上 下
19 / 465
序章 突然異世界トリップ迷惑編

16.男にモテても嬉しくない!!

しおりを挟む



ゆっくりと意識が浮上し、薄っすらと閉じていたまぶたを開く。
馬車の荷台の中なので、薄暗くはあるが、外はどうやら明るいようだ。
ファランと話し、キサに抱き上げられてから先の記憶が曖昧だ。

「あれ?」

寝過ぎて少し重い体をフラフラさせながら、俺は体を起こすが……

「何で、肩丸出し?」

前留めのボタンが外れて、シャツが落ちて肩丸出し。
自分で外した記憶がないのだが、はて??
寝ていたところを見回すと、服が置いてある。
着替えかな?
来ていた自分の服を見下ろすと、薄汚れていた為、遠慮なく着替えることにした。
下に履くパンツはゆったりとしたウェストを、ベルト通しのような所に幅広の紐ベルトのようなものを通し、キツめに縛って残りを帯のように巻きつけ端を帯の間にねじ込んだ。
上は被って着るタイプの、ポロシャツとTシャツの間みたいな服だ。前側の切れ込みは細い布紐が付いていて結んで留めるようになっていた。
全体的に若干サイズが大きいが、贅沢は言うまい。

「キュイ」
「リラ。構ってやれなくてごめんな。一緒に外出よっか?」
「キュウゥ」

肩に止まって、俺の頬にスリスリしてくるリラを、指でこちょこちょしてやり、一緒に荷台から外に出た。

外は明るいが、一体どれ程時間が経ったのか。

「キサ、探してんの?」

キョロキョロしていた俺に、誰か声をかけてきた。振り返ると、知らない青年が立ってる。
おそらく、団の一員だろうが、キサとファラン以外交流がない俺は、申し訳ないが少し警戒が入ってしまう

青年はすっきり綺麗系で、ニッコリと人懐こい笑顔を浮かべている。男に使うのはどうかと思うが、美人という言葉が当てはまる。美人でも、男なので笑顔に惹かれはしないが。
邪気のないそれに、俺は警戒を解き頷いた。

「キサか、ファラン知らない?俺、寝ていたみたいでさっき起きたばかりなんだ」
「あぁ、キサが抱き上げて運んでるの見たよ。具合が悪かったのか?」
「うん…そうみたいだ。あ、の…それより」

話の腰折って申し訳ないが、俺はキサやファランのとこ早よ行きたい。

「ごめん、キサはマダムのテントに呼ばれてる。だって、君、いつもキサやファランが付きっきりで、俺たち話しかけたくても話せないから」

青年の言葉で周りを見ると、いつの間にか三四人くらい別の青年たちが集まってきていた。
皆、背が高い。見下ろされるばかりで、俺が見下ろす奴は一人もいない。
何度も言う。俺が低いンじゃない。こいつらが高過ぎるんだ!

「そうそう。イヴの言うとおり」
「オレなんて、この前話しかけようとしただけでキサに睨まれてさ。オレのこと、覚えてる?」

そう言う青年は、確かこの前、キサを用事で呼びに来ていた。俺がそう応えると、青年は嬉しそうに笑う。

「覚えててくれた?オレ、カートっていうんだ。ね、名前教えてよ」
「おい、ちゃっかり抜け駆けすんな!俺、ランス。どっから来たの?黒髪って珍しいよね?綺麗だけどさ」
「てめぇだって、抜け駆けだろが。さり気なく口説いてんじゃねーよ!」

何なんだ、これ。俺、もしかしてもしかしなくてもナンパされてます?
可愛い女の子に囲まれて、キャーキャー言われるんなら嬉しいけど、男にいくらモテたところで、嬉しくもなんともないわ!!

「はいはい、群れない群れない。デカい男が囲んだら怖がるだろう?」
「んだよ、イヴ。てめぇだって、デカいだろうが」
「僕はいいんだよ。ごついむさいとは無縁だから」
「ハァ?てめぇ、ケンカ売ってんのか!」

うん。うるさい!
ケンカなら他所で、俺とは関係ないとこでやってくれ
もう、行ってもいいかな?キサがいる場所分かったしいい加減、男に囲まれてんのウザいから、もう離れたいんだけど……

何だかどんどん白熱しそうな言い争いに、俺がうんざりしかけた頃、探してた相手、キサがこちらに来るのが見えた。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

平凡くんの憂鬱

BL
浮気ばかりする恋人を振ってから俺の憂鬱は始まった…。 ――――――‥ ――… もう、うんざりしていた。 俺は所謂、"平凡"ってヤツで、付き合っていた恋人はまるで王子様。向こうから告ってきたとは言え、外見上 釣り合わないとは思ってたけど… こうも、 堂々と恋人の前で浮気ばかり繰り返されたら、いい加減 百年の恋も冷めるというもの- 『別れてください』 だから、俺から別れを切り出した。 それから、 俺の憂鬱な日常は始まった――…。

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

処理中です...