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外伝2 触れる指先ーエリオー
*好きだから受け入れられない事もある⑥
しおりを挟む「ナファ!部屋を借りるぞ!!」
僕を抱き上げたまま、ラキティスが城下の建物に入った。木造の、小綺麗な建物だ。花なのか香なのか、建物内は甘くいい香りがする。
「あら、キサ?どうかしたの?」
「急を要するんでな。色々、省かせてくれ!」
「それは構わないけど……誰?それ」
褐色の肌に、亜麻色の髪の美女が、ラキティスの肩越しに伺ってくる。均整のとれた素晴らしい肉体を、露出の激しい服に包み込んでおり、少しばかり目のやり場に困る。
「聞くな」
「……………………訳あり?」
「そんなところだ」
「ふ~ん……まぁ、いいわ。他ならぬ、キサの頼みだから」
目を瞠った後、美女ナファが婀娜っぽく微笑む。
何となく、2人の間にある空気に親密さを感じ、そんな状態じゃないのは分かってても胸の奥が騒つく。
「悪いが、俺たち以外を入れないでくれ」
「本当に訳ありなのね……キサがそこまで気を使うなんて」
驚いたように目を見開き、ナファが神妙な顔になる。
ジッと見つめられ、変に緊張する僕にニッコリ笑いかけ静かに目を閉じた。
「これが最後ね……残念だけど」
「ナファ?」
「何でもないわ。三階は全て空きにするから好きに使ってちょうだい」
訝るラキティスに、ナファが艶やかに微笑む。戸惑う僕には、イタズラっぽく片目を瞑って見せた。
*
*
*
*
*
「あっ!う、、ぁッッ、、!」
部屋に入るなり、慎重に寝台に降ろされるが、敷布やラキティスの腕に擦れた肌がザワつき、口を手で覆い歯を食いしばる。
薬の効き目が増したようだ。
肌が、まるで無数の虫が這うかのように、ビリビリと戦慄く。
「この状態だ。城のお前の部屋や、俺の部屋はマズいだろう…かと言って、近衛騎士の寄宿舎に連れてくわけにもいかない。こんな場所で悪いが、ここが一番適任なんでな」
言われて、ぼんやり視線だけで部屋を見回し納得する。
簡素だが、作りがしっかりした寝台。脇に置かれた小瓶や布や、蓋がされててもふんわり甘い香りがする何かの容器。
いわゆるそういう場所だ。
ハァッと無意識に溜め息が漏れ、薄く笑みが溢れた。
「だ……じょぶ、です」
身体中が熱く、息が上がる。
何とか振り絞った声は掠れている。
仕方ない状況にしても、こんな場所に来ざるを得なかった事実に泣きたくなる。
選りに選って、何でラキティスとこんな所……
悲しいやら情けないやら恥ずかしいやらで、滲み出した涙を見られまいと、慌ててラキティスに背を向けた。
「お手……煩わ、、せて…めんなさい」
「やけに大人しいな?いつもの強気はどうした?」
揶揄する感じでもなく聞いてくるラキティスに、余計気遣われているようで益々落ち込む。
「僕……だ、て…いつも、強、……わけじゃ」
情動を堪えながら切れ切れに返した。
こんな弱ったところは見せたくない。同情なんかされたくない。
「悪いな……あ~、、、俺はどうも言葉が足りんらしいから、気に障ったなら謝る」
ふ~と溜め息をつく気配に、僕の方が慌てる。
「謝ら、、いで下さ……」
ラキティスは悪くない。それどころか、助けにも来てくれたし、自分の為に気を使って、気まずい思いをしなくてもいいよう配慮までしてくれた。
こんなに可愛くない態度を取ってるのに……
だからこそ分からない。
何で助けてくれるのか?
聞けば早いのに聞けない。
何故かは分かっている。
答えを知るのが怖いから。
アヤの為。アヤに関わりがある僕だから助けるんだって言われたら……
そう思ったら、やっぱり怖い。
そこまで考えてから、自分の気持ちに気づき愕然としてしまう。
僕……
「……………………き」
「うん?」
「ッッ!!!!!」
思わず口を突いて出たその言葉は音を結ばなかった。
訝るラキティスに慌てて口を閉じた。
聞こえなかった事にはホッとしたが、ドキドキと早鐘を打つ胸の音は止まない。
「水を持ってくる。気休めにしかならんが、飲めば薄まるかもしれん」
「あっ、、……ッ!」
寝台からラキティスが離れる気配に、気がついた時には思わず服を掴んでいた。
無意識に引き留めてしまった。
お互い無言で見つめ合う。
ゆっくり伸ばされたラキティスの手が、僕の頬に当てられた。
ビクッと、意識せず震える。
深く溜め息をつくラキティスに、不安を覚えた。
「分かって……………やってるわけじゃねぇな。無自覚が一番、タチが悪いんだが……………………」
「ラ、、キティ………」
ふわっと体が揺らぐ。
気がついた時には、体がラキティスに抱き寄せられていた。
至近距離から感じる、肌の香りに目を瞠る。
整った顔がゆっくり近付く気配に、思わずギュッと固く目を閉じ……………………ーーーーーーーーーーー
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