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序章 突然異世界トリップ迷惑編
12.束の間の邂逅
しおりを挟む俺が閉じていた目を開くと、そこは………
真っ白な空間だった。壁も果てもない、どこまでも白い白い空間。
ーココハ…ー
言葉は声にならなかった。いや、紡がれてはいる。ただ、声にならない。妙な心地だ。
俺はその場に立ち尽くしたまま、自分自身を見下ろす。目の前にかざした両手のひらを見つめ、ゆっくりと視線を周りに移した。
ここはどこなんだ?俺はさっきまで、ファランと……
そこで、ハッとなる。
ファランがいない!?
いるのは俺一人。慌てて見回すが、俺以外の気配はなかった。
歩き出そうとした、俺の両足はまるで鉛のように重く、その場から一歩も動けない。
焦りから躍起になって動かそうとするが、すればするほど疲弊していく。
たいした動きでもないはずなのに、まるで全身運動したかのように息が上がってきた。
疲れ果て、視線を俯けていた俺の耳に、微かな音が聞こえた。リィィンというガラスのグラスを弾いたような音。
音はだんだん近づき、目の前にそれは立った。
人?いや、でもこれは……
俺の目の前に立つそれは……
人の形をした白いモノ。
言葉にして説明しろと言われれば、そうとしか言えない、言いようのないモノだった。
目の前の奇妙なモノに戸惑うが、俺は不思議と恐怖は感じなかった。
腕は…動く。
ゆっくりと、俺が右腕を動かし持ち上げると、白い人影も同じ動きをしてきた。
恐る恐る右手のひらを向けると、白い人影も手のひらを向けてきて、やがて、俺と白い人影の手のひらはぴったりとくっついた。熱くも冷たくもない。
不思議な感覚だった。
やがて、手のひらを伝い、いろいろな感情が流れ込んできた。
一番強く感じたのは、何故か、懐かしさ。
俺は……あなたを知っている?
ーマッテイル…オマエガ、ヒツヨウトシテクレルノヲ
ココデ、イツマデモ、マッテイルカラー
あの不思議な感覚の声が紡がれ、白い人影の手のひらが、俺の手のひらからゆっくりと離れていった。
ーマッテクレ!アナタハダレナンダ?ナンデオレヲー
白い人影の消えた空間へ懸命に叫ぶが、再びあの白い人影が現れることはなく、不意に襲われた目眩に、俺の意識は再び暗転した。
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