423 / 465
第三部3章 思惑の全能神と真白き光の眠り姫 編
9.終焉の秤⑥
しおりを挟む俺を取り巻くように複雑に絡む光の帯が逆巻く。
ものすごい魔導の奔流に、倒れ込まないよう踏ん張るしかない。
「全能神!!何の真似だ⁉︎アヤに何する気だ!!」
「これこれ。何も取って食おうというわけではないぞ。何度も言うが、終焉の秤にかけねば、そろそろ箱庭が保たぬでな」
「それはてめぇらの勝手な言い分だろうがッ!!秤だろうが何だろうが、アヤを巻き込むな!!」
「決められし定ぞ?どのみち、女神の光である以上……」
『黙れ!!消え失せろッッッ!!』
カッと一気に迸ったバルドの魔導が弾ける。
全破棄。
氷の魔導が全能神様を呑み込む。
ビキビキ亀裂が入り、けたたましい音を立てて砕け落ちた。
「バ、ルド⁉︎」
「アヤ!助けてやるから……」
「やれやれ……人の話を聞かぬ奴よな?『少し、退いていろ』
「なっ………!」
全能神様の声だけが響き、バルドが消え、ギルが消える。
アウフィリアとルーもいつの間にかいなくなり、白い空間に俺一人。
シンとした無音の世界。
「え……な、んで?誰か?……」
「さて、今生の光よ。其方には、始めに六つを選んでもらわなくてはならぬ」
ポッと光が灯り、全能神様が現れた。
「全能神様!ここは⁈皆は……バルドはどこだよ!!」
「其方の選んだもの次第ぞ」
「全能神……ッ」
『お喋りはここまでだ。執行は、俺…光のルーと、水のアウフィリア。全能神ユクトディオス、三柱で行う。始めに選ぶは土…過去と未来。どちらを選ぶ?』
二つ新たに光が灯り、ルーとアウフィリアも現れた。更に、四つの光のみが現れ、俺を囲う。
「土…過去と未来って……何のこと?意味、分かんねぇって!!」
『選びなさい、アヤ。”終焉の秤”は始められたわ。私は止めたい。だけど、止められない。選んで進むしか道は無い』
アウフィリアが静かに言い、悲しく苦しそうに瞳を伏せる。
選べって……土とか、過去とか未来の意味が分からないのに、選べるわけねぇじゃん!
「これだけだと、意味が分からぬか?土は、道を表す。行くべき道ぞ。過去、自分が歩いた道に戻りたいか。未来、これから歩む道へ進みたいかじゃ」
「それ……選んだら、どうなるんだ?」
「そこまでは答えられぬ。先に答えを知ってしまっては意味がなかろう?」
苦笑し、肩をすくめるだけの全能神の答えに、俺は言葉が出ない。
そんな事言われたら、益々、答えらんない。
俺が選ぶ事で、この先の全てが決まる。
そんな、命綱の端を握るかのような………
血の気が引いてく。
体が震える。
頭、真っ白で何も考えらんない。
『ルー…ユクトディオス。やっぱり、アヤには無理だわ』
『かもな。だが、選択の余地がない。選ばなきゃ、最悪の結末を迎えるだけだ』
『でも……!!』
「神の台座を創り、争乱の種を創り……アウフィリア。奔放なのが、其方の魅力だが、事を大きくし過ぎたは其方の咎。責は取らねばならぬ」
『だ、だったら!だったら、私が何とか……』
『できねぇだろ?光の魔導をお前が持ったままなら、或いは……だけど、お前は自分の六つの魔導を分け、女神の魔導と呼ばれるアヤ達を創り出した。終焉の秤を受けられるのは、光だけだ』
『………ーーーー』
厳しいルーの言葉に、アウフィリアが顔を歪め、唇を噛みしめる。
苦しそうに、アウフィリアが視線を俺に寄越す。
『ごめんね、アヤ……』
「アウフィリア……俺」
怖い……
怖い…………
怖い怖い怖い怖い怖い怖いッッッ!!!!!
駄目だ!我慢できないくらい、怖くてたまらない!!
「アヤ。酷なようじゃが、あまり悠長にもできぬでな」
無理だ!
「選んで貰わねばならぬ」
嫌だ!!
「どちらを……」
た………
「…け、て………ルド」
差しのばされる全能神の手が視界に入り、不安と恐怖が俺の限界を超えた。
「嫌だぁぁあああーーーーーーッッッ!バルドーーーーーーーーー!!!!!」
叫びが魔導となり、体から迸る。
ガッと強く掴まれる腕。
涙で煙り、泣き濡れた俺の視界に………ーーーーーーー
2
お気に入りに追加
2,223
あなたにおすすめの小説
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
平凡くんの憂鬱
慎
BL
浮気ばかりする恋人を振ってから俺の憂鬱は始まった…。
――――――‥
――…
もう、うんざりしていた。
俺は所謂、"平凡"ってヤツで、付き合っていた恋人はまるで王子様。向こうから告ってきたとは言え、外見上 釣り合わないとは思ってたけど…
こうも、
堂々と恋人の前で浮気ばかり繰り返されたら、いい加減 百年の恋も冷めるというもの-
『別れてください』
だから、俺から別れを切り出した。
それから、
俺の憂鬱な日常は始まった――…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる