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第三部2章 消える魔導 双生の煌めき編
3.旦那さま奮戦!生まれ来る子は実は……?!⑤
しおりを挟む魔導が、二つ?
「双児、か?」
「そうです、ね。多分…」
困惑気味に言うユフィカ。
「馬鹿な!ラァムの実で双児だと?見た事も聞いた事もないぞ?!」
「う、ん…僕もだよ。でも、兄さん。そうとしか思えないよ」
「グレインバルド!ラァムの実は?持ってきてるんだろう?どこだ?」
「あぁ。アヤが抱いて離さねぇから、一緒に奥の部屋で寝てる」
「アヤが?寝てるとは?」
訝しむラトナに説明すべく口を開く。
「魔導が消え始めてから、眠ったままだ。目を覚まさねぇ」
「眠ったままだと?!何でそんな事になってる!?」
「魔導が極端に減ったから、自衛本能で眠ってる!それは分かったが、なんでそうなったかが分からねぇ!だから、こうして聞きに来たんだ」
ラァムの実が原因なら、それを使う犬狼に聞けばいいと思ったが、どうやらそうそう簡単ではないらしい。
「双児を宿すラァムの実に、消える魔導…こんなのは初めてだ」
「ない事、なのか?」
「殿下…少なくとも、僕も兄も生を受けてからは、ただの一度もあった事はないです。それに……」
「それに何だ?」
言い淀むユフィカを促す。躊躇いつつ、口を開く。
「さっきは慌ててしまって、それどころじゃなかったですけど…少し、妙、と言うか」
「妙?妙、とは?」
「双児、だと思うんですけど、普通じゃないです。一つは弱いけどハッキリ見えます。もう一つは……薄い?と言うか」
益々分からねぇ…
アヤと、実…俺との子に何が起きている?
「得体の知れない力が動いているようだ」
ラトナが小さく呟き、俺もまた無言で肯定した。
ただ、ラァムの実が問題じゃない。問題なのは……
『何事もない事を祈るけどね』
アウフィリアの言葉が脳裏に蘇る。
「あのクソ女神め!何が身辺見ておくだ…?!役に立たん」
「殿下?」
「何でもねぇ。ラトナ、今日はこのまま村に留まるが構わんか?」
「好きにしろ。世話はいるか?」
「いらん」
訝るユフィカに返し、ラトナに申し出るとさらっと返された。それにもあっさり返す。
魔導が消える原因は分からずじまい。
「アヤの側に居ろ、グレインバルド。絶対に守れ、離れるなよ?」
「貴様に指図されずともそうする!余計な世話だ」
互いにふんッと吐き捨て、ラトナが出て行く。
「あの…殿下。兄が失礼しました。でも、僕も兄もアヤを心配してるだけで、言い方はあれですけど……」
「分かっている。ラトナは気に食わんが、アヤを想っている気持ちは理解してるつもりだ。ラトナの気持ちまでを無下にする気はない。心配するな」
躊躇いながら言うユフィカに、薄く笑んでやる。恋敵とも言えるラトナが気に食わないのは正直だが、素直なユフィカに冷たく当たる気はない。
ラトナもこれぐらい素直なら……
いや、いい。それはそれで気持ち悪ぃ……
「あとで食事をお持ちします」
「あぁ、頼む」
ニコと可愛らしく微笑み、ユフィカも出て行った。
「さて…どうするか?」
犬狼のところまで来たはいいが、結局、ほぼほぼ分からずに終わった。
奥の部屋に向かい、扉を開けて入る。
アヤは眠ったままだ。
魔導は少し戻ったにしても、消え続けているのは相変わらず。起きる気配はない。
抱き起こし、膝に乗せる。
こちらも変わらず、ラァムの実は抱きしめたままだ。
まるで、何かから守るかのような……
守る?
「俺との子が、何かに利用されてるのか?その、何かから守ろうとしてる、のか?」
そうだとしたら……必要、奪われているのがアヤの魔導なら……
「少し、乱暴なやり方になるが…」
足りないと言うなら、与えればいい。
「アヤと俺の子だと言うんなら、堪えろよ?」
ラァムの実の表面に軽く口付け、撫でてやる。少し、強めにアヤの腕からもぎ取り、柔らかく敷布に包んでやった。
邪魔にならないよう脇に避ける。
愛しい相手に触れる。理由はどうあれ、嬉しくないわけじゃねぇが……些か、不本意でもあるな。
「なるべく……早く、目ぇ覚ませよ?」
額に小さく口付け、ゆっくりと甘い吐息ごと唇を塞いでいった。
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