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序章 突然異世界トリップ迷惑編
15.帝都クレイドル③
しおりを挟む空気がキィンと冷えたように感じられた。
グレインバルドの体から発せられる魔導は氷。水の上級魔導だ。
グレインバルドとセレスト、二人の間で無言の睨み合いが続き、先に折れたのはセレストだ。
幼なじみとはいえ、今の関係は主従関係。公私混同はできない。
「失礼しました、殿下」
口調が側近のそれに戻ったセレストを静かに見据え、グレインバルドは、一度息を吐き、纏った氷の魔導を霧散させた。
「わるい……ちっと、頭に血昇った」
「いや、俺も不用意だった。枷のことは出すべきじゃなかった」
グレインバルドは女神の枷に縛られている。
女神アウフィリアの枷。女神の血の雫から生まれた魔導。人の形と生を受けた瞬間から縛られ数百年。何代も転生を繰り返し、魔導と記憶に加護を持ち受け継がれてきた。
属性は全部で6つ。炎・水・風・土・闇・光。
それぞれの属性を加護とし、女神の魔導として転生した者達は、本人の意思とは無関係に転生の輪廻とある感情に縛られる。
光を除いて。
「光が世界から消えてどれぐらいだ?いもしない者を求め、いもしない者を守る為に生きろとくそジジィ共は言う。俺は枷や記憶の加護なんぞには従わん、自分の光は俺が俺の意思で探し出す。女神なんざ、クソ食らえだ」
「グレイ、女神に対しての不敬はよせ。誰が聞いてるか分からん」
「別に聞かれたところで構わねぇよ。俺の不敬は今に始まった事じゃねぇだろ。何せ、俺は女神自身の力、女神に一番近く、直接の加護を持つ水の魔導の転生の中においても、歴代最高最悪の問題児だ」
宰相や大臣たちが、自分を煙たがっているのをグレインバルドは知っていたし、グレインバルド自身、今更考えや態度を改めるつもりは毛頭ない。
それもあり、本来なら加護持ちが第一王位継承となるところを臣下一同の猛反対にあい、前国王、グレインバルドの父王により、グレインバルドは皇太子の地位に付けられた。
グレインバルドにしても、臣下の猛反対は想定の範囲内だし、特に不満も何も感じない。
グレインバルドが気に入らないのは、光を世界から消したくせに、枷だけを残した女神に対してだけ。
「どこに向かってる?グレイ」
部屋とは間逆の方向に向かっているグレインバルドに、セレストの片眉が上がる。
「サンカスに行ってくる。ジジィどもは、言いたきゃ好きに言わせとけ」
サンカスは帝都から、二三日ほどの場所にある街だ。
「言った側からお前は~!城を何日も留守にする皇太子がどこにいる!」
「ここにいんだろ?」
「~~~~~~~!!!!」
キリキリなるセレストにお構いなしだ。不遜傲慢極まりない。
肩を怒らせていたセレストだったが、フゥッと長くゆっくり息を吐き、眉間に思いっきり深い縦じわを浮かべ、不本意を隠そうともせず、だが、胸元に手を当てゆっくり頭を垂れる。
「お伴致します。殿下」
「好きにしろ」
振り向いたグレインバルドの口元は、不敵に、だが満足そうに笑っていた。
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