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序章 突然異世界トリップ迷惑編
16.男にモテても嬉しくない!!
しおりを挟むゆっくりと意識が浮上し、薄っすらと閉じていたまぶたを開く。
馬車の荷台の中なので、薄暗くはあるが、外はどうやら明るいようだ。
ファランと話し、キサに抱き上げられてから先の記憶が曖昧だ。
「あれ?」
寝過ぎて少し重い体をフラフラさせながら、俺は体を起こすが……
「何で、肩丸出し?」
前留めのボタンが外れて、シャツが落ちて肩丸出し。
自分で外した記憶がないのだが、はて??
寝ていたところを見回すと、服が置いてある。
着替えかな?
来ていた自分の服を見下ろすと、薄汚れていた為、遠慮なく着替えることにした。
下に履くパンツはゆったりとしたウェストを、ベルト通しのような所に幅広の紐ベルトのようなものを通し、キツめに縛って残りを帯のように巻きつけ端を帯の間にねじ込んだ。
上は被って着るタイプの、ポロシャツとTシャツの間みたいな服だ。前側の切れ込みは細い布紐が付いていて結んで留めるようになっていた。
全体的に若干サイズが大きいが、贅沢は言うまい。
「キュイ」
「リラ。構ってやれなくてごめんな。一緒に外出よっか?」
「キュウゥ」
肩に止まって、俺の頬にスリスリしてくるリラを、指でこちょこちょしてやり、一緒に荷台から外に出た。
外は明るいが、一体どれ程時間が経ったのか。
「キサ、探してんの?」
キョロキョロしていた俺に、誰か声をかけてきた。振り返ると、知らない青年が立ってる。
おそらく、団の一員だろうが、キサとファラン以外交流がない俺は、申し訳ないが少し警戒が入ってしまう
青年はすっきり綺麗系で、ニッコリと人懐こい笑顔を浮かべている。男に使うのはどうかと思うが、美人という言葉が当てはまる。美人でも、男なので笑顔に惹かれはしないが。
邪気のないそれに、俺は警戒を解き頷いた。
「キサか、ファラン知らない?俺、寝ていたみたいでさっき起きたばかりなんだ」
「あぁ、キサが抱き上げて運んでるの見たよ。具合が悪かったのか?」
「うん…そうみたいだ。あ、の…それより」
話の腰折って申し訳ないが、俺はキサやファランのとこ早よ行きたい。
「ごめん、キサはマダムのテントに呼ばれてる。だって、君、いつもキサやファランが付きっきりで、俺たち話しかけたくても話せないから」
青年の言葉で周りを見ると、いつの間にか三四人くらい別の青年たちが集まってきていた。
皆、背が高い。見下ろされるばかりで、俺が見下ろす奴は一人もいない。
何度も言う。俺が低いンじゃない。こいつらが高過ぎるんだ!
「そうそう。イヴの言うとおり」
「オレなんて、この前話しかけようとしただけでキサに睨まれてさ。オレのこと、覚えてる?」
そう言う青年は、確かこの前、キサを用事で呼びに来ていた。俺がそう応えると、青年は嬉しそうに笑う。
「覚えててくれた?オレ、カートっていうんだ。ね、名前教えてよ」
「おい、ちゃっかり抜け駆けすんな!俺、ランス。どっから来たの?黒髪って珍しいよね?綺麗だけどさ」
「てめぇだって、抜け駆けだろが。さり気なく口説いてんじゃねーよ!」
何なんだ、これ。俺、もしかしてもしかしなくてもナンパされてます?
可愛い女の子に囲まれて、キャーキャー言われるんなら嬉しいけど、男にいくらモテたところで、嬉しくもなんともないわ!!
「はいはい、群れない群れない。デカい男が囲んだら怖がるだろう?」
「んだよ、イヴ。てめぇだって、デカいだろうが」
「僕はいいんだよ。ごついむさいとは無縁だから」
「ハァ?てめぇ、ケンカ売ってんのか!」
うん。うるさい!
ケンカなら他所で、俺とは関係ないとこでやってくれ
もう、行ってもいいかな?キサがいる場所分かったしいい加減、男に囲まれてんのウザいから、もう離れたいんだけど……
何だかどんどん白熱しそうな言い争いに、俺がうんざりしかけた頃、探してた相手、キサがこちらに来るのが見えた。
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