理的な涙が目から溢れ出た。
宰相が何か言うが、俺は必死に首を振った。
「強情な!言わないなら、言わせるまでだ。エリオ、やれ!」
宰相の言葉に、青年エリオが俺を仰向けにし両手を広げ、押さえつけたと同時に……
突然、バァーーーッンと物凄い音を立てて、部屋の扉か吹き飛んだ。
*次回、エッチ入りますm(_ _)m ご注意下さいませ
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