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第三部3章 思惑の全能神と真白き光の眠り姫 編
8.光、そして…世界そのもの②
しおりを挟む再び、場が揺らぎ、見慣れた白い空間へと変わる。
「アストラル……」
そろそろ疲れてきた。あちこちに引っ張り回され、かなりグロッキー気味だ。
「アヤ?」
「ごめ……、バルド。な、んか…気持ち、わる」
抱きしめて支えてくれるバルドに、ほとんど凭れかかるように縋り付く。
駄目だ。頭が重い。クラクラしてきた。
意識が……遠のく。
*
*
*
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*
*
*
*
がくりと、急激に力をなくした体を慌てて抱き込む。
硬く閉じられた瞼。力をなくした手足。
「アヤ!アヤ⁈」
ペチペチと、軽く頬を叩く。
『アヤ?何、どうしたの⁈』
「急に意識なくした」
肩に腕をかけさせ、片腕に座らせる形で横抱きに抱えた。
『急にって……いったい?』
「近付きつつある、ということだの」
不意に声が会話に割り込む。
アヤを庇いつつ、声がした方に向く。
金色の髪の恐ろしく派手派手しい男が立っている。
『ユクト……ディオス?』
訝しげに、だが、呆然と呟くアウフィリアに、男が場にそぐわないほど、ニッコリと笑う。
「久方ぶりか?アウフィリア」
『そ、うね……』
アウフィリアがやや体と顔を強張らせ応えた。
緊張している?
「アウフィリア。誰だ?こいつ」
『……神よ。ユクトディオス。7柱創造神の一人。全知全能神…一応、私たち、神の長よ』
「神……」
長って事は、神々の一番上に立つ者か。
なんでそんな奴が?
不信な目を向ける俺に、神、ユクトディオスがフッと微笑む。
「今生の水か…?良い目と魔導の波動をしておる」
物腰は柔らかいが、何となく受け入れ難いものを感じる。
ユクトディオスが手のひらを上に向けて差し出した。
フォンっと、空気を揺らす音がし、丸い透明な球が現れる。
「イ、…ネア⁉︎」
球の中にいるのは、イヴァン、ネアだ。それに……
ラァムの実?
意識がないのか。ネアは実を抱きしめ、子供が丸くなるような姿勢で、球の中にフワフワ浮いている。
「どういう事だ?何で、てめぇが、ネアや俺の子を……」
「ふむ……はて、どう答えたものか」
悠長な言葉に、俺の苛立ちが募る。
『ユクトディオス!どういう事なのか、説明して!女神に分からない事が多すぎよ!ここは……』
「アウフィリア」
静かな、ユクトディオスの呼びかけに、アウフィリアが押し黙る。
特に、語気を強めたわけでもなく、ユクトディオスの声音は変わらず柔らかいが、場を緊張させる、妙に威厳を感じさせる雰囲気があり、アウフィリアのみならず、俺もギルゼルトも動くことすらできなくなる。
フッと小さく笑うユクトディオスに、固まった空気と体が動く。
知らず知らずに緊張していた体の力が抜け、一つ溜め息が出た。
なるほど……さすがは神と言ったところか。
「元はと言えば、アウフィリア。其方が、間違うたが原因だと思うがの?」
『それは………ッ!』
言いかけたアウフィリアが言葉を呑み、唇を噛みしめる。
あの自由奔放をいく女神が形無しだ。
「全能神…ネアと子を返せ!」
「うん?…それは、まだ無理だの」
「ふざけんな!いつまでそうやって、人を振り回す気だ?お前ら神は魔導をどうしてぇんだよッ⁉︎」
「選ばせる為だ」
「は?」
柔らかな微笑を浮かべるユクトディオスの言葉。
選ばせる?
何を?
意味が分からん!
『ユクトディオス。そんな言葉じゃ、通じる事も通じねぇよ!』
意味を問おうとした俺を遮るように、意識のないアヤの口が開く。
「アヤ……?」
『まったく…アウフィリアの所為にしていたが、ユクト、てめぇが横槍入れたからここまで間怠っこしい事になったんだろうが!』
硬く閉じていたアヤの目が開く。
不思議な光彩を放つ、真珠色の瞳に見据えられ、思わず息を呑んだ。
フワリとアヤの顔でそれが笑い、ゆっくりと体を俺から離した。
「アヤ、じゃないな?誰だ、お前……」
俺の誰何の言葉に、アヤの顔のそれが不敵に笑った。
『ルー………』
呆然と泣き笑いに呼んだアウフィリアに向けて………………
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