上 下
14 / 465
序章 突然異世界トリップ迷惑編

14.キサの試練①

しおりを挟む
*キサ主体になります。ヘタれるので、嫌な人は飛ばしてくだされ(ー ー;)飛ばしても大丈夫にはしますので。




腕の中の存在を、俺はどうやら無意識に見つめていたらしい。
羽のように軽いとは言えないが、全体的に細っそりした体だ。馬車までの距離を少しの間運ぶくらい苦にもならない。
今は眠るように意識を失い閉じられた瞳。まつ毛が長い。

腕の中の存在を意識しつつ、俺はゆっくり回想していた。


結局、ラーシャの機嫌が直らず、今日はここに野営となり、俺は男どもに指示出しつつ、野営用テントなどの設営をしていた。
あらかた設営を終えた頃、ファランが泣きそうになりながら飛び込んできたのだ。

「キサちょっと来て!お願いだから来て!」
「おい、何だ?落ち着け。お前一人か?アヤは…「そのアヤが大変なの!だから、来て!!」

俺の問いかけを遮るように、ファランはほとんど怒鳴るように言い切った。
ファランの様子に、只事じゃない事を感じ取り、俺はその場にいた奴らに簡単な指示だけ出して、ファランと共に走り出した。

「何があった?手短に話せ」

ファランを置いてけぼりにせぬよう、走るスピードを調節しつつ問うた俺に、ファランは首を振る。

「アヤ、倒れちゃったの」
「倒れた?原因は?」

倒れたとは穏やかじゃないな。急いだ方がよさそうだ。

「分かんないの。いろいろ聞かれたし、アヤって本当に物知らずで、あたしもいろいろ教えてあげてて…女神アウフィリアの話になったところで、急に意識なくして倒れちゃったの」

グスッと鼻をすするファランに、俺は並走しながら片手で後ろ頭を軽くポンポンしてやる。

「分かった、泣くな。で、アヤは?」
「えっ、と…あ!あそこ!」

ファランが指差した先に、なるほど人一人倒れ込んでいた。
急いで駆け寄り、花に突っ伏すように俯せで倒れていたアヤを、オレは仰向けになるよう急いで、だが、乱暴にしないよう抱き起こした。
固く閉じられたまぶたは青白く、息が少し早いが、特別苦しそうだったりはない。

「アヤ?アヤ……」
「大丈夫だから、静かにしてろファラン」

白い、色を失ったような頬に手を添え、顔を俺の体の方に少し傾け、手のひらを返して裏側でやんわり撫でさすり意識の覚醒を促してやる。
しばらく、そうしているとまぶたがフルフル小さく震えてきた。
薄っすらまぶたがゆっくり持ち上がり、現れた瞳が俺を映した。
一瞬絡んだ視線に、俺はスッと息を飲む。

「アヤ!アヤ!」

目を開けたのがわかったのだろう。ファランが必死に呼びかけた。ゆっくり瞬きしたアヤの瞳は綺麗な黒曜石の煌めきだ。

「どうしたんだ?ファラン」
「それはこっちが言いたいわ!話してたら、突然倒れて全然動かないし、慌ててキサを呼んできたの。具合悪かったの?ごめんね、気づかなくて」

アヤとファランが会話を続けてくが、俺はあえて会話には入らず、アヤを支える。
そうとう顔色が悪いし、表情は冴えない。

「大丈夫だから、心配すんなッて。ファランのせいじゃないし」

ファランを少しでも安心させるためだろう、懸命に笑顔を作ろうとしてるが……
限界だな。

「ファラン、俺がアヤを馬車まで運ぶ。お前は、そろそろ女たちのとこに戻れ」

静かに告げた俺に、ファランは一瞬だけ、俺をじっと見た後素直に頷いた。

「キサ…分かった、お願いね」

それからアヤを抱き上げて運んで今に至る。運ぶ際も、運び方やら何やら、ブツブツ文句を言ってたが、結局、意地を張る気力もなくなり、馬車に着く前にほとんど気絶するように寝落ちてしまった。

馬車に着くと、俺は馬車内で寝るための綿入りの厚手の敷き布を広げて、アヤをソッと降ろした。
フウっと一つ息を吐く。自分で思うより、案外緊張していたらしい。団の女たちが具合悪くし運んだこともあるが、今日ほど緊張はしなかった。
眠るアヤの傍らに座り、片足を立てて肘をつき、俺は頬杖ついて見おろした。
先程、一瞬だけ見た光景が脳裏から離れない。

あの時、一瞬……アヤの瞳は、左目はアメジストの紫に、右目は冬の湖面のような冷えたアイスブルーだった。
瞬きした次には、いつものアヤの瞳に戻っていたが。

「キサ、入るよ?」

声がかけられ、馬車の後ろの幕布が開き、マダムが荷台に上がってくる。

「よっこらしょと。ハァ、キツイね。で?ファランから聞いたが、様子はどうだい?」
「今は寝てる。具合は、悪そうだが」
「何だか、訳ありっぽいね。妙なカッコもそうだが。何か秘めてそうだ。まぁ、あたしはお前の人を見る目は確かだと思ってるから、疑いはしやしないけどね。それに、害をなす空気は感じられない」

マダムが感じたようなことを、俺も感じていた。
だが、出会いからしておかしかった。街道沿いとはいえ、ゲルグの群れる草原にいたし、マダムが言うように、見慣れない服に身を包んでいるし……



*うぅ~……長すぎて作者が限界。次に続けますので変なとこでぶった切りますがご勘弁を(ー ー;)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

平凡くんの憂鬱

BL
浮気ばかりする恋人を振ってから俺の憂鬱は始まった…。 ――――――‥ ――… もう、うんざりしていた。 俺は所謂、"平凡"ってヤツで、付き合っていた恋人はまるで王子様。向こうから告ってきたとは言え、外見上 釣り合わないとは思ってたけど… こうも、 堂々と恋人の前で浮気ばかり繰り返されたら、いい加減 百年の恋も冷めるというもの- 『別れてください』 だから、俺から別れを切り出した。 それから、 俺の憂鬱な日常は始まった――…。

処理中です...